「モンスターストライク」アニメをYouTubeで配信する理由―中高生のマスを掴むアニメ戦略をプロデューサーが明かす

2015年10月09日 22:300

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

YouTube配信が「モンスト」に最適解の理由


──そこでYouTubeという媒体を選んだ理由と、1話を約7分とした理由について教えていただけますか?

木村 一番は、この作品を届けなければいけない、っていうところですね。先ほど夕方帯アニメの話がありましたが、その場所を狙う方法もあったと思うんですけど、僕らとしては届くのであればどんなメディアでもよかったんです。これはユーザーインタビューをしていく過程でわかったのですが、小学生~中学生はもう圧倒的にYouTubeを見ているわけです。特に「モンスト」の場合だと関連動画がものすごくたくさん視聴されていて、弊社でも「さなぱっちょ&ぱなえ」という社員が出ている公式動画を毎週何本もアップしていて常にユーザーとコミュニケーションを取っています。そういう、「『モンスト』といえばYouTube」という前提がもうすでにユーザーの中で関係性としてできあがっているので、アニメもそこで流していくのは至って自然なことだったんです。それだけでなく、ユーザーさんがゲーム動画を投稿する文化もかなりあって、僕らが提供している公式のサービスだけでも20万時間分投稿されているんです。つまりYouTubeはもうユーザーさんの遊び場なんですよね。だからこそ僕はYouTubeで流すべきだと思いました。また、これも新しい取り組みになると思うんですが、YouTubeで7分のアニメを流したあと、「チェイサー動画」というものを配信しようと思っています。

──それはどういった内容でしょうか?

木村 これはアニメを配信したあとに実写で「さっきのアニメのこの部分が~」といった内容でしゃべる番組になる予定です。「りえっくす」(@monst_riex)というアニメ担当の社員が声優の方たちにインタビューをしている動画などを配信していますが、そういった内容になればと。平澤さんもアニメを解説する「平澤博士」みたいなキャラで登場するかもしれません(笑)。


平澤 ええっ。ヤバい! これは実現する流れだ……(笑)。

──元タミヤの前ちゃんとか、高橋名人みたいな(笑)。

平澤 懐かしいですね(笑)。そういうのも出てくるのかもしれないです。

木村 これは本当にYouTubeならではと思うんですよね。新しい文化として育っていくのかどうかはやってみないとわからないところではあるんですが、誰もやったことがないことにチャレンジしようということでYouTubeを選んだわけですから。

平澤 YouTubeの配信ってプロジェクトとして見たときに本当に面白いチャレンジだなと思うんですね。「モンスト」の様な条件が揃っていたとしても、やらない会社はやらないわけです。「そうは言っても地上波で」とか「そうは言っても1話30分で」という方針になることだって十分あり得るんだけど、XFLAGさんの場合はいろいろ調査した結果、確信が持てるとなると「YouTubeで7分で行きましょう」って仮説が支持される。これがこのチームのすごく面白いところでもありますね。目が離せないというか。このスピードは、アニメ製作というより、連載マンガとか、バラエティ番組のような時間感覚だなと感じますね。

──そうした決断力やスピード感を可能にしている理由は?

木村 それは徹底した顧客志向、ユーザー志向が弊社全体に浸透しているからだと思います。とにかくターゲットを定めたらそこのバリューとそこのメリットが最大化されるように動きましょうと。僕らがどういう手段で見せたいかではなく、どうやったらユーザーさんに見てもらいやすくなるか。それが軸にある限り、意見としてはブレないですね。

──そこには変なバイアスがないんですね。

平澤 そうですね。それはたぶん、このアプリ自体が常識を破って成功してきたというところがあると思うんですよ。だからアニメ業界の常識を破ることに躊躇がないんですね(笑)。僕はそこである種の水先案内人みたいな役割をやらせてもらってるわけですが、非常に面白い。業界の常識を知ってそのまま進むのではなく、アプリが支持されている要因と乖離があったらサッと解決していく。これはパートナーとしておだてているのではなく、心から感じていることなんですが、このアプリの中心人物が常識を破って成功した人たちだから、こういう手法になっているんだなと思います。


「2人1役」のスタッフィングで作り上げ、30分密度の7分アニメに


──実際に作られるクリエイターの方々のお話も聞いてみたいのですが、本作ではキャラクターデザインに大貫健一さん(「ガンダムビルドファイターズ」ほか)や、演出には木村真一郎さん(「ちっちゃな雪使いシュガー」監督ほか)、シリーズ構成に加藤陽一さん(「アイカツ!」、「妖怪ウォッチ」ほか)など、アニメ界でも著名な方々が参加されています。これらの方と市川量也監督という組み合わせや布陣についてはどのように決まったのでしょうか?

