“関西を第2のアニメ産業地にしたい” TVアニメ「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」坂本一也監督インタビュー

2016年03月28日 12:000
(C) Makoto Shinkai/CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

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関西からアニメ業界を盛り上げる


──ライデンフィルム京都スタジオで作品を手がけてみていかがでしたか?

坂本 僕が人材教育のためライデンの京都スタジオに所属した当初はスタッフが2人しかいない状況でしたが、今では15人ほどの人員を抱えています。それでも10年以上のキャリアがあるのは僕を含めて3人だけで、20代のスタッフがメインの若いスタジオです。本当に元請ができるのか、勝算すらなかったのが正直なところでした。

──それでも決断した理由はなんでしょうか?

坂本 関西でアニメの元請をして作品を発信することが、京都スタジオを作った目的なんです。今は地方スタジオも増えていますが、それでも東京からの下請仕事が多くて、元請ができないという現状があります。僕も他社から監督のオファーをいただきましたが、東京に在住することが前提だったため引き受けられませんでした。「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」ではアフレコやダビングなど音響に関するセクションのときだけ上京して、ほかはすべて関西で作業をしています。監督が地方スタジオにずっと席を持って、そこで作品を手がけるという商業アニメでは珍しい前例を作ることができました。京都アニメーション以外ではまれなケースだと思います。

──作画以外のセクションはどのように進んでいきましたか?

坂本 京都スタジオはまだ作画スタッフしかいないため、動画や仕上げは関西の他のスタジオにお願いしました。それはライデンフィルムの取締役である里見哲朗さんに「ポストプロダクションも関西でやりたいよね」とムチャ振りされたことがキッカケなんです(笑)。それならと彩色は滋賀のBe Loop、編集は自分で探してきた大阪のグッド・ジョブに依頼しました。両社からは「いい機会なのでチャレンジさせてほしい」と返答をいただけて非常にありがたかったです。関西でどこまでできるのか手探りの状況でしたが自信に繋がりました。僕はキャリアを通じて京都でアニメを作って来た人間ですから、アニメ制作を関西で完結できる仕組みを作ることが最大の目標なんです。そういった想いを抱いているスタジオ経営者が大勢いらっしゃるので、きちんと連携を取れる環境を整えて、関西圏のスタジオでもビッグタイトルが手がけられるようにしたい。関西を第2のアニメ産業地にしたいんです。その一歩として、関西に元請会社が存在すれば仕事を振ることでノウハウを蓄積できる。今回は新しい展開に繋げるための足場固めになりました。関西のアニメ業界の地盤を強くするために、これからも挑戦していきたいです。

──京都スタジオの若いスタッフから刺激を受けることはありますか?

坂本 もちろんです。とくに女性スタッフからは制作中もツッコミを入れられましたね。彼女が料理を作るシーンでエプロンをさせたら「若い女の子がエプロンなんてしませんよ!それは男の妄想です!」と斬り捨てられてしまいました(笑)。僕の年齢の男目線ではわからないこともあったので、若いスタッフと女性の感性に気付かされることが多かったです。人材教育という面でも同じフロアでやり取りしているので、何か問題があればじかに教えることができました。その点もやりやすかったですね。


──初監督を終えての達成感はありますか?

坂本 監督なんて大変そうだし正直、必要がないならやらなくてもいいかなぁと思っていたんですよ。でも実際に経験してみると、演出として参加するのとでは作品との関わり合いがまったく違う。シナリオもいちから考えていったし、キャラクターデザインも相談しながら作っていけた。新しいことが体験できて、やりがいも感じられて、アニメ制作の楽しさを改めて教えてもらいました。

──これまでも多くの作品に関わってきましたが、ご自身の作風を意識したことはありましたか?

坂本 監督として新しい経験を積めたいっぽうで、演出としてはコンテを描き終わったときに「やっていることは同じだな」と思ったんです。「CLANNAD AFTER STORY」でも猫を飼っているキャラクターのエピソードを担当しましたが、そこでも桜の花びらが風になびいたり、友達と電話をしながら話を進めていったりと、似たシーンを作っていたんです。もしかしたら根本的にやりたいことは変わっていないのかも知れません。

──今後はどんな作品を手がけていきたいですか?

坂本 「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」はマンガ的・アニメ的なキャラクターの個性の強さをなるべく抑えて、アニメだけどリアリティを織り交ぜていく作風でした。ただ僕はベタな王道アニメも好きなんですよ。ロボットものもストーリーが複雑なものよりは、バトルのカッコよさをシンプルに描いた作品の方が好みです。お約束に乗っ取ったうえでストーリーを進める作品を手がけることが多かったので、その方向性のアニメを今度は監督として送り出したいですね。1つの作品だけで京都スタジオの色が決まるのではなく、さまざまな作風を模索していきたいです。そういったことを積み重ねていって、多くの作品を提供していければと思っています。


(取材/日詰明嘉、高橋克則 構成/高橋克則)



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彼女と彼女の猫 -Everything Flows-

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放送日: 2016年3月4日~2016年3月25日   制作会社: ライデンフィルム京都スタジオ
キャスト: 花澤香菜、浅沼晋太郎、矢作紗友里、平松晶子
(C) Makoto Shinkai/CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

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