――「忍たま乱太郎」(1993年)は、腐女子と呼ばれる女性層にも人気となりましたが、そこは意識されていますか?
「おじゃる丸」「忍たま乱太郎」は、子ども向けの枠で放送しています。その枠を見てくれる視聴者に見せていく姿勢は、変わりません。女性ファン向けに方向性を変えるかというと、それはありません。でも、視聴者の年齢層が広がるのはありがたいことです。
たとえば、中学生ぐらいの子が「忍たま乱太郎」を見て、「ひさびさに見たけど、ホッとしました」「癒やされます」と言ってくださるんです。長寿番組ならではの現象ですね。「親子」はターゲットに入れているのですが、中学生はなかなか見てくれないんです。子ども向け番組は難しくて、あまり上の年齢層を狙うと、下が落ちてしまう。ですから、無理にターゲットを広げないほうがいいのでしょう。それゆえに、思いがけない世代が見てくれるとうれしいですね。
――「今日からマ王!」(2004年)は、女性を意識した企画ですか?
原作は女性向けのレーベル(角川ビーンズ文庫)ではありましたが、アニメとしては監督がアクションを盛り込んでくださったので、男女双方をターゲットにしたつもりです。ただ、原作が女性に支持されたため、女性ファンを多く獲得できました。当時、女性が見て楽しめるアニメが少なかったので、女性ファンも意識はしていたんです。やはり、テレビを見ている人の半分は女性ですから。
――バラエティに富みつつも、どの作品にもテーマ性がありますね。「獣の奏者エリン」(2009年)には、哲学的とさえいえる高度なテーマが盛り込まれていました。子ども向けに放送しましたが、大人にも味わえる要素があったはずです。大人になって見直したとき、子どもの頃には気づけなかった新しい発見がある。NHKは再放送が多いので、くり返し見ていただけますしね。そういう意味では「大人を意識していない」わけではないんです。子どもといっしょに見ている親御さんが気づくかもしれない要素を、隠し味のように入れることもあります。
――今まで担当された中で、最も思い出深い作品は? 画像左側に本文表示 最初のころに担当した「十二国記」や「今日からマ王!」ですね。ただ、それは「制作が大変だった」という意味ではなく、個人的に印象深いという意味です。今放送中の「団地ともお」は「これをCGでやれるんだ!」というチャレンジが面白かったですし、「ログ・ホライズン」も、「ゲームの世界が舞台」という点がNHKのアニメとしては異色で反響も大きいですね。
中でも「ログ・ホライズン 第2シリーズ」の第10話「ギルドマスター」(12月6日放送)では、ウィリアム=マサチューセッツというキャラクターが1話をほとんど一人で「俺はゲーム廃人だ!」としゃべり続けたので、ネット上でも話題になりました。「クソゲーマー」とか刺激的な言葉は使っていますが、「何かを犠牲にしてでも一つのことに夢中になって、でもそこで得たものは何物にも代えがたい・・・」というとても普遍的な話だと思っているので、反響はうれしかったです。
――では、大変だった作品というと?大変だったけど面白かった作品は「もしドラ」です。ベストセラーになった本があって、短期決戦で十本のアニメとして構成して……制作というより、スキームを作るのが大変だったんです。そもそも、原作がライトノベルですらない、挿絵イラストすら乏しいところから短期間で映像化していく。初めてづくしで、面白かったです。
――「境界のRINNE」は、どういう番組になりますか?基本は楽しいラブコメですが、話が進んで群像劇になったとき、友情や家族の関係が温かく描かれます。見終わったあと元気になれて、それぞれの仕事や勉強の場に戻っていけるような番組になると思います。
(取材・文/廣田恵介)