平澤 これも最初から綺麗にスパンと決まったというよりは、試行錯誤の結果としてそうなったっていう感じなんです。常識破りの作り方に対応するため、通常だったら1人で回るような役を2人で担当するという考え方を採用したのだ、と見て認識して頂くとわかりやすいと思います。本作のストーリー・プロジェクト構成についてはイシイジロウさんが担当されていて、それぞれのエピソードの時間のコントロールやシナリオフォーマットとしての完成度を上げる部分ついては加藤さんに辣腕を振るって頂いています。演出についても同じで、市川さんは若手でCMとかPVといった尺の短い作品でお客さんを驚かせる演出が得意で、非常に感性が若い。最近ではアニメ「パンチライン」のオープニング映像を手がけられました。一方でシリーズ全体の完成度を高めていくためには、監督経験者が、各話の演出家やアニメーターに新しいフォーマットにおいて必要とされてることをうまく伝える必要があります。その役割を担うのが木村真一郎さんというわけです。なので1つの役割に2人いて、その2人が攻めと守り、独自性と完成度といった両極を担当している。結果的にそういう配置になっていったという感じですね。


木村 面白いもので、普通これだけのメンバーが揃うと、ある種の衝突とかお見合いが起こっても不思議ではないのですが、それぞれがドンドン意見を言い合って、しかもみんな大人なんで折れるところは折れると。そして、ものすごくこだわりが強かったり、切れ味の鋭いものをそれぞれが持ち込んできたりするんですよね。7分だから7分なりの内容というのではなく、30分枠のアニメを7分にギューっと圧縮していく感じです。加藤さんも普段はものすごくバランスを取る人なんですけど、「主人公が急にカメラ目線でバックグラウンドをしゃべる」といったような実験的な内容をぶち込んできたりして、それをみんなが「それ面白い!」って、一気にテンションが上がるみたいなことがあって、それがすごく面白いですね。

──非常にモチベーションの高い会議や制作の様子が伝わってきます。

平澤 そうですね。そんな無茶ばっかり言い合う会議の場で生まれる作品なのですが、それを現場として支えてくれているのが「スタジオ雲雀」さんなんです。僕はアニメ制作会社のプロデューサーとして立ち振る舞う必要もあるので、先ほど挙がったアイディアの中には現場的に難しいだろうなと思えることもあるんです。「この会議に参加していないクリエイターにも面白さが伝わるか?」とか、「スタッフ間に軋轢を生まないだろうか」とか、そういった懸念を抱くことも少なからずありましたが、雲雀のアニメーションプロデューサーの宮﨑裕司さんは「わかりました。1回はやってみましょう」って言って、それで本当にやってきちゃうんですよ。今回のような新しいことをやろうとするときに「アニメってそういうものじゃないから」とは決して言わないんですよ。これは本当にすごいと思いますね。アニメスタジオとして、これまでにないコンセプトの受け皿になって作品を完成させる覚悟をお持ちになっていて「モンストはそういうタイトルだと思ってるんで」って前向きに捕らえてくれるので、それは本当にありがたいなと思いますね。

木村 中学生に見てもらおうというときに、やっぱり本物じゃないと評価されないなみたいなのがあって。お話とか演出とか全部手を抜いていないし、さらにアニメなのに毎回謎解き要素とかが入ってるんですよね。毎回凝りに凝った謎が入っていて「ここまでやるか!」と思うくらい、とにかくてんこ盛りですね。ものすごい7分間を作っています。本当によく作ってくれてるなって思うし、そこまでのめり込んでもらえるくらい価値を認めてもらえてるのかなと思えて非常にうれしいですね。

画像一覧

関連作品

アニメ モンスターストライク

アニメ モンスターストライク

配信日: 2015年10月10日~2016年12月31日   制作会社: スタジオ雲雀/ウルトラスーパーピクチャーズ
(C) mixi, Inc. All rights reserved.

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。