「ボトムズ」「ガオガイガー」「ゼーガペイン」・・・・・・掲載作品ラインナップはいかに決まったのか? 「矢立文庫」編集長・河口佳高に聞く【後編】

2016年12月08日 19:000

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「機動戦士ガンダム」など多くのヒット作で知られるアニメ制作会社・サンライズ。先日掲載したインタビューでは、そんな日本のアニメ業界をリードしてきたトップランナーが運営するWebサイト「矢立文庫」(http://www.yatate.net/)のコンセプトや現状について、編集長である株式会社サンライズの河口佳高さんにうかがった。
サンライズがWebサイト「矢立文庫」を運営するわけとは? 「矢立文庫」編集長・河口佳高に聞く【前編】

インタビューの後編となる今回は、現在「矢立文庫」に掲載中の作品の中からサイトオープンと同時に連載がスタートした6作品について、企画がスタートしたきっかけやコンセプトなどをお届けする。ぜひ前編とあわせてチェックしてほしい。

「装甲騎兵ボトムズ 絢爛たる葬列」


──まずは「装甲騎兵ボトムズ 絢爛(けんらん)たる葬列」から。こちらTVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」の高橋良輔監督みずからが書く外伝作品ですね。


河口佳高(以下、河口) これは以前より高橋監督から「装甲騎兵ボトムズ」の小説をやりたいという要望をいただいていて、もともと書籍の企画が動いていた作品ですね。


──矢立文庫用の企画、というわけではないんですね。


河口 企画について最初に告知したのは、2015年の「メカニックデザイナー 大河原邦男展(http://www.okawara-ten.com/)」が開催されるタイミングで出版された「大河原邦男Walker」でしたから。その後、出版時期が決まったのですが、そのタイミングがちょうど良かったので書籍(※)のプロモーションもかねて、矢立文庫でお披露目することになった作品です。
(※ 10月31日にSBクリエイティブより発売された「装甲騎兵ボトムズ 戦場の哲学者」/価格:2,700円+税)


──メカデザインの大河原邦男さんが新しいAT(アーマードトルーパー)をデザインされているんですよね。やはり本作の“売り”はこの部分なのでしょうか。


河口 そうですね、「ボトムズ」ファンにとってはやはり新しいATというのは魅力になると思います。今回大河原さんが新しくデザインした「ホワイトオナー」はクエント製のATなんですけどTVアニメなどで活躍したクエント人傭兵が乗るAT「ベルゼルガ」とは別の機体です。この機体を登場させるために改めて設定を作ったりもしたので、昔からの「ボトムズ」ファンの方にはそういった部分を楽しんでいただければと思います。
あと売りといえば、やはり各章の最後につく予告ですね・・・・・・TVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」の次回予告でもおなじみの“あのエッセンス”が詰まっていますよ。

──そういわれて予告を読んでみると、銀河万丈さんの声で脳内再生されます(笑)。

河口 「ボトムズ」を観たことがない若い人も、まずはこれを読んでいただければと思います。それで面白そうだと感じたらぜひTVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」も観てもらえるとうれしいですね。

「はるかの星」/「ミレニアムソーン」

 

──「はるかの星」は完全に矢立文庫オリジナル作品なんですよね。


河口 前回も少し触れましたが、これは若い世代に向けた作品が欲しいな、と思ってラインアップに加えた作品ですね。著者のクゲアキラさんにとっては本作がデビュー作となります。

──そうなんですか? 

河口 クゲさんは若い世代の作家さんなので、同世代のアニメファンが好む女の子たちの瑞々しい会話が楽しめる作品になっていますね。「ラブライブ!」世代に向けた作品として、“ヘビー”サンライズ作品とはずいぶん毛色の異なる作品になっていると思います。


──いっぽうで「ミレニアムソーン」は、もうバリバリの“ヘビー”サンライズ作品といった趣ですね。

河口 こちらは「はるかの星」とはまったく逆で、昔ながらのファンがターゲットの作品ですね。外伝企画ではない、サンライズらしい作品をゼロベースからやりたいと思って、企画書から起こした作品です。


──前回のインタビューによると少し前の企画書なんですよね。

 

河口 アニメが作品として成立するにはいろんなハードルを越えなければいけないんです。本作はさまざま々な理由から待機作品の列に並んでいましたが、こうやって矢立文庫で先に見てもらおうということになりました。矢立文庫でスタートして、ゆくゆくは書籍化や商品化ができればいいな、と思っています。
今、新番組でロボットアニメがドンドン減っていっているじゃないですか。やはりサンライズとしてはその火を消さないようにしたいなと思っていて、この後も矢立文庫ではこういう企画も増やしていきたいですね。

