ホビー業界インサイド第4回:「ぷちサンプルシリーズ」の“地味な濃さ”にホビーの真髄を見る! リーメント・開発本部インタビュー!
架空の80年代風“魔女っ子アニメ”を設定
──企画するとき、実物に取材したりされるんですか?
五月女 そこが難しくて、あまりそっくりに作りすぎると怒られてしまうので、デザイナーさんには“怒られないサジ加減で、それっぽく”作っていただくことが多いです。1年ほど前に「80’sなつかしわが家」という商品を出しまして、テレビに映る絵を差し替えられます。そのとき、80年代に放送していたかのような魔女っ子アニメのキャラを、オリジナルでデザインしたんです。
──しかも、その魔女っ子キャラのコップまで作ってありますね!
五月女 ええ、「80年代当時に小学生だった女の子」を主人公に想定して、その子が好きだった魔女っ子キャラのグッズを、あちこちに散らしています。別のシリーズに、おばあちゃんとお茶を飲んでいるアイテムがあるんですけど、そこにも同じ魔女っ子キャラのマグカップが入っています。すると、シリーズを通じた統一感が出るんです。この魔女っ子アニメは、80年代からシリーズを重ねて今も続いている設定なので、今後の製品にも出てきます。
──買われているのは、何歳ぐらいの世代の方たちなんでしょうか?
後藤 20~30代が中心ですが、ぷちサンプルのようなノン・キャラクター物だと40代、50代のお客さまもいらっしゃいます。
──ぷちサンプルの写真コンテストを開催してらっしゃいますよね?
後藤 はい、まだ食玩ブームだった2005年~2007年にかけて、「ディスプレイ・コンテスト」を計5回、2006年には「収納・整理法コンテスト」を開きました。やはり、いっぱい買ってしまうと、どうしまったらいいのかわからない方もいらっしゃるので、そのお手本となるような内容のコンテストですね。あとは、川柳コンテストです。
──川柳ですか(笑)。
後藤 ぷちサンプルで、ある情景を作っていただいて、そこに川柳をつけるコンテストです。2008年~2009年にかけて、計4回実施しました。1回500~600通は応募があります。
──やはり、女性の応募が多いのでしょうか?
後藤 作品を見ていて特徴的なのは、女性の応募者は一般家庭のキッチンや居酒屋、回転寿司屋など実際にある情景を、リアルに表現しています。男性はキャラクターフィギュアを使い、想像力を生かして日常の色々なシーン(風邪で寝込んでいたり、パソコンを打っていたりなど)を作られています。女性は身近な雰囲気の作品、男性は凝った作品が多いですね。
──「こういう商品を出してほしい」というリクエストは?
後藤 来ますね。たとえば、いま会社勤めされている女性から、「10年前の小学生のころ、「ぷちサンプルシリーズ」に憧れ収集していたが、どうしても、お小遣いの関係で当時欲しかった○○○シリーズが買えなかったので、再販をして欲しい」との要望が良くあります。
──昔の商品を、そのまま再販することはできるのですか?
後藤 不可能ではありませんが、現在の工員の給与は、当時の7~10倍になっておりますので、同じ彩色の工程で商品化をすると、多分1,000円以上になるのでは……と思います。
五月女 昔ほど工程をかけられなくなった部分がありますので、どうやって値段に見合ったクオリティを維持していくのか、いろいろ工夫しています。工場に対する要求も厳しくなるので、たまに渋い顔をされてしまいます(笑)。
クレームの来ないラインで勝負
──企画は、どこから発想するのですか?
──季節感は、重視しますか?
後藤 発売時期に合わせて、ある程度は重視していますが、年間販売できるようにパッケージなどを工夫しております。たとえば、「ほっこりこたつ」は、パッケージをリバーシブル(表:冬用、裏:夏用)にしています。
五月女 「じいちゃんばあちゃん家」は秋口の発売なので、これからの季節に向けて、石油ストーブを入れてあります。だけど、あまり冬に偏りすぎないよう、蚊取り線香も入れました。
──もともと、ぷちサンプルというシリーズは、どこから発想したのでしょう?
後藤 合羽橋で販売している「食品サンプル」を好きな社員が、「食品サンプルをミニチュアで出せないか」と言い出したのがキッカケです。最初はカツ丼やおそば、デザート、回転寿司など食品ばかりでしたが、「ぷちスーパー」というスーパーで販売している食品や日用品のミニチュアを発売したところ、爆発的に売れました。食品や日用品パッケージのデザインを本物らしくしたり、商品名をパロディ風にしたり、実際にパックや箱から商品が取りだせたり……と本物っぽく作ってみたら、それがお客さまにウケてしまったんです。
五月女 パックとかトレー、梱包材やダンボールなど、リアルな生活ではゴミになるような物まで再現したんです。
後藤 「産地直送便」は、ダンボール用にガムテープ、送り状、冷凍、生ものなどのシールを付けました。この商品は、実際にJA様の許可をいただき販売しました。また、「デパートショッピング」というシリーズでは、メーカー名や商品名をそのまま使うわけにはいきませんから、ちょっと名前を変えて、それっぽく商品化しています。
──クレームが来たりしないんですか?
後藤 一度だけ、大手ファッション・ブランドからクレームが来ました。しかし、ブランド名を使っているわけではないので、きちんと説明して納得していただきました。それと、お菓子メーカーの方が展示会にいらして、「ああ、これか」「うちのお菓子とそっくりのミニチュア出してるところ」「よく似てるね」と、笑顔で会話したこともありました。ですから、世の中から怒られないギリギリの部分で勝負しているんです。
──いま、「ぷちサンプルシリーズ」は1年に7~8種のシリーズが出ていますが、今後は?
後藤 毎月リリースしていくと、財布の中身を気にする方もいらっしゃいますので、今後もこのペースで、ゆっくり発売していきたいと思います。
(取材・文/廣田恵介)
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