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仮歌では、全員のモノマネをして歌いました
──では、いよいよ「おそ松さん」です。
松井 赤塚不二夫作品は大好きなので、「おそ松くん」が「おそ松さん」になってアニメ化されるという話を聞いた時から、関わりたいなと思っていました。そうしたら、思いは通じるものなんですね。EDの話が降りてきたんです。
石川 曲作りは早かったよね。話が来る前から、主題歌を作るならイヤミの曲だろうなってイメージしてたし。
松井 イヤミなら、ファンクの曲調で「シェー」だろうとずっと考えてて。
フジムラ 僕らが見ていた平成版の「おそ松くん」はイヤミ中心のアニメだったので、今回は6つ子がフィーチャーされるということを知る前は、どうしたってイヤミになりますよね。
松井 それで打ち合わせに行ったら、異常なほど豪華なキャスティングを知らされて、しかもこの6つ子を全員使って曲を作れないかと言われて。
──テクノボーイズとしては、当初の予定にあったイヤミに、6つ子を加える形で。
松井 そうですね。それで最初からイメージしていた通りの曲を作って提出したんですが、テンポが遅かったせいか、差し戻しになったんです。でも、僕らは絶対にこの曲を通したくて、テンポを速くしてアレンジも突き詰めて、セリフも台本をもとに書いて、とにかく完成形に近づいたものを聴いてもらおうと。さらに、キャスト全員のモノマネをして、僕が仮歌を歌ったんです。
フジムラ 「櫻子さん」「コンクリート・レボルティオ」での仮歌の話は、ここに繋がるんです(笑)。
松井 その時点ではイヤミをどなたが演じられるかは知らなかったんですけど、6つ子はそれぞれの声優さんの声を分析して、いろいろな声の中で、皆さんはどう演じられるだろうかと予想して。
石川 そうして採用されたのが、「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」です。
松井 メロディは最初からまったく変わってません。テンポが速くなっただけで。あと各松ごとに合計6パターン作るというのは、こちらから提案させていただきました。
フジムラ 打ち合わせで言っちゃったんだよね(笑)。
松井 6パターンと言っても、1番と2番があるから、結局12パターンなんですよね(笑)。
──6つ子同士の合コンというストーリーは、どうやって生まれたんですか?
松井 きっかけは彼(石川)が作ったメロディですね。部分部分に、メロディを聴くだけで、どんな歌詞を付けてほしいのかわかる部分があって。「おフラ~ンスでミーは知ったザンス」とか、「誰が誰でも同じザンス」とか。イヤミはいったい何を知ったんだろう、と考えていったんです。それともうひとつ、今回の6つ子は大人なので、子どもだった頃との違いはなんだろうと考えると、女の子に対するアプローチなんじゃないかと。昔は「トト子ちゃん、大好き!」だけだったんですが、成長して変わっていったはずなんですよね。そんな時に、相手も6つ子だったら、どうだと、ふと思いついて。これがブレイクスルーでしたね。
──フルバージョンを聴くと、本当に6つ子が合コンにこぎつけたことが分かります。
松井 少しずつ、全貌がわかるようにしたかったんです。オンエアでおそ松バージョンを聴いただけではわからないことが、カラ松、チョロ松と聴いていくごとにだんだんわかってきて、CDでフルサイズを聴くと、そういうことだったのかと。歌詞カードを見ながら聴くと、ここはこんなことを歌っていたのか、と新たな発見があると思います。
──6つ子とイヤミのレコーディングは、どんな感じだったんですか?
