「台湾オタクイベント巡り」 アキバ系准教授・川田健

アキバ総研 | 2008年03月13日 13:00

「台湾オタクイベント巡り」 アキバ系准教授・川田健「アキバ系准教授・川田健」連載コラム第3回



間があいてしまいすみません。先日の俗・絶望先生の中の「生きる資格がないのに教員の資格を持っている人なんて、たーくさんいますよ」にどきっとしたアキバ系准教授の川田です。


2月3月は大学生はまるまる休みですが、教員はこの時期は入試やら新学期の準備、それに調査などで結構忙しいのです。12月を師走といいますが、どちらかというと3月の方が忙しいのです。――と、2月は台湾に跨文化(トランスカルチャル)の調査に行ってきました。メインはfancy frontier という台湾最大の同人誌即売会+イベントです。ニコニコ動画でもコスプレの様子があがっていますね。台湾の友人の翻訳家 柳生十兵衛さんに事前に連絡を取ったら、もう一つ、第十六屆台北國際書展(Taipei International Book Exhibition 2008)というイベントがあり、3つある分科会のうちの一つは動漫主題館(漫画・アニメ館)だから行ってみたらどうかと教えてもらいました。さらに台北市立美術館では「海洋堂とオタク文化(海洋堂與御宅族文化)」というのも開催しているとのこと。4泊5日(中3日)でそれらを見て回ることにしました。

今回は非常勤講師である慶応大学SFCの学生で、台湾大学に留学中のS君にアテンドしてもらいました。彼は現在卒業研究で台湾のお宅文化の市場調査をしており、fancy frontierでアンケートをとるということだったので、私もそれに協力するという形をとりました。

木曜日の夕方出発便で台湾入り。台北は夜遅くについても屋台が遅くまでやっているので楽しめます。一日目は台湾大学付近の屋台で食事をしながら翌日の予定の確認。大好きな豆花を賞味。

akiba20080313-kaiyoudou[1].jpg 翌日の午前中は「海洋堂とオタク文化」の展示を見に台北市立美術館に行きました。美術館としては台湾有数の規模と格を誇ります。日本で言えば上野の東京都美術館といった所。そこで堂々とオタク文化の展覧が行われております。海洋堂と言えば、フィギアには全く趣味がない私でも知っているくらいの世界的フィギュアメーカーです。展示はまずアキバの歴史から説き起こし、次にオタク用語基礎知識として「萌え」「同人誌」などを紹介しておりました。そして本題のフィギアの発展、食玩とはということのパネルに続き、安価な食玩から名のある制作者の芸術作品までさまざまのものを展示しておりました。展示はかなり大がかりなもので、だいたい高校の体育館くらいの広さくらいありましたか。ジャンル別の他に作家別の展示もあり、松村しのぶさん、BOMEさん、寺岡邦明さんなどの著名な作家の作品が、プロフィールとともに展示してありました。おもしろかったのは、18禁コーナーが設けられていたこと。まあ、健康的なものではありましたが、「この部屋は12歳以下は立ち入り禁止、12歳から18歳までは親と同伴に限る」という看板が立っておりました。私が知る限り、日本でもこれほど大がかりなフィギュアの展覧会などなかったのではないかと思いますが、詳しい方、お教えください。

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午後は台湾国際書展に向かいました。これは本の展示、即売会で今年で16回目。アニメ・漫画館の会場は元々台北ワールドトレードセンター第二館だったTAIPEI SHOW。約5500平方メートルの会場一杯に台湾漫画出版社やグッズ売り場のブースがありました。売り場の7割強は日本のコンテンツで占められ、その人気の高さがうかがい知れます。日本の漫画を取り扱っている出版社は主に東立出版台湾角川長鴻の3つ、割引で本が買えるとあってどのブースも人気です。日本語の堪能な十兵衛さんも主に日本から来る客をアテンドするためにイベント期間中はほとんど張りついているとのことで、台湾のアニメ・漫画の出版状況を教えていただきました。日本アニメのDVD・VCD販売も充実しており、かなりマニアックなものまで入手できます。台湾の映像販売でおもしろいところは、映像のきれいなDVDと安価なVCDの両方(おそらく、販売時期はVCDの方が遅いでしょうが)流通させるところです。作品によって値段はだいぶ違うので一律に比較できませんが、VCDはDVDのおよそ半額、2クール作品を全話そろえると結構な値段の差になります。でも観察している限り、DVDが売れないかというと、どうもそうでもないらしく、要はその作品に対する思い入れでどちらを購入するかということのようです。これは一つ参考にすべき方法かもしれません。映像コンテンツを購入するというのは、その作品を観てみたいからという理由の他に、その作品を愛しているからという理由がかなり強く働くのではないかと思うのです。ただ話さえ観られればいいというレベル、とりあえず所有したいというレベル、そして美しい映像で所有したいというレベル。特にテレビシリーズのように、全巻揃えると数万円になるものの場合、0か1かという選択肢では、結局海賊版などに流れるリスクが高く、それがモラルハザードをもたらすのではないかと思うのです。とりあえず所有派までのレベルの人に、正規版購入のハードルを下げるというのは、長期的に見てコンテンツ産業にプラスに働くのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

