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「プロとして、脱ぎました」3DCGと合成にかける思い
──「月刊 ドロンジョ」は3DCG表現がひとつ新しい試みで、一見すると実写の写真と見分けがつかない仕上がりになっています。この制作にはどんな難しさがありましたか?
宮本 いわゆるタレント写真集の場合、本人とセッションしていくなかでいいカットを作っていくという方法になりますが、今回は最初に頭のなかですべて設計し、それに向けて逆算的に作っています。仕上がりを想定するという意味では、これまでに写真集をたくさん作ってきたからこそできた方法でもありますね。昨年、「月刊 ミス・モノクローム」というフル3DCGの写真集も作りましたが、そのときよりも合成の質がはるかに上がっていて、技術的にもどんどん進歩しているのが面白いですね。一緒にやってくれているクリエイターたちも、自分たちが新しい物を作っているというそのことの面白さを感じて頑張ってくれています。今回の「月刊 ドロンジョ」はあらゆる要素が詰まっているので、一番盛り沢山な内容になったと思いますね。
──写真の制作はどのように進めていったのでしょうか?
宮本 まずは、ねこむちゃんの3DCGを作るところから始めたのですが、これに一番手間暇がかかりました。最初に今回の撮影を担当された桐島ローランドさんのスタジオで、100台くらいのカメラを使ってねこむちゃんを360度囲い、全身のデータを取りました。データ採集なので、そのときにはなるべく余分なものはない方がよくて、僕らとしてはピッタリめの水着でも着てくれさえすればよかったのですが……。
ねこむ そこは私みずから脱ぎました! ちょっと恥ずかしかったんですが、プロ根性です(笑)。
宮本 そうやって全身と表情のデータを取って3DCGの素体と衣装を作っていきました。その次はポーズに落とし込んで行くという作業です。そこでまた、ねこむちゃんにモデルになってもらい、撮影を行って3DCGに同じポーズを取らせて背景の写真と合成していきました。360度の3Dデータを取ったので、ポーズを作るのは簡単かとおもいきや、これもけっこう難しかったですね。生身の人間がモデルだから肌の露出もあるし、ポーズによっていろんな修正を加えていかないといけないんですね。
ねこむ 肩を上げた時に生身の人間と3DCGとで骨格の違いが出たりしましたね。
宮本 そこも含め、今回はねこむちゃんの細かいこだわりをすごく反映しています。たとえば、マスクをするとどうしても目の部分が絵的に平たくなってしまうのですが、そこを立体的に修正したり、瞳の色やまつ毛の描き方や本数にいたるまでこだわって仕上げています。
ねこむ 3Dに落としこむ時は、ほぼスッピンじゃないと上からメイクをすることができないんです。そこで実際に私がメイクしている動画をスマホで自撮りして、レタッチの方にお渡ししました。ほかにも骨格など、でき上がったものに線を引いて修正を加えたりしています。3DCGって、どうしても重力の感じを出すのが難しくて軽く見えてしまいがちなんですよ。そこで、それを感じられるように傾きをつけたりと、1枚1枚にいろいろと手を加えています。
宮本 3Dでこういうスチールを作るということを誰もまだ経験していないわけだから、一点一点仕上げていくのは大変でしたが、細部へのこだわりが着実にクオリティへと反映されていきました。写真集では、ねこむちゃんの実写のポーズと3DCGを比較できる部分もあります。また、ベッドシーンは2Dのイラストで描かれていますが、これもねこむちゃんがポーズを取って撮影したものをもとに描いてもらっています。
──ポージングはどんな風に決めるのでしょうか?
