「NARUTO─ナルト─」の魅力は「痛み」を感じさせるキャラクターとドラマ
「NARUTO─ナルト─」が少年漫画として何より特徴的なのは、ちょっとウェットな「痛み」を感じさせるキャラクターとドラマ作りでしょう。うずまきナルトは、明るく前向きで困難な中でも希望を失わない、いかにも「少年漫画」らしい主人公ですが、根本には、孤児として育ち、しかも「九尾」を封印された人柱力として里の仲間から疎外されて育った寂しさを抱えている。
同じように家族を失って孤独を抱えたもうひとりのメインキャラクターが、ナルトの友でありライバルである、うちはサスケ。「NARUTO─ナルト─」の長い物語は、ナルトがサスケという友を得て、失い、願って信じて、また取り戻そうとする話でもある。
ナルトやサスケのみならず忍者たちの中には、戦いが続いてきた歴史の中で、すでに家族を失った者もいれば、劇中で家族や師、友との死別が描かれる者もいる。「悲しみと憎しみの連鎖を、どうやって止めたらいいのか?」という、現実にも解決が難しい問いの答えを、ナルトは戦いの中で見いだしていく。
もちろん、超人的な忍者アクション、個性的にしっかり描きこまれた多数のキャラクターたちなど、エンターテインメントとしての仕掛けはたっぷり。見る人ごとに、異なるポイントで楽しむことができるでしょう。数世代にわたって因縁がめぐり、思いが受け継がれるストーリーには大河ドラマ感があり、大人をも惹きつける深みがあるだろう。
しかし、改めて「NARUTO─ナルト─」に興味を持ったとしても、これだけ長いストーリーになると、途中から入るのは難しいもの。コミック全72巻をいきなり読みはじめるのはちょっと重いし、テレビアニメの放送もオリジナルエピソードをはさみながら13年目に突入し、第600話を越えました。
ちょっと作品の雰囲気をかじってみたいというときにはどうすればいいのでしょう? アニメで手頃なのが劇場版。90分から120分の1本で、作品のエッセンスに触れることができるだろう。
ただし、テレビシリーズのアニメ劇場版作品は、お祭り的な性格も強いもの。いつもと違う舞台、いつもと違う敵役、いつもと違うシチュエーションが前に出過ぎて、「いつもの魅力や楽しみ」とはちょっと違ったものになってしまうことも。
では、今から改めて「NARUTO─ナルト─」の魅力に触れてみたいという方に、オススメできる劇場版といえば、どれになるのでしょうか?