あと、台湾で楽しいのは、ローカライズ(現地化)された正規版のグッズ類です。「涼宮春日的憂鬱」「幸運星」「櫻蘭高校男公關部」などと書かれたクリアファイルなどが入手できます。こういうイベントの他、アニメイト台湾moe-moe-centerといったショップでも購入できますので、台湾旅行のおみやげにいかがでしょう?

終了後、十兵衛さんと食事に。会場出入口にはすでに翌日に備えての徹夜組発見。十兵衛さん曰く、「おそらく明日の美水かがみさんのトーク&サイン会目当てではないでしょうか」と。らきすた、恐るべし・・・。

翌日、翌々日は台湾最大の同人誌即売会Fancy Frontierに行きました。会場は台湾大学総合体育館(ビッグエッグ)。東大でコミケが開催されるようなものと思ってください。FFと略称されるこのイベント。日本からもいくつかサークルが出ていたり、日本から漫画家や声優のゲストも呼ばれるので、あるいはご存じの方もみえるかもしれません。会場前から長蛇の列だったり、会場は戦場だったりというのはコミケと同じ。ただ、こちらは企業体のイベントです。あと、会場がスタジアムですので、観客席は自由に休憩できるスペースとなっており、そこで「戦利品」を早速広げている人、戦い終わって居眠りするひとなどが方々にいるのが違うところでしょうか。広さは2000平米強。さすがに手狭で、動線もきついようですが、会場使用料などを考えるとここ以外は難しいと仄聞しました。

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S君と私は、そこでアンケートを敢行しました(もちろん、主催者の許可を得てですが)。特定の場所に座って書いてもらうなどということはできませんので、 観客席でくつろいでいる人にお最初中国語で趣旨を説明し、OKをもらったらアンケート記入をお願いするというスタイル。日本だったら瞬殺で断られそうですが、拒否はほどんどなく、結構にこやかに答えてくださいました。「非常感謝!」。笑ってしまったのは、趣旨を説明したら「Sorry. I am Japanese.」と言われてしまったこと。日本から取材に見えた記者の方にも声をかけてしまったのでした。

akiba20080313-frontier_stage[1].jpg予想外にアンケートが順調だったので、イベントにも目を移すことができました。今年のゲストはおねえちゃんこと井上喜久子さん。「こんにちは~。井上喜久子 17歳です。」(通訳が入る前に)「おいおい!」。 す、すばらしい会場の一体感。イベント会場の一角という悪条件にもかかわらず、おねえちゃんの挙止を見逃すまいと集中する台湾のファンの方々。思わずじんときました。  


akiba20080313-haruhi_bus[1].jpg台湾に行くと思うのですが、日本ではオタク系文化と見なされている者が、一般の人の目にふれる場所に堂々と存在している。たとえば「涼宮ハルヒの憂鬱」のテレビ放送宣伝のラッピングバスが公道を走っていたり、台湾の原宿ともいえる西門町に大きなアニメショップが店を構えたりなどなど。日本で仮に「本の展示会」の1コーナーとしてアニメ・マンガのテーマ館が設置されたら、つまり一般市民向けイベントの1つとしてこうしたものがあったら、アンパンマンと灼眼のシャナが同居するなんてことはまずないでしょう。

akiba20080313-frontier_itasha[1].jpg外国文化の受容の形態として非常に興味深いですが、冷静に考えれば、そこにわざわざ壁を作る必要はないはず。もちろん一部のマニアだけにとどめておいた方がいい作品もありますが(私が好きなのでは、千葉紗子さんが怪しい呪文を唱えるあれとか・・)、深夜に放送されるクオリティの高いアニメまで、一律にごく一部の好事家の趣味として「隔離」しておいて「日本はアニメ大国だ」は全く説得力に欠けると思うのです。むしろ、「日本アニメ」として雑多に受け入れている台湾の方が、実は豊かな文化生活を送っている、そんな気さえしてきます。台湾に行くとほっとするのは、そんなこともあるのかもしれません。



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【関連記事】
「ブックレビュー 『アキバをプロデュース』」 アキバ系准教授・川田健(2008年1月30日)
「アキバで森林浴」 アキバ系准教授・川田健(2007年12月19日)

【関連リンク】
愛知文教大学  川田研究室のぺぇじ
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