──新キャラクターを登場させたのはなぜでしょうか?
吉浦 個々のキャラクターが立ってこその「パトレイバー」だと思ったからです。「見本市」の企画なので、声は林原(めぐみ)さん、山寺(宏一)さんと決まっているので、これまでのキャラクターを登場させてしゃべらせることはできない、もちろん遠目に出すっていう方法もありますが、それだとこの作品が外伝ぽくなって、新キャラの立たない作品になってしまうなあと。あと新しいファンに見てもらうなら、まっさらの新人が頑張っている姿を見てもらったほうがいいだろう、というのもありました。ただ新キャラクターが、ちゃんと「パトレイバー」の世界になじんで溶け込んでいるようになるようには気をつけました。名前こそついてませんが、隊長、バックアップ、フォワードとちゃんとどんな人間かは考えてあります。ありがたいのは、そうやって僕が作ろうとした新しい「パトレイバー」に対して、オリジナルスタッフのみなさんがバックアップしてくださったんです。
──というのは?
吉浦 ゆうきさんは、新キャラの原案を描いてくださいました。脚本は僕が書いたものを、伊藤さんがフィニッシュしてくださった。セリフ回しに手を入れてくださったことで、ぐっと「パトレイバー」になりました。出渕さんは3DCG化するイングラムのために、新たに三面図を描いてくださって、細部も含め「これがイングラムの決定版」とおっしゃってくださいました。また他にも、出渕さんは「こういうシチュエーションなら、整備班がいるより、地元警察官がいたほうがいい」とか、そういうアドバイスもしてくださいました。さらに川井憲次さんですね。こちらで作ったビデオコンテをもとに、前半は「アクション」、後半は「苦戦からの逆転」、そしてラストのナレーションの部分は「ここから新しく始まる」というイメージでお願いしたら、映像の流れとぴったりの音楽を作ってくださった。
──犯人がニコ生で実況しているなど、ポイントポイントで現代性もしっかり盛り込まれていました。 吉浦 どういう人が事件を起こすのか、を考えた時、今回は政治的な主張がどうのというより「アクセス数稼ぎたいだけでは?」と思われてしまうような、犯罪の“しきい値の低さ”は意識しました。1号機の操縦士も、頭でっかちな今時の若者で、だから何かあるとすぐキレるキャラクターになってます。あと昔の「パトレイバー」は住民の避難誘導のシーンがまずありましたが、今はスマホでSNSが普及しているから、交通整理をする前にまず野次馬が集まってきちゃうだろうということで、そういう描写になっています。
──ニコ生のコメントに「これがモニターごしの戦争というやつか」とあるのはおもしろかったです。 吉浦 あそこはその後のコメントがポイントなんですよ。「そんな冗談言えない時代だぞ」と。実はそこは隠し味的に入れてあって、モニターの向こうにあるはずのものが、目の前をかすめていくような、そういう描写は意識して入れています。ちなみにオリジナルシリーズを意識したネタはほかにもあって、たとえば「とんでもない時代になっちまったよ」というコメントはTVシリーズ第1話から拾っているんですよ。そういう細かいネタはほかにもいろいろあります。
──新しいメカ要素として鉄道のレイバーキャリアが登場します。
吉浦 「パトレイバー」の魅力のひとつに、東京という実際の土地を生かしているという点があります。それをわかりやすく、インパクトある形で見せるなら山手線を使った鉄道キャリアがいいだろうと。実際にあんな運用ができるかは疑問ですがそこはケレン味重視で登場させました。
──作品が完成してみていかがですか? 吉浦 作っている時はプレッシャーはなかったんですが、完成して企画が発表になってから、その反響の大きさに驚きました(笑)。オリジナルスタッフの方々との良き出会いがあり、パトレイバー好きのスタッフにも恵まれ、幸運な作品として完成したと思っていますので、期待してくださっているみなさんが、楽しんでいただければと思っています。
(取材・構成/藤津亮太)
(C) HEADGEAR/バンダイビジュアル・カラー
【Blu-ray & DVD】機動警察パトレイバーREBOOT
【特装限定版Blu-ray】 5,000円(税抜)
2016年10月26日(水)一般発売
BDOT-0242/カラー/48分予定(本編8分+映像特典40分)/リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD25G/16:9・一部特典映像16:9/字幕(日本語)切り替え
■映像特典
●英語字幕版●劇場予告編●BGM収録風景映像●スタッフ座談会[吉浦康裕(監督・脚本)×出渕 裕(メカニカルデザイン・監修)×伊藤和典(脚本)]
■音声特典
●スタッフオーディオコメンタリー①吉浦康裕(監督・脚本)×浅野直之(アニメーションキャラクターデザイン・作画監督)②吉浦康裕(監督・脚本)×松井祐亮(CGI作画監督)③吉浦康裕(監督・脚本)×金子雄司(美術監督)
■特典
●サウンドトラックCD 川井憲次による本作BGMをすべて収録!
●コンテ・設定集(56P)吉浦康裕によるコンテと、浅野直之・出渕裕による設定画をすべて収録!
●縮刷版アフレコ台本(44P)
●三方背アウターケース
【DVD】 3,000円(税抜)
2016年10月26日(水)一般発売
BCBA-4805/カラー/48分予定(本編8分+映像特典40分)/ドルビーデジタル(ステレオ)/片面1層/16:9(スクイーズ)/ビスタサイス/字幕(日本語)切り替え
■映像特典
●英語字幕版●劇場予告編●BGM収録風景映像●スタッフ座談会[吉浦康裕(監督・脚本)×出渕 裕(メカニカルデザイン・監修)×伊藤和典(脚本)]
■音声特典
●スタッフオーディオコメンタリー①吉浦康裕(監督・脚本)×浅野直之(アニメーションキャラクターデザイン・作画監督)②吉浦康裕(監督・脚本)×松井祐亮(CGI作画監督)③吉浦康裕(監督・脚本)×金子雄司(美術監督)