「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」トークショーレポート 監督の坂本一也、脚本の永川成基が登壇。今だから語れる制作秘話も。

アキバ総研 | 2016年06月01日 12:00
「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」トークショーレポート 監督の坂本一也、脚本の永川成基が登壇。今だから語れる制作秘話も。

2016年5月21日、「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」完全版の上映会&トークショーが開催された。会場の下北沢トリウッドには、坂本一也監督とシリーズ構成・脚本の永川成基が登壇。制作を終えた今だからこそ話せるエピソードを披露した。

アキバ総研では、大盛況となった本イベントの模様をお伝えする。オンエア終了直後に掲載した坂本監督の独占インタビューと合わせて楽しんでほしい。


関西を第2のアニメ産業地にしたい TVアニメ「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」坂本一也監督インタビュー


下北沢トリウッドは新海誠監督の自主制作アニメ「彼女と彼女の猫」が初上映されたミニシアターで、ファンにとっては聖地とも言える劇場だ。2001年の上映から15年、今度は2016年3月放送のTVアニメ「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」が1週間限定で上映されることになった。上映初日のイベントには多くの来場者が詰めかけ、立ち見も出るほどのにぎわいを見せた。男女問わず幅広い年齢層の観客が集まり、TVアニメ版は原作ファンだけでなく新しい視聴者の心もつかんだようだ。

イベントはTVシリーズ全4話に新規カットを加えた完全版の上映からスタート。新たに制作されたオープニング映像では、美優役の花澤香菜さんが歌うオープニング・テーマ「硝子の瞳」もお披露目され、ファンはその美しい歌声に酔いしれる。本編上映後には坂本一也監督と永川成基氏が登場し、ファンから割れんばかりの拍手が送られた。

2人は満席となった会場を見渡して少し緊張した様子。客席から1メートルも離れていないトリウッドならではの光景に、坂本監督は「近いですね」と照れ笑いを浮かべつつ、トークショーが幕を開けた。


まずはMCが「原作の『彼女と彼女の猫』の初上映をトリウッドで見た人はいますか?」と会場に向けて質問すると、なんと客席ではなく永川氏が手を上げるという意外な展開に。永川氏は「当時は動画配信もなかった時代なので、トリウッドでしか見ることができなかったんですよ」とコメントし、「十数年の時を経て、まさかステージに立つ側になるとは……」と感慨深げな表情を浮かべた。

多くのファンを持つ原作ゆえに、実は坂本監督の心境は複雑だったそうだ。アニメ作品の再アニメ化であり、そのうえ新海監督ではなく自分が監督することにとまどい、プロデューサー陣に対して「この大人たちは何を考えているんだ?」と思ったと語る。だが新海監督が所属するコミックス・ウェーブ・フィルムから「原作のテーマやエッセンスを大事にしてもらえさすれば、あとは自由に作ってもらいたい」とオファーを受けて、TVアニメ化に挑むことになった。


オリジナルストーリーで行く方針が決まった際には、脚本の依頼先はノベライズ版を手がけた永川氏しか考えていなかったという。その全幅の信頼について、坂本監督は「永川さんは新海さんの言葉の紡ぎ方をしっかり理解されているんです。セリフ回しや文章の1つひとつをきちんと作っていただけて、すごくよかったと思っています」と理由を明かす。

永川氏も「他の人が脚本だったら許さないぞって思ってました。やっぱり悔しいですしね」と、念願のオファーだったと応える。さらにシナリオ執筆時のエピソードを問われると、永川氏から「原作アニメをエンドレスで再生して新海テイストを会得した」という逸話が飛び出した。原作の猫・チョビは新海監督自身が声をあてているため「新海さんの声を世界で一番聞いているのは自分じゃないかと思うぐらいでした」と笑顔を見せた。


ストーリー展開については、最終話にチョビが登場して原作と世界観が繋がるという構成についても触れ、坂本監督は「チョビを出すことは最初の段階から決めていました。30分のアニメの枠に収まるのではなく、そこから違った見方や可能性を感じられればいいと思ったんです」と、広がりのある作品にしたかったという狙いを語った。そのアイデアを聞いた永川も「輪廻転生を感じさせる構造がしっかりとできていたので、これはイケると思いました」と制作当時を振り返った。

