“手描き感”を大事にした新TVシリーズ「ルパン三世」の魅力　友永和秀総監督インタビュー

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「ルパン」がイタリア人に好まれる理由

──今回の新作「ルパン三世」は、矢野雄一郎さんが監督ですね。

友永　ええ、監督はベテランの矢野さんにお願いして、脚本は30代の若いチームが書いています。それぞれ個性の強い脚本家たちですから、話のテイストが毎回、異なっているんです。1話完結でありつつも、全24話をつらぬく1本のバックストーリーが用意してあります。

──レベッカという、キュートな新ヒロインが出てきますが……。

友永　そう、レベッカの関わるバックストーリーが、ちょっとずつ垣間見える構成になっています。シリーズ構成の高橋悠也さんは、実写ドラマを書いてきた人なので、今までにない「ルパン」になっています。ちょっと粋な味わいがあって、新鮮なんですよ。

──レベッカが出てくることで、他のキャラも若返った感じが出ますね。

友永　不二子とレベッカの対比も見せながら、レベッカの秘密を、解き明かしていきます。おなじみのメンバーも、常にくっついているばかりじゃなくて、キャラクター同士の立ち位置を変えたほうがいい。時にはケンカしたり、離れるときもあった方がいいと、僕から提案しました。

──映像面では、3DCGを、とても効果的に使っていますね。

友永　そうですね、セルやフィルムでは不可能だったアクションを、今のテクニックを使って表現したいと思っています。（舞台のひとつとなる）サンマリノ共和国って、“3つの塔”があって、面白いロケーションじゃないですか。そこで、どんなアクションが可能なのかプロデューサーやライターも含めて話し合い、「3Dも縦横無尽に使っちゃおう」という方針になりました。

──背景も、手描き感があって、味わい深いです。

友永　ええ、画材はデジタルなんですけど、まるで絵の具で描いたような質感でしょう？　空気感や光の感じの伝わってくる、すごく存在感のある背景を描いてもらえました。

──あと、動画の線が、ちょっとかすれた感じになっていませんか？

友永　あれは、わざとやっているんです。きれいに動画の線を引くのが、今の主流なんですけど、わざと途切れさせています。わざとやるのは、すごく大変なんです（笑）。セルを使っていた頃のアニメって、トレスマシンにかけると、線が途切れてしまうでしょう？　ああいう、太い線と細い線と、途切れた部分のある動画にしたかったんです。ただ、線を途切れさせると、デジタルペイントでは塗れませんから、そこにひと手間かけているんですよ。

──頼める動画会社も、少ないんじゃありませんか？

友永　ええ、限られてしまいます。だけど、いま流行りのアニメーションと、あえて逆行させるのも、面白い挑戦でしょう？　ぜひ楽しみにしていてください。

──今回の新作は、イタリアとサンマリノという舞台が、「ルパン」の世界観にピッタリですね。

友永　僕も知らなかったんですけど、イタリアでは、「ルパン」シリーズが熱狂的に支持されてるんですって。やっぱり、愛と芸術の国ですから（笑）、ルパンのキャラクターは、イタリア人好みなんでしょうね。女好きで明るくて、自分の美意識があって、どこまでも自由で……。楽天的なところが、愛されている気がしますね。

（取材・文／廣田恵介）