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みずからコンセプトを決め、ジャケット絵のラフも描く
──アニメ作品のCDやDVDの場合、デザインに制約があると思うのですが? 内古閑 他のデザイナーさんは分かりませんが、実は、意外と制約は少ないんです。“お任せ”とまでは言いませんが、作品の資料などをいただいて、僕から提案する場合がほとんどです。作品への理解度が僕の強みだと思っているのですが、ある制作会社のプロデューサーさんから「こんなに会議や打ち合わせに来たり、資料を欲しがるデザイナーさんはほかにいない」と言われました。「普通、ジャケットのイラストはメーカーから発注が来る」とおっしゃるのですが、僕はイラストのコンセプトとラフを自分でつくって、メーカーやスタジオのスタッフさんにプレゼンします。
──そうしたコンセプトやラフは、クライアントから頼まれたわけでなく、自主的に描いているのですか? 内古閑 最初はそうです。音楽のCDジャケットでは、カメラマンを誰にするか、スタイリストを誰にするか、自分で考えなくてはなりません。そのうえで、どの場所でどんなコンセプトで撮るのか、最終的な絵のイメージを決めていました。写真ができてからレイアウトを考えるのではなく、どんな絵が必要なのかを提案する。その考え方を、アニメにも導入した感じです。おそらく、CDやDVDのジャケットは、メーカーのプロデューサーさんが「こんな感じで」とラフを描いていたのだと思います。
そこへ、僕がデザイナー視点、アートディレクターの視点から「こういう絵が欲しい」と発注する。そこからが、自分の仕事だと思っています。 デザイナーが具体的なラフ(発注イラスト)を提出することに対して、ネガティブに受けとる絵描きさんもいます。「こういうアイデアは思い浮かばなかった」「考える時間が節約できて助かる」という方もいれば、「言われたとおりに描かないといけないの?」という方もいることは、経験的にわかっています。ですから、最低1回は顔をあわせて打ち合わせさせてもらえるよう、お願いしています。誰からどんな風に頼まれているのかわかったほうがいいでしょうし、「あくまでラフであって、自由に描いていい」というニュアンスを伝えるためにも、1度はアニメーターさんとお会いするようにしています。
アニメの版権イラストは、共同作業ですよね。線画だけ描く人がいて、色を塗る人がいて、特殊効果をかける人がいて……と分業しているので、伝言ゲームになったときに、コンセプトから外れかねないんです。僕は最初に何を目標とすべきか方向性を提示して、プロデューサーさんにも説明して、ブレないようにコントロールします。特に、Blu-rayなどはコレクション性が高いので、揃えたときに統一感が出るように、あるいは巻ごとにあえてズラすのかも含めて、キャラクターの大きさや色のトーンも考えています。
──逆をいうと、メーカーさんはそこまで考えていないと言えませんか?
内古閑 それはプロデューサーさんによりますから、最初に「どう売りたいのか、誰に売りたいのか」をヒアリングします。たとえば、「アイカツ!」(2012年)の場合、すでに「プリキュア」「プリティーリズム」といった女児向けアニメが先行して放送されていましたので、それらの作品とどう距離をとって、どうすれば埋もれずに引き立つのか、自分なりに考えました。結果、「アイカツ!」のCDは、実際に購入するお父さんやお母さん、また音楽ファンもついてくるであろう可能性も考慮して、女児向けアニメとしては少し背伸びをした感じになりました。とはいえ、子供の好きな要素も、忘れずに入れてあります。