坂本真綾、3年半ぶり2度目の世界遺産ライブを広島・厳島神社で開催! さいたまスーパーアリーナに続くデビュー20周年記念企画

2015年06月01日 15:000

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坂本真綾さんが5月30日に広島・厳島神社でワンマンライブを開催した。

 


デビュー20周年を迎えた坂本真綾さん。今年4月から20周年記念プロジェクトとして、トリビュートアルバム「REQUEST」のリリースやさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを実施しているが、その一環として国宝でもある厳島神社でライブを行った。坂本さんが世界遺産でライブを行うのは、2011年9月の富岡製糸場中庭特設ステージ以来2度目だが、当時はまだ登録前だったため、世界文化遺産に登録されている舞台に立つのは今回が初めてとなった。以下、レポート。

 

 


当日はあいにくの雨模様だった。海の上の回廊につくられた特設会場では傘を広げることはできないため、入場時にはレインコートが配られた。本殿の奥から坂本と、アコースティック編成のバンドメンバーが現れると、まず本殿に向かって深々と一礼。1200人の観客は雨音に負けない拍手で出迎えた。拝殿をまっすぐに歩き、テントが設置された高舞台に到着した彼女は、まずカッパ姿で待っていた観客に対して手を振ってあいさつした。ひと呼吸おき、バンドメンバーと目を合わせ、軽くうなずき、アコースティックギターの_アルペジオに合わせて、荒井由実の名曲「やさしさに包まれたなら」を歌い始めた。この曲は、広島県竹原市を舞台にした作品で、彼女がシリーズを通して主題歌を担当しているアニメ「たまゆら」の主題歌としてカバーした楽曲。白と薄いピンクの衣装に身を包んだ彼女は、神聖な場所で身をひそめるように耳を澄ましている観客の微かな緊張を解くかのような柔らかな笑顔を携えていた。歌い終わったあとで、彼女が「雨ですね……」と空を見上げながらつぶやき、富岡製糸場でのライブも雨だったことを明かすと、会場からは大きな笑い声が沸き起こった。続けて、「世界遺産劇場、オープンエアミュージアムというくらいなので、この雨、この水墨画のような景色すらも楽しめる場所だと思います。私の姿だけではなく、いろんなところを見ながら、目をつぶったり、風の匂いを嗅いだりしながら、楽しんでいただけたらと思います」と語る彼女の視線の先には、海の上に浮かんでいるように見える真っ赤な大鳥居があり、背後にそびえる弥山は雨に煙って深い霧がかかっており、晴れの日以上の荘厳な雰囲気を醸し出していた。


彼女の「この場所で歌うのにぴったりだろうなという曲を選んできました」という説明のあとに歌われた3曲は、ひとことで言えば“海のうた“。海の上を行く「Active Heart」では波間をたゆたいながら豊かなグルーヴを生み出し、アニメ「たまゆら」のテレビ版のOPテーマ「はじまりの海」でいつかの海の景色を思い出し、「DIVE」では低いトーンの歌い出しで暗い海の底へと潜っていくが、<♪二度と振り向かずに>という力強いフレーズとともに聴き手を一気に水面へと引き上げた。真っ直ぐに前を見据えた彼女の視線の先には、ライティングされたばかりの大鳥居とフェリーが見え、陽が沈んだことを知らせてくれた。


続いて、「昨日は神々しい太陽が沈んでいって、後ろから月があがってきて。星も見えたんです。私は最高に気持ちよかったんですけどね」と、前日のリハーサルの模様を伝え、「まぁ、雨は降るもんです、地球という星は!」ときっぱりとした口調で言い切り、自然の摂理には逆らえない人間の諦念に似た、潔く明るい表情を見せた。
 

