※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
後半はラブコメ路線+「勇者シリーズ」?
──6話は原作通りガラッと雰囲気を変えての新展開ですね。5話から少し時間が経過していて、その結果の「エロ禁止の風潮」は、別に僕としては社会風刺的なことは意識してません。『ダイミダラー』は、そもそもそうしたものを狙う作品じゃないと思ってますから。ただ、「上が変わればそれにならえ」で変わってしまうことはあるんじゃないか?みたいな、雰囲気としての「サワリ」程度です。ペンギン達は根はよいヤツラなので、なんとなく人間達と仲よくやってるよと。それよりも一番狙ったのは「新番組に見えるようにする」ことだったんですよ(笑)。 それまでの『ダイミダラー』には見えないようにわざと作ろうという。
──6話からの主役の将馬と霧子は、バカップルですよね(笑)。
バカップルです(笑)。前半が70年代~80年代前半のロボット物のノリだとしたら、後半はどちらかといえばラブコメブームの80年代中盤~90年代のノリ ですよね。だから意図的にキャラ表現も変えてます。たとえば前半では、孝一とかは崩し顔とかギャグ顔はあえてやっていなくて、仮にコンテでそういう芝居が ついていたとしても70年代ロボット物のノリとは違うので、僕がオミットしてたんです。逆に後半の2人は、グルグル目とかドタバタな芝居をさせたりとか、 80年代以降のラブコメ作品ぽい感じを出すようにしてます。その意味でも、前半とはまったく違うシリーズに見えるようにしたいというのがありました。
──6型はよりスーパーロボット的なデザインです。ですから、2型がオーソドックスな『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』のような地上戦での格闘に対して、6型はどちらかといえば「勇者シリーズ」みたいに派手にカッコよく必殺技バンクを使ってやっつける感じに変えてます。特にCPスラッシュという超必殺技もありますから。
──確かに、かなり「勇者シリーズ」ノリでした(笑)。
ディスガイズで、ガンダムみたいにカッコいい顔からギョロ目の2型の顔に原作通り変形するわけですけど(笑)、そこもわざわざ「勇者シリーズ」のバンク的に、 凝った作画にしてみたり……1クールアニメのしかも後半からの登場なので、バンクの意味はほぼないんですけど、ロボット物である以上そこは大事な見せ場だ から必要なんですよ(笑)。そうしたシーンを入れることで、新たなヒーローが来たぞ!という雰囲気も出ますしね。
アットホームを狙ってるペンギン帝国
──ペンギン帝国も、アニメは世界観を広げてますね。
ペンギン側のアニメとしての落としどころを用意しないとダメだろうというのがありました。そこは、リッツを含めた「ペンギンファミリー」みたいな形になるの かな?と。そこを想定して、アットホームなファミリー感をアニメでは打ち出してるので、帝王とリッツとは、首領と幹部ではなくて父親と娘みたいな雰囲気の会話をお願いしてます。下っ端ペンギン達も、楽しそうに悪ふざけしているような感じで演じてもらってます。
──リッツを描くうえで気をつけられてることは?リッツは破壊工作や侵略をやっているというよりも、楽しく悪ふざけ的に遊んでるみたいな感じなんですよ。洲崎綾さんは最初いかにも女幹部みたいな芝居だったんですけど、そこを楽しく遊んでる風に演じてもらいました。ペンギン側の目的がHi-Ero粒子にあるものだから、ロボットで出撃して人間側に迷惑をかけているけども、リッツはペンギンが好きで仲よくしていたいわけなので、根本は「人間と敵対」じゃなくて「ペンギン帝国のみんなに喜んでもらいたい」なんです。その辺の感じは、演出的にもなくさないよう気をつけてます。
──ペンギン帝国は和気藹々(わきあいあい)としてるので、見ていくうちに普通に感情移入していっちゃいます(笑)。
だから最終的には、勧善懲悪のロボット物なんだけど実は悪人は1人もいなくて、みんないいヤツばっかりだったってなるとよいなって思ってるんですよ。
──ところで、2話の最後でのリッツの鼻歌のアイデアというのは? あれはコンテの段階で僕が入れました(笑)。歌詞は昔あった、天気予報のサンスター歯磨きのCMソングのモジリですね。僕を含めた特定の世代にとっては、ペンギンといえばそのCMソングなんですよ(笑)。ただ、世代的にそのCMをまったく知らない洲崎さんに自由に歌ってもらうのがよいと思ったので、あえて元ネタの説明は一切しないで歌ってもらいました。
──するとメロディライン自体は洲崎さんの……。その場のアドリブです。元ネタを知らない洲崎さんに歌ってもらえば、絶対違う歌になるだろう!という狙いです(笑)。6話のペンギン帝国の歌もコンテではキャバレーロンドンのCMソングをもじっていたのですが、ペンギンのみなさんが見事にアレンジしてくださいました。
──その他、作品作りで特に意識されてることなどはありますか?基本は、見てくれる方に楽しんでもらいたいというのはあるんですけど、それと同時に作ってる僕らが楽しめないとダメだろうと思ってるんですよ。自分達の見たいもの、やりたいものをまず作ろうということを意識してます。
──それが『ダイミダラー』を作っているやり甲斐みたいなところでしょうか?ですね。当然