 

「エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部」/「覇界王~ガオガイガー対ベターマン~」


──さて、その流れでサンライズのロボットアニメ2作品の外伝についてお話をうかがっていきたいと思います。まずは「エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部」ですが。


河口 これは、「ゼーガペイン」のスピンオフ作品ですね。元々、著者である高島雄哉さんは早川書房や東京創元社で作品を発表されているSF作家なんです。「ゼーガペイン」デザインディレクターであるハタイケヒロユキさんの紹介で「ゼーガペインADP」のSF考証として参加したことをきっかけに、その後「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」など他の作品にも参加されています。

──「ゼーガペイン」は熱心なファンも多い作品ですね。

河口 ええ。今年(2016年)はちょうど「ゼーガペイン」の10周年のアニバーサリーイヤーということで盛り上がっていたので、矢立文庫でも何かやらなければな、と(笑)。せっかく「ADP」に参加しているSF作家さんがいるのだから、これはぜひ矢立文庫に小説を書いてもらおう、と思いスタートした企画ですね。


──いっぽうで「覇界王~ガオガイガー対ベターマン~」についてはいかがでしょうか。


河口 OVA「勇者王ガオガイガーFINAL」発売当時に刊行されたアニメの公式ノベライズがありまして。2016年9月にその新装版が新紀元社から発売されたのですが、これはその続編にあたる小説になります。著者である竹田裕一郎さんが続編を書く意欲に燃えていらっしゃったので今回、矢立文庫の連載という形で世に出すこととなりました。
・・・・・・といっても、こちらは突然出てきた企画ではなくて、「ディスクZ(※)」に収録されたピクチャードラマもありますし、熱心なファンの方なら「来たか!」と思ってもらえる類の作品でしょう。
(※ 「勇者王ガオガイガーFINAL -GRAND GLORIOUS GATHERING-」のDVD-BOXに付属した特典DISC)

 

──待望の続編! と思ったファンも多いでしょうね。


河口 あのころからずいぶん経っていますが、当時あれを観て続編を楽しみにしていた方からの反応がすごく多いです。もちろん、米たにヨシトモ監督や竹田さんの中ではずっと構想はありましたが、とはいえアニメでやるにはいろいろとハードルが・・・・・・という作品で、そういう意味では「サンライズのお蔵出し」というサイトのテーマにものすごく合致した作品だと思いますね。

「IPポリス つづきちゃん」 


──最後に大川ぶくぶさんの「IPポリスつづきちゃん」です。


河口 これは矢立文庫がスタートする際に、編集部員のひとりが若い世代に人気のある大川ぶくぶさんに連載してもらおう! と企画したんです。私自身はぶくぶさんの作品をあまり知らなかったのですが、実際上がってくる原稿をみるとサンライズの我々ですら「あれ? こんなキャラいたっけ?」というマニアックさで(笑)。若い人はもちろん、作品のコアなファンまで巻き込んだ作品になっています。



──読んでいると結構ギリギリな印象のお話もありますが、そのあたりは矢立文庫としてどうお考えなのでしょうか。


河口 一部の表現について、もちろん媒体によってはNGになってしまう表現もあるかもしれませんが、矢立文庫ではそういった部分に関するラインについてはできるだけ低めに設定しておこうと思っています・・・・・・とはいえ、サンライズという看板がある以上、どこまでやっていいの? 怒られないかな? というラインを探りながらの連載ではありますが(笑)。


──ネタにする作品についてルールはあるのでしょうか?


河口 取り上げる作品は1か月ごとに変わっていくのですが、最初はまず「ガンダム」ネタを入れたかったので「機動武闘伝Gガンダム」をやってもらいました。次が「蒼き流星SPTレイズナー」なのは・・・・・・まぁ・・・・・・1980年代の作品だし、関係者も皆大人だから怒られないかなって(笑)。

──本当に探り探りなんですね(笑)。ちなみに、今後の作品は?


河口 12月は「カウボーイビバップ」ネタがスタートしています。2017年1月は・・・・・・まだ秘密ですが、こちらもファンが熱い作品ですね。ちなみにぶくぶさんは某アイドル作品をネタにしたいらしいのですが、これはちょっとだけ待ってもらっているところで。もっと“実績”を積めばチャレンジできるかも、と(笑)。

──それは楽しみですね。 それでは最後になりますが、読者の方に向けてひと言お願いします。

河口 矢立文庫はこれからも作品や読み物を充実させていきますので、ひきつづき、よろしくお願いします。

──今回はありがとうございました。
サンライズ「矢立文庫」、新企画“ガンプタグラム”スタート! ガンプラを使った写真を投稿しよう

(取材・文/編集部)

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