ねこむ 基本的には私が自由に考えています。最初はアニメとかマンガの動きを何度も見て1つひとつ覚えていきます。それが蓄積すると身体でわかるようになり、どう動くとこのキャラクターらしいかと頭でひらめいて、自然と身体が動くんです。
宮本 だからこちらが指示するよりも、ねこむちゃんに聞いたほうがいいんですよ。ドロンジョはこういう動きをするとかしないとか、コスプレの人ってまずそのことから考えるし。
──まさに“演じる”ということですね。
ねこむ そうなんです。ソファに大股広げて座っているカットがあるのですが、こういうポーズもドロンジョ様ならあり得るかも、と。かと思えば、ふとした素のポージングでギャップを出 したりして。そのあたりは自分でもうまくポージングできたんじゃないかなと思います。
宮本 実在のモデルがいる場合、3DCGのゴールは限りなく本人に近づけるところにあります。でも今回は「ねこむちゃんがドロンジョになっている姿」がゴールになるわけで、ちょっと複雑な関係になると同時におもしろさも出てくる。ねこむファンからしてみれば、彼女の実写だけでいいのではという意見もあると思いますが、3DCGの「ねこむ・ドロンジョ」も作られたことで、本人にはできない3DCGならではのことができるわけです。そこに、“憧れ”とか“想像力”といった、かつてのタレント写真集が持っていたものを取り戻すきっかけがあるのではないだろうかという思いがあります。“憧れ”が創作の元になるというのは、コスプレイヤーにとっても同じだと思うんです。ただ絵を真似ているだけではなく、なってみることで“憧れ”がより深まっていく。それはこういうものを作るうえで共通することだと思います。
──ねこむさんはでき上がりを見ての感想はいかがですか?
ねこむ こんなにきれいな3DCGにしてもらえることなんて、一生に一度あるかないかの機会ですし、なおかつこういう写真合成を使った面白い企画に落とし込んでいただき、本当にありがたく思っています。私がしたポージングを3DCGのドロンジョねこむが演じてくれてるなんて、3次元から2.5次元になった気分です(笑)。この写真集は、「よく見たら3DCGだった」といったような形で、2次元と3次元の境目がわからないところに面白みがあって、だからこそよりリアルに近づけたいなと思って制作をしていました。
宮本 今後は、3DCGのねこむちゃんが勝手に動き出すかもしれないね(笑)。
ねこむ 私が知らない間に仕事をしているって、新しいですね!(笑)。たとえばゲームの中にキャラクターとして入って戦うこともできるわけですよね。私はすごく運動音痴なので、私にできないようなアクションを3DCGモデルがやってくれたらすごくうれしいです。私がCGのねこむに憧れを持つという、面白い関係ですね(笑)。
──今後も「月刊 アニメキャラクターシリーズ」の続刊が予定されていますが、どんな内容になりそうですか?
宮本 今回の「月刊 ドロンジョ」に、3DCG・イラスト・コスプレとあらゆる要素が詰まっていますので、それぞれを深化させた内容になります。まだキャラクターは明かせるタイミングにはありませんが、完成に近い段階にあります。どの作品でもやりたいのは、何か妄想を刺激したいということ。試行錯誤のシリーズではありますが、逆に言えば頑張れば頑張るだけ進化できる表現ということは刺激的ですので、毎回を楽しみながら作っています。今回の「月刊ドロンジョ」と続刊シリーズをぜひとも楽しみにしてください。
(取材/文・日詰明嘉)
月刊ドロンジョ doronjo by 御伽ねこむ
(A4サイズ/80ページ/オールカラー)
発売日:2016年6月27日
価格:本体 2,130円(税込 2,300円)
制作・発行:株式会社 M ファクトリー・株式会社エムアップ
販売:ローソン HMV エンタテイメント
御伽ねこむ(おとぎ・ねこむ) プロフィール
1995年12月15日生まれ。大阪府出身。ホリプロ所属のプロ・コスプレイヤー。『週刊プレイボーイ』の「アキバ男子が選ぶコスプレ美少女総選挙」にて1位を獲得しグラビアデビューを果たす。 『ヤングガンガン』の表紙や『週刊プレイボーイ』、『週刊ヤングジャンプ』などにグラビアを掲載。TVアニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」応援大使の“ミス・ドロンジョ”に就任したほか、多数の公式コスプレイヤーとして活躍中。身長163cm。射手座・B型。