「さいたまスーパーアリーナでの20周年記念ライブとはなるべく被らない曲を選んでみたつもりです。次は、遠くから観光も兼ねて駆けつけた方のために、旅っぽい曲を聞いてもらいたいと思います」というMCのあとに演奏されたのはまさに“旅のうた“。プライベートで訪れたトルコでの出来事にインスパイアされて書いた自作曲「ニコラ」。列車を思わせるパーカションと多重コーラスによって旅情が誘われ、ブラシとチェロ、ピアノのアンサンブルによってドラマが語られる「風が吹く日」では、繊細さと強さが共存した歌声と海の上を滑るように伸びていくロングトーンが胸に響いた。雨は一層激しくなっていたが、<♪いつかきっと もうすぐ>と静かに、自分に言い聞かせるように囁く歌声と雨音の重なりは、きっとこの日しか聴けないものだろう。アコギと歌を基調とした小品「手紙」では、せつなくもチャーミングな歌声とフェイクが印象的だった。


後半戦が始まる前に、「嚴島神社でのライブが念願だった」と語っていた理由が明かされた。
「なぜそんなに嚴島神社で歌いたかったのかと言いますと、小さい頃からよく、あの鳥居の夢を見てたんですね。特に広島にルーツのない私がなぜ、海の上に浮かぶ鳥居の夢を見ていたのかは分からないけど、時には、板の上に座って、足を海につけてる夢も見てたんです。だから、私は勝手になにか縁が
あるはずだと思っていて、いつか大人になったら来たいとずっと言ってました。初めて訪れたのは母親と旅行で来た29歳のとき。今回が2回目になります。自分との縁は置いておいても、神秘性と厳かさ、それでいて親しみやすさもある不思議な場所で歌うことができて、本当にありがたいなと思います」と、嚴島神社への思い入れとライブができることの感謝を述べた。
 

鈴の音とともに独特のドラマチックな展開をみせたバラード「Light of love」、水をすくう音が挿入された「空気と星」、コンガと縦笛によってオリエンタルな風を感じさせた「奇跡の海」と神秘的な曲を3曲、立て続けに演奏すると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。歌舞や舞楽のようなドラマチックなストーリーを想起させアレンジになっており、古来から連綿と続いている歌による奉納を共に行っているような思いがした。


さらに、「被らないようにとは思ったんですけど、やっぱり今年にリリースした曲、20周年の節目だからこそ歌いたい曲、最新の曲を歌いたいなと思います」と話し、さいたまスーパーアリーナでオープニングを飾った「幸せについて私が知っている5つの方法」で観客の胸を高まらせ、ライブではおなじみのフリがある人気曲「マジックナンバー」で盛り上げた。「いつも、いちばん新しい曲がいちばん好きな曲です」と語る彼女が最後の曲に選んだのは、4月11日に配信リリースした最新曲で、彼女が作品の主題歌を初めて作詞作曲したことでも話題を集めたアニメ「たまゆら~卒業写真~」の主題歌「これから」。“さよならは大丈夫“をテーマにしたバラードをしっとりと歌い、歌詞にある<見たことのない世界>に連れて行ってくれた彼女は、客席を見渡しながら、深々とお辞儀をし、高舞台をあとにした。


アンコールの声に答えて走って再登場した彼女は、テントを出て雨に濡れ、「気持ちいいねー」と声をあげた。記念すべきデビューシングル「約束はいらない」を軽やかに歌い上げ、椅子から立ち上がった観客と全員で「ポケットを空にして」を大合唱。手拍子を鳴らし、お馴染のフラッグを振り上げた観客の<ららら~>という歌声が山々に響いた。歌声が止み、演奏が終わると、坂本はステージを降り、観客と一緒に雨に濡れながら、「ほんっとにありがとう。ほんっとにありがとう」と何度もお礼を言い、「きっと一生に一度の貴重な体験」と語った、全15曲1時間半の奉納ライブは幕を下ろした。


<セットリスト>
01.やさしさに包まれたなら
02.Active Heart
03.はじまりの海
04.DIVE
05.ニコラ
06.風が吹く日
07.手紙
08.Light of love
09.空気と星
10.奇跡の海
11.幸せについて私が知っている5つの方法
12.マジックナンバー
13.これから
アンコール
01.約束はいらない
02.ポケットを空にして

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