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ハイレゾならではのグルーヴ感が、会場を包みこむ
盛り上がるコメントをはさみながら、視聴はどんどん続いていく。4曲目「蜜」は、岡村氏いわく「エロエモ」。大胆な歌詞とエモーショナルな演奏が重なり、Female Rockならではのツヤがたっぷり。LiSAによると、エロい気分を出すためにブースの照明をピンクパープルにしたという。
5曲目「アコガレ望遠鏡」は、スタッフの人気が高い青春ナンバー。「ファンクラブのイベントに1人で来ている人が、そこで友達ができたり、次の年には何人もで参加していたり。そうやって世界を広げていく彼や彼女を後押ししたいなと思って作りました」とLiSA。
野村氏は、聴きどころはドラムと指摘。「テクニックのある方で、後ろにためて独特なグルーヴ感を出しているんです。それがハイレゾだとはっきりわかります。」
8曲目「FRAGILE VAMPIRE」は、タイトル通り、ヴァンパイアをテーマに作った、ダークな世界観が特徴。ハードロッキンでスピーディーな曲だ。
岡村「めちゃくちゃ難しい曲ですが、レコーディングは早かった。なんと完成版で使われているのはファーストテイクなんです。」
LiSA「ドラムは、『アコガレ望遠鏡』と同じ、まっしょい(山内優)さん。機械のように正確で速くて、涼しい顔をしてツーバスとドコドコドコって鳴らすの(笑)。」
野村「ドラムのテクニックのすごさ、スピード感がちゃんと聴き取れるのがいいですね。ハイレゾは同じ曲を何度も聴きたくなるんです。ヘッドホンを変えたりスピーカーを変えたりすると、新たな発見があります。」
9曲目「ANTIHERO」は、「カゲロウプロジェクト」で有名な「じん」が作編曲を担当。彼らしい疾走感のある曲に、LiSAがちょっぴり毒のある詞を付けた。
LiSA「自分が正しいと思ってしゃべっていることは、別の人から見たら正解なのか、とか、本当のヒーローはヒーローの姿をしていないんじゃないか、とか、今のネットの状況を思いながら、ぐるぐると考えを巡らせて書いた詞であり、なんなんだよーって気持ちを書いた詞です。」
この曲のポイントは、LiSAによる悪態のセリフの数々。
岡村「「うざーい」とか「うっとおしー」とかガヤガヤとした、ネットの批判みたいな声をLiSAにたっぷり言ってもらいました(笑)。」
10曲目「Bad Sweet Trap」は、攻撃的な印象の曲で、曲間に出てくるLiSAの「ちょっと黙ってて」というセリフにハッとさせられる。LiSAいわく「ストレスが溜まっている人用の曲」。
そこから一転してキュートになるのが、11曲目「エレクトリリカル」。8bitの80年代ゲーム風のサウンドから始める、エレクトロポップだ。LiSAのボーカルも部分的にボーカロイドのような人工的な声質に変化するが、なんとそれは機械的に加工せずに、生の声のままなのだという。
LiSA「最近はボカロでデモを作る作家さんが多くて。それを聴いているうちに真似できるようになりました。」
岡村「アレンジに関しては、LiSAから突然、YouTubeのアドレスが送られてきて。それを開いたら『コンピューターおばあちゃん』だったんです(笑)。アレンジャーの(堀江)晶太くんもチップポップが大好きだということで、80年代ポップの匂いをつけてもらいました。」
野村「この曲のようなソフトシンセの音は16bitなので、ハイレゾにしても音質は変わりません。でも、そこにLiSAのボーカルが高音質で加わると、より際立つんです。この手法を意識して取り入れているアーティストもいます。」
ラストは、LiSAが作詞作曲を担当した「君にピエロ」。
LiSA「すばらしいシェフが作ったすごく美味しいお料理の中に、私が作った愛妻弁当を入れることで、みんなへの愛を表現しようと思いました。歌詞は武道館2DAYSが終わった後に、すべてのファンの方に想いをこめて書きました。みんなにとって大事な曲になればいいなと。」
ここでLiSAにとっては悪夢(笑)のようなサプライズが。なんと、本人が作ったデモ音源が準備されていて、特別に披露されることになったのだ。「やめてー!」と絶叫するLiSAの横で、「これは貴重ですよ」と岡村氏はニコニコ。
かくして、自宅の部屋でギターを弾きながら歌っているLiSAの、あまりにもナチュラルな歌声を、ファンは堪能することに。
「エレキギターを繋がずに、iPadを目の前に置いて録音しているだけです」とぶっちゃける岡村氏に対して、「しかもこの時、私、風邪を引いてて、ベッドの上で歌っているんです(笑)」と、LiSAもさらなる赤裸々なコメント。
「ひどいよー、原型をさらすなんて」と文句がやまないLiSAに、「(原型ではなく)原石だよ、ダイヤの」と返すあたりに、岡村氏のプロデューサー魂とLiSAへの愛が感じられた。
「Launcher」はハイレゾの第一歩に最適なアルバム
これでアルバム「Launcher」の新曲全曲の試聴が終了。出演者がそれぞれ感想をコメントする。
LiSA「『Launcher』というかっこいいアルバムができました。3年半LiSAとしてやってきて、私がやりたいこと、今できることが形になっているアルバムです。私の中のポップな部分もブラックな部分も、全部さらけ出すことができたのは、今までの経験と武道館ライブがあったからだと思います。このアルバムの曲でライブが盛り上がる瞬間を待ってます!」
岡村「深夜の2時3時まで真剣に打ち合わせして、LiSAががんばって作ったアルバムです。しっかり聴いていただきたいです。」
野村「ハイレゾは難しい顔をして聴くものではなく、アーティストが心をこめて作った作品の意図を、より汲み取れる音源なのだと思います。アーティストの顔が近すぎると思うくらい近く感じられるので、楽しんで聴いていただきたいですね。ロックはハイレゾに合うジャンルですし、『Launcher』は、ハイレゾの第一歩として最適のアルバムだと思います。」
と、ここでイベントは終わりかと思いきや、LiSAだけがステージに残ってのお楽しみコーナー「ハイレゾ人格付けチェック」が。これは参加者全員にMP3音源とハイレゾ音源を聴き分けるテストをおこない、正解者の中から1名にサイン入りハイレゾウォークマン「NW-A16」をプレゼントするというもの。去年12月にリリースされた7thシングル「シルシ」が2度流れ、どちらがハイレゾか、真剣に聴き分けようとする参加者たち。結果はほぼ8割以上が正解。この正解率の高さはイベントの成功を明確に表していた。LiSAとのジャンケン大会で選ばれた幸運な当選者は、娘さんに同伴してきたという女性。サインを入れたウォークマンを手渡し、「これで音楽をたくさん聴いて、娘さんをいい耳に育ててください」とLiSA。最後は「今日もいい日だ! ばいちー!!」というファンが慣れ親しんだあいさつで、2時間にわたるイベントが終了した。
<LiSAプロフィール>
岐阜県出身、6月24日生まれ。2010年に、TVアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢。2011年にソロデビューミニアルバム「Letters to U」をリリースした。以降、順調にリリースを続け、2014年1月3日には初の日本武道館ワンマンライブを開催。その1年後となる今年1月10日、11日には日本武道館ワンマンライブ2DAYSを成功させる。3rdアルバム「Launcher」は、そんな彼女の「今」がぎっしり詰まった、入魂の作品だ。
※「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」は、ヤマハ株式会社の登録商標です。
(取材・文/鈴木隆詩)