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キャラクターの個性を前に押し出す
──鉤貫レムをはじめ、男性キャラクターを魅力的に見せるのは、この作品のポイントと思いますが意識している点はありますか? たとえば前作「アオハライド」は少女マンガ原作でしたが、男性キャラクターをかっこよく見せる見せ方はまた異なりますよね。
吉村 「アオハライド」の時は、男性キャラクターをかっこよく見せるのも大事なんですけれど、それよりも「女の子をかわいく見せる」ことのほうをより意識していました。いっぽうで「Dance with Devils」はかっこよさというより「各キャラクターの個性を前に出す」という意識で演出しています。だからキャラクターの個性が見えるなら、かっこよさにこだわらずにちょっと抜けたような表情も描いてます。第二幕で生徒会メンバーが揃ってワイワイしているシーンなんかも、みんなでいる時にはこんな抜けた部分も見せるような関係性があるよ、という部分を出したかったのです。
──そういえば「アオハライド」では挿入歌が印象的に使われていましたが、あれもミュージカル志向の現れだったのでしょうか?
吉村 いえ、「アオハライド」はTVドラマのような作品にしたいと思っていたので、それで挿入歌を使いました。引き絵(ロングショット)が多いのも、実写的な雰囲気の画面にしたかったからです。それでいうと「Dance with Devils」は、舞台をイメージして演出しています。そのまま実写のミュージカルにしてもおかしくないような感覚で画面を作っています。
──鉤貫レムというキャラクターの魅力はどこにあると考えていますか?
吉村 レムは最初すごく王子様っぽい感じなんですけれど、最終的にもうちょっと違った側面を見せるようになります。そこにレムの魅力があると思っています。だからリツカとの距離の変化はかなりていねいに描くように心掛けています。相手の呼び方がどう変わるか。レムにとってリツカという存在がどう変化するのか。そんな積み重ねを踏まえて、第八幕からは一気にクライマックスですね。
クライマックスに向けて本格的ミュージカル曲
──吉村監督はこれで監督作が3作目になりますが、ライトノベル、少女マンガ、乙女ゲームとジャンルがバラバラです。監督を引き受ける時の何か基準はあるのですか?
吉村 自分の中で、この題材をどう落とし込めば作品として形になるのか、それが最初に見えるかどうかです。私は実は、乙女ゲーム的なイケメンを魅力的に見せるのが決して得意ではないという意識があって。だから「Dance with Devils」のお話をいただいた時は迷いました。ただお話ししていく中で、ミュージカルというスタイルでキャラクターを前に押し出していけばいいんだというところが見えたので、お引き受けしたんです。
──監督という仕事について影響を受けた人はいますか。
吉村 それはやっぱり高松信司監督ですね。「銀魂」で各話演出をやりながら高松さんの仕事を間近に見ていたのはとても大きかったです。それがなければ、いろんなことに気づかないままだった思います。高松さんは、原作ものをアニメ化する時、どうすれば自分なりの味付けの作品になるか、その部分の感覚にたけているんです。さらにプロデューサー的な発想で、映像の外側も含めて作品をどう盛り上げているかも考えていて。自分ができてるかどうかは別にして……結構、影響を受けていますね(笑)。
──監督する上で意識していることがあったら教えてください。
吉村 監督業って一種の“営業”だと思っています。いろんなスタッフに“営業”をかけて、どういうつもりで作っているか説得して作品に加わってもらう。スタッフが楽しく仕事ができるような環境作りも大事な役割だと思います。あともちろん、予算や現実の枠組みの中で、いかにおもしろいものを作るか考えるのも大事です。作画枚数をかけられない状況があるなら、その中で考える。「おもしろいもの」は作画枚数かけられなくてもできるはずなので。……これも高松イズムですね(笑)。
──最後にこれからの「Dance with Devils」の見どころを教えてください。
吉村 このインタビューが掲載されるころ、舞台版の情報が解禁になっているはずです。劇伴や挿入歌の楽曲がTVと共通ということなので、すでになじみのある曲があるというのは楽しめるポイントだと思います。そしてTVアニメのほうはクライマックスに合わせて、各話にかなり本格的なミュージカル曲が入ります。構成がとても独特な曲があったり、クライマックスではとても壮大な曲があったり。ミュージカルを好きな方も、そうでない方も、あまり難しく考えずに作品を楽しんでいただければと思います。
(取材・構成/藤津亮太)