いっぽうで坂本監督は、今だから言えることとして「新海さんのタイトルをいただいた以上、新海さんのファンの方々にどういった反応をしてもらえるのか怖かった」と、不安だったとも打ち明ける。そのため作品の広がりという意図だけではなく、実は原作にも繋がるポイントがあれば新海ファンにも受け入れられるのではと、打算的な思わくも少しあったことも照れながら告白していた。しかし、そうした仕掛けにより結果的に色々な方々から反響があったことに手ごたえを感じていたようだ。


いざオンエアが始まると2人は評判が良いことに安堵しつつも、1点だけ予想外の反応があったと口にする。それは第1話での就職活動に失敗した美優を見て、現在就活中の学生たちが我が身のことのようにショックを受けていたことだった。永川氏は「こんなにダメージを与えてしまうとは思っていなかった」とまったく想定していなかったと語る。坂本監督も「美優が就活に苦しむことは、全体の中ではそこまで重要視していませんでした」と深刻に描いたつもりはなったとコメント。美優が抱えている本当に辛い部分は、第2話以降で描かれた家庭環境をはじめ、これまでの人生でのさまざまな体験が積み重なったものだと話す。「基本的には前向きなお話なので、辛いことがあっても頑張ってほしいという想いを込めて作っています」と胸の内を披露した。

トークショーの後半には質疑応答コーナーが設けられた。「ダルを黒猫にしたのはなぜでしょうか?」という質問には、白猫にするとチョビと勘違いされてしまう恐れがあったと回答。だがそれだけではなく、黒という色に多彩な意味合いを持たせているのだという。たとえば永川氏にも話していない裏話として「ダルは親猫と別れてから2年近くは野良猫だった」と初期の構想を明かした。黒猫ゆえ闇夜に紛れることで、人間に捕まらず生き延びることができたそうだ。尺の都合上、本編で描かれることはなかったが、細部へのこだわりが感じられる一幕となった。


最後に坂本監督は「『彼女と彼女の猫』はノベライズやコミカライズも含めて、いろいろな形で作られていて、いろいろな見方ができる作品です。TVアニメは終わってしまいましたが、美優の人生はこれからも続いていきます。10年、20年経ったときに見返していただけると、また違った見方ができるかなと思っています」と自らの想いを伝えた。そして「この作品を長く愛していただければ幸いです。ありがとうございました」と感謝のメッセージを送った。

なお、イベント後にはBlu-ray・DVD・小説の購入者に向けたサイン会が実施され、来場した多くのファンが参加する盛り上がりを見せた。2人はサイン会でも質問に応じ、作品同様のアットホームな雰囲気の中でファンと交流を深めていった。

会場では「彼女と彼女の猫EF」初のグッズとしてアクリルキーホルダー、ウッドストラップ、缶バッチが販売された。猫好きの坂本監督も注目の仕上がりで、こちらもファン必携のアイテムになるだろう。


(文・高橋克則)


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■Blu-ray仕様

品番:TBR26096D 価格:¥5,500+税

仕様カラー/1層(BD25G)/16:9ワイドスクリーン

2016年/1枚組/日本語リニアPCM2.0chステレオ

■DVD仕様

品番:TDV26097D 価格:¥3,500+税

仕様カラー/片面1層/16:9LB

2016年/1枚組/日本語リニアPCM2.0chステレオ

■特典
●「彼女と彼女の猫 -EverythingFlows-」TV放送版 第1話~第4話 (計32分)
●PV集●絵コンテギャラリー(静止画)※Blu-rayのみ収録
●特製ブックレット(20ページ)※Blu-rayのみ ●紙製スリーブケース ※Blu-rayのみ

TVアニメ『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』オリジナルサウンドトラック(発売中)

■CD仕様

音楽:TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST/クラムボン

品番:LACA-15571 価格:¥2,000+税

本作のために作られたBGM全曲と、クラムボンによるED主題歌「ソナタ」を収録!


(C) Makoto Shinkai/CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

画像一覧

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放送日: 2016年3月4日~2016年3月25日   制作会社: ライデンフィルム京都スタジオ
キャスト: 花澤香菜、浅沼晋太郎、矢作紗友里、平松晶子
(C) Makoto Shinkai/CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

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