松井 6つ子のボイスはアフレコスタジオで、各話の収録が終わった後に少しずつ録っていきました。イヤミの鈴村(健一)さんのみ、レコーディングスタジオでの収録です。
石川 鈴村さんのレコーディングは早かったですね。滑舌がものすごくいい。
松井 誰が聴いても、イヤミでしかない歌になっていて、すごいなと。あれを踏まえることによって、僕のイヤミのモノマネも完成度が高まりました(笑)。
──この曲は、ファンの反応がすごいですね。
松井 歌詞を深読みしていただいたり、フジムラくんのベースをマネしてくれたり、ありがたいですね。僕らとしては、公式で「シェー」をできるのがうれしくて。今、「シェー」を堂々とできるアーティストは、テクノボーイズだけなんじゃかいかと(笑)。
フジムラ だったら、積極的にやらないといかんと(笑)。
松井 僕らのツイートでもすでに話題になっている、各松ごとに使い分けたドラムマシンの音も、CDで聴き分けに挑戦してもらいたいですね(笑)。
「紅殻のパンドラ」は、テクノボーイズらしいサウンドに
──最後にお話しいただくのは、「紅殻のパンドラ」。サウンドトラックを担当されていますね。
フジムラ 異色ではありますけど、士郎正宗さんの作品ということで、僕らは避けては通れないなと。
松井 「Ex Machina」で、士郎正宗作品には、すでに関わっているので。でも今回は、やりやすさとやりにくさが混在している作品でした(笑)。
石川 サウンドトラックに関してはサイバーな世界観を重視して、キャラのかわいさはどけました。音楽的には硬派です。
松井 とは言っても、かわいい曲を全く排除したわけではないんですけどね。
フジムラ 「紅殻のパンドラ」は、まずは劇場で上映されたので、テクノボーイズにとっては、初の劇場版のサントラでもあります。
石川 劇場を意識して、音は今までと明らかに変えました。
フジムラ そう、派手な音を多めにしようとか。
松井 全体的にフィルミックな曲が多くて、面白いと思います。弦の使い方とか、過去のテクノボーイズのサントラとは方向性が違うので。みんな、こんな曲書くんやって、正直思いました。それから、感情のデフォルメの仕方も今までと違う。映画は短い時間で伝えなければいけないので、いい意味で細かいことをするのをやめたんです。「櫻子さん」の後というのも、よかったですね。
──と言いますと?
松井 方向性が逆の2作品ですから。少なくとも、僕が担当した曲はタイプがまったく違っていて、久しぶりにこっちの世界に帰ってこられました。作品の傾向的にも、テクノボーイズの土俵で勝負できるので、「紅殻のパンドラ」は安心感がありましたね。
──よりテクノボーイズらしい音が聴けるということですね。
松井 そうですね。テクノボーイズの個々のキャラクターがよく出ているサントラです。石川曲だな、フジムラ曲だな、松井曲だなって。それに、もう1人、テクノボーイズのサポート・ドラマーであるよしうらけんじさんにも作曲で参加していただいて。独特な曲を書かれる方なので、四者四様の曲が楽しめると思います。
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND プロフィール
フジムラトヲル(作曲・プログラミング・ベース・ボーカル)、松井洋平(作曲・プログラミング・サンプラー・ボーカル)、石川智久(作曲・キーボード・プログラミング・ボーカル)の3人組。1994年に「TECHNOBOYS」として結成。2005年、フランスの映像会社『Le Pivot』のPV曲リミックスから、「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」を名乗る。TVアニメ『ウィッチクラフトワークス』、『トリニティセブン』などの主題歌、サントラを担当。また、それぞれのソロワークも多数。
CD情報
TVアニメ『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』ED
「打ち寄せられた忘却の残響に」
レーベル:ランティス/1200円+税
発売日:2015年11月4日
TVアニメ『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』オリジナルサウンドトラック
「music beneath the cherry blossom」
レーベル:ランティス/3500円+税
発売日:2015年12月23日
TVアニメ『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』
「神化・傑作曲集」
レーベル:ランティス/3000円+税
発売日:2015年12月23日
TVアニメ『おそ松さん』ED
「SIX SAME FACES~今夜は最高!!!!!!~」
レーベル:エイベックス・ピクチャーズ/1500円+税
発売日:2015年12月16日
(取材・文/鈴木隆詩)