ホビー業界インサイド第17回:羊毛フェルトで作る“異素材”美少女フィギュアの魅力 土方クロネ・インタビュー

2016年11月12日 12:000

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美少女フィギュアといえば、粘土やパテで造形するのが当たり前。最近ではデジタル造形も増えてきた。ところが、「羊毛フェルト」というマスコットやアクセサリー用の手芸素材で、美少女フィギュアを作る人がいる。土方クロネさんだ。
土方さんが作るのは、あくまで二次元の美少女キャラを立体化したかのような「フィギュア」である。形の解釈やデフォルメの方向も、フィギュア造形のセオリーを守っているかに見える……が、なにしろ羊毛フェルト製なので、質感はフワフワ。しかも、大きさ40~50cmと、とにかく迫力がある。「美少女フィギュア」文脈と「手芸」ジャンルの刺激的な出会い、前人未到の新境地といった趣きさえある。作者の土方クロネさんに、語っていただいた。


なぜ、粘土やパテではなく“羊毛フェルト”なのか?


──羊毛フェルトフィギュアは、いつから作られているのですか?

土方 2012年からですね。最初は手芸コーナーで売っている羊毛フェルトのキットを買って、お手本どおりに作りました。ある程度、コツというか作り方の仕組みがわかったので、それ以降は自分の好きなものを作るようになりました。最初にできたのは、12cmぐらいのサイズで、藁人形みたいなものでしたけれど(笑)。

──羊毛フェルトに触れる以前から、フィギュアに興味はあったのですか?

土方 大学時代に彫刻科で、塑像(そぞう)を勉強していましたが、粘土などでフィギュアを作ったことは一度もありません。ゲームやアニメは好きなので、市販のフィギュアもちょこちょこ買ってはいます。間近でフィギュアを見ると勉強になるので、秋葉原に見に行ったりしてますし、ネットで検索して「どうすれば、かわいい仕草になるのかな」と、常にリサーチはしています。


──だけど、市販のフィギュアと似たものを作りたいとは思わなかったわけですよね?

土方 ええ、どうしてなんでしょうね(笑)。よく、「なんで粘土で作らないの?」と聞かれるんです。
フィギュアの原型師さんが使っている造形素材で作ったとしても、先人の方たちはすごい物を作ってらっしゃるから、自分はとても追いつけないし、自分が趣味の世界で手をつけるのは“甘い”ような気がしたんです。羊毛フェルトに出会ったとき、「これなら誰も作ったことのない物を作れるんじゃないか?」と、直感しました。素材も、ふわふわで不思議な感じがしますよね。そこに惹かれたんです。

──羊毛フェルトは、形を作りやすいですか?

土方 いえ、作りやすくはないと思います。かわいい猫ちゃんなどのマスコットなら、1時間ぐらいでできるでしょう。だけど、私の作品は胴体を細い脚で支えるため、ギュッと堅く“刺しつける”必要があるんです。片足だけで、毎日数時間ずつ作業して、最低4日はかかってしまいます。トータルで、1か月ぐらいかかります。

──“刺しつける”とは、どういう作業なのでしょうか?

土方 “ニードルわたわた”という、形をつくるための安価な材料が売っていて、その“わたわた”を専用の針で刺すと、繊維がからまって、形がまとまっていくんです。何度も何度も針を刺すことで形をつくり、芯になる針金のうえに肉付けしていきます。ある程度の形ができてから、今度は色のついた綺麗な羊毛を刺しつけて、仕上げていきます。色のついた羊毛は繊細なので、上から足すことが難しいんです。だから、なるべく“わたわた”で形を作っていきます。ホントに、地道な作業なんです。

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