アーティストに直撃取材！　楽曲作りに活用しているオーディオ製品、教えてください！　番外編　早見沙織

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まずは、Just earがどんな音質のイヤホンであるのかを試聴。再生機器は「DP-X1」を使用し、早見さんのシングル「やさしい希望」を聴いてみる。

早見　すごくきれいなので感動しました！　レコーディングをしているときのような気分です。レコーディングのときよりきれいかも（笑）。曲を作るときや歌うときに、こんなふうになったらいいなあと、思っていた音に近いです。特に「ブルーアワーに祈りを」は、しっとりとした雰囲気をイメージするところから制作をスタートしたので、まさしくそのイメージのように融け落ちていく感触が伝わってきてとても素敵でした。普段（iPhoneなどで）聴いているのに、別の曲のように感じました。

松尾　今、聴いていただいたモデルは、J-POPが心地よく聴けるように調整されたものです。調整が変わるとどのように聴こえ方が変わるのかを実感していただくために、次は別のモデルを聴いてみましょう。重低音を強調したモデル、通称“ゴジラベース”です。クラブミュージックなどをお好きな方が好まれるような、刺激的な音質に調整されています。

早見　かわいい！手描きのゴジラのイラストが描いてあります。ずいぶんと平和なゴジラが（笑）。

続いて、ユイレヴィ♡【風間レヴィ（CV.佐倉綾音）＆倉田ユイ（CV.村川梨衣） 】の「SHaVaDaVa in AMAZING♪」を再生。TVアニメ「トリニティセブン」のエンディングを飾った、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの作詞・作曲によるキャラソン・ナンバーだ。今回は、TECHNOBOYS自身がリミックスしたアルバム「trinity heaven7: MAGUS MUSIC REMIXES　TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」に収められたバージョンのハイレゾ音源を試聴した。早見さんもよくご存じなおふたりの声がイヤホンから飛び出し、一瞬、驚く場面も。

早見　・・・めっちゃカッコイイ！　ベースがカッコイイです!!　何より曲の作り方が面白いですね！（笑） このTECHNOBOYSさんは、打ちこみの方たちなんですか？

──人力でアナログシンセを操作しています。ベースも手弾きなんです。

早見　昔のYMOのような感じなんですね。わたしも「物語」シリーズで斧乃木余接のキャラソンを収録したとき、声や音を素材として録ったんですけど、曲の作り方がそれに似ています。なるほどー、“ゴジラベース”にすると、こういう感じの音になるのですね。音の鳴り方も先ほどのものとは全然違います。パンチが効いてます！　では、たとえばこの曲が大好きなのでこの曲に合わせた調整を、というのもできるのですね？

松尾　おっしゃるとおりです。ベースラインや重低音のみ、あるいはボーカルに徹した調整など、さまざまな調整が可能です。もちろんひとつの要素に特化したものだけでなく、それぞれ好みの要素を重視しながら、ボーカルとサウンドのバランスを整えることもできます。お客様と楽曲を聴きながら、お好みの音質へ調整を突き詰めていくのがJust earの特徴です。

早見　きめ細やかな調整ができるのですね。どのような音質になるのか楽しみです！

ひと通り異なる音質のモデルを聴いた後、耳型採取を行った。採取にかかった時間は、1時間弱ほど。そして、松尾氏みずから淹れるコーヒーをいただき、一息つく早見さん。リラックスした雰囲気でイヤホンの音質調整が始められた。調整は同じ音源を松尾氏と一緒に、それぞれのイヤホンで聴きながら、対面方式で行われる。

使用した音源は、「やさしい希望」と、早見さんがお好きな山下達郎の「BOMBER」、そしてスクリレックス「Scary Monsters and Nice Sprites」。山下達郎の曲のなかでも、ファンキーなベースラインが魅力的とのことで「BOMBER」を、また「ガシガシした音」もお好きだそうでスクリレックスと、振り幅の広い選曲。調整の際には、このようにタイプの異なる楽曲を聴き比べ、自分の好みに合った音質を見つけやすくする方法をJust earでは採用している様子。

「もう少しナチュラルめにしてみましょう」「ボーカルをちょっと華やかにしてみますね」

変化を聴き比べ、問答を繰り返しながら、松尾氏が高域から低域までそれぞれの帯域を微妙に調整。早見さんが理想とする音質へどんどん近づけていく。

早見　先ほど、低域を上げていただいたときには、ベースが響きすぎて達郎さんの声が聴き取りにくくなりましたが、今は、ほどよいバランスで心地よく聴こえます。

松尾　早見さんとわたしが聴いている音が同じなので、感じていらっしゃるイメージはわたしとほぼ同じです。求めていらっしゃる音のイメージや方向性を、照らし合わせながら調整を進めます。このように調整したバランスでカスタム品をお作りします。そして、出来上がったものを聴いていただいて、さらに調整を行う。これが音質調整モデルの製作工程となります。

早見　同じ曲でも調整によって、それぞれ違った表情を見せてくれるのですね。調整を聴き比べるのはとても楽しいです。ずっと聴いていたくなります（笑）。

ここで本日の工程は、ひとまず終了。調整した音質を元にイヤホンの製作が始められる。Just earは専任のマイスターが、イヤホンをひとつずつ手作りで製作している。1人ひとりの耳の形状に合ったシェルを、熟練した指先が丁寧に仕上げていく。そのため製作期間が1か月ほど必要とされるのだ。