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TECHNOBOYSの充実したステージの後、10分ほどの休憩を挿み、fhánaのライブが始まった。
美しいインストゥルメンタル・ナンバーに導かれて、ステージにfhánaの4人が次々と現れる。モノトーンを基調としたシックな彼らの新しい装いは、ビルボードライブに驚くほど似合っていた。
そして、まずは彼らのメジャーデビュー曲「ケセラセラ」でスタート。
京都を舞台にしたTVアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマで、ひょっとしたらお隣の大阪ならばと、この曲から始めたのかも!? メジャーデビュー2周年を迎え、ますますアレンジに磨きがかかっている印象だ。
続いて、8月にリリースされたTVアニメ「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!」のオープニングテーマ「ワンダーステラ」。デビューアルバムの後に発表された、比較的新しい楽曲ということもあってか、ドライブ感の高い、勢いのある演奏を聴くことができた。
「“こんにちは”なんですけど、“こんばんは”な雰囲気ですねえ」
MC第一声はtowanaから。
確かに1stステージである昼過ぎの時間帯にもかかわらず、トーンダウンした照明に浮かぶ会場の雰囲気は、夜の帳が下りたかのよう。
メンバーからも「ラグジュアリー?」「ムーディーかな?」「リッチですね!」などの言葉が飛び出す中、towanaが「皆さん、昼間からお酒飲んでてイイですよね」と悪戯な笑みを浮かべる。
「今日はfhánaもポータブルアンプでコラボしている、ORBさん主催のイベントです。「ワンダーステラ」やっているとき、社長さんノリノリだったのステージから見えました(笑)」
と客席に話しかける。
「そう、今日は電源ケーブルも機材のケーブルも全てORBのケーブルを使用してます。ギターのパッチケーブルまでそうなんです。音がスゴくイイんですよ!ORBさん最高です!!(笑)」
yuxuki wagaがうれしそうにこたえる。楽器や機材、新しいガジェットには目がない彼ららしい発言だ。
実際、今回のライブでは音の定位や解像度の高さ、低域の切れや抜けのよさが素人の耳でも理解できた。スタジオライブの音質をそのままステージへとスケールアップした空間の描写力が把握できる。fhánaが初のワンマンライブをおこなった際も、ケーブルをORB製に交換していたりと、信頼の深さが感じられた。
MCが終わり、曲の演奏へ。「いつかの、いくつかのきみとのせかい」ではイントロのピアノと同時に観客から手拍子が起こり、鉄琴を叩いているkevin mitsunagaもこれに応じる。
客席に座りながら、体を揺らしている観客の姿も見受けられる。
フェスやコンサート会場のような色とりどりに変化する照明や明滅するレーザー光線、スモークなどの派手な演出はここにはない。ステージには楽器と機材、演奏者のみの、シンプルなスタイルとなる。だが何より、最前列のテーブルがステージと隣接するほどの至近距離にて体感できる。メンバーの一挙一動が、その息吹が間近に伝わる。
全身を精一杯伸ばし歌い上げるtowanaの姿も、ここでは一段と大きく感じられる。ステージと客席との距離が、演奏者と観客の気持ちを近づけ、会場の一体感を強めていく。
MCを挿みデビューアルバムの1曲目「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」が始まる。佐藤純一による力強いピアノのイントロが、CDとは異なるアレンジで奏でられる。しなやかなボーカルにタイミングを合わせ、kevin mitsunagaの緻密なサウンド・トリートメントが、yuxuki wagaの突き抜けるギタープレイが加わり、華やかに展開してく。素晴らしいアレンジだ。
再びMCとなり、9月下旬に参加した「Anime Weekend Atlanta」の話題や、リーダーの佐藤純一がライブ前日に参加した、友人の結婚披露宴にて弾き語りをした話題などで大いに盛り上がり、結果的に随分と長いMCに。そう、今回のライブでは、fhánaのMCがいつもより長いのだ。会場の空気がフレンドリーで和やかなので、ついつい饒舌になってしまうのだろう。ところどころ脱線しがちな話をkevin mitsunagaがうまく切り返しまとめていて、彼の仕切り上手な一面も見ることができるなど、MCタイムもなかなかに充実したものになった。
続いての曲は、偶然にもライブ当日の夜から放送が開始されたTVアニメ「コメット・ルシファー」のオープニング・テーマ「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」をステージで初披露。疾走するリズムがみずみずしい躍動感を描きだし、堰を切って展開するサビの鮮やかさは、新たな物語の始まりを告げる。今までの彼らを凝縮しつつも、次のステージへと踏み出し、さらに飛翔する姿を予感させるような、アグレッシブさが溢れるサウンドに仕上がっていた。
fhánaもTECHNOBOYSと同じく、ユニットへの先入観からか、スタジオワークがその完成形と思われがちだ。しかし、ライブではそれをアップデートする演奏をおこなう。CDをなぞるような演奏ではなく、バンドとしての熱いライブを聴かせてくれるのだ。たとえば一心不乱に機材を連打するkevin mitsunagaや、ときに何かに突き動かされているかのようにギターをかき鳴らすyuxuki wagaの姿はロックを体現している。
fhánaの演奏も、“ライブに本質あり”と付け加えておこう。
そして、彼らの人気を決定づけたTVアニメ「ウィッチクラフトワークス」のオープニングテーマ「divine intervention」。高まり続けるテンションと開放感に観客の喝采は止まらない。プログレッシブなコズミック・ファンク・ナンバー「星屑のインターリュード」と立て続けに演奏し、観客の手拍子とともに会場を盛り上げる。
そして最後の曲として、メジャーデビュー前の初期の名曲「kotonoha breakdown」を演奏。言葉の意味をていねいにすくうような、towanaのヴォーカルがとても感慨深い楽曲だ。そして、フィードバックするギターの残響を残し、メンバーはステージを後にした。
客席からの鳴り止まない拍手と歓声に包まれて、出演したアーティスト全員が再びステージに集まる。ちなみに1stステージでは、TECHNOBOYSやfhánaのプロデューサーであり、ライブのマニピュレーターを務めた佐藤純之介に、全員から感謝の意を伝える花束の贈呈があった。このハプニングにさしもの敏腕プロデューサーも「これ聞いてないよ!」とうれしい悲鳴をあげる。
最後にアンコール・ナンバーとして出演者全員で「ウィッチクラフトワークス」のエンディングテーマ「ウィッチ☆アクティビティ」を演奏。TECHNOBOYS+fhána+ChouCho。本日のライブのみの組み合わせによる、スペシャルな「ウィッチ☆アクティビティ」に、会場の盛り上がりはふたたび最高潮に達する。
ボーカルはChouChoとtowanaが代わる代わる務め、キャラソンのような歌唱が実にキュート。いつもとは違うここだけのアレンジが、耳に新鮮に響く。どの出演者もとても楽しそうにピッピコなウィッチ・アンサンブルを奏で、ステージは大団円を迎えた。
「ORBさん、ビルボードライブ大阪さん、そして会場に来てくれた皆さん、本日はありがとうございました!またいつかお会いしましょう!! では解散!!!」
松井洋平が出演者を代表し、ライブの閉幕を告げた。
公演終了後は主催者であるORBの社長みずからマイクを握り、感謝の言葉とともに観客の帰りを見送っていた。こういった、アーティストやスタッフによるアットホームなライブ演出によって、敷居が高そうと思っていたビルボードライブ大阪で、ゆったりと時間を過ごすことができた。いつもと雰囲気の違う、じっくりと音楽を楽しめる、とても素敵なライブだった。またの開催を心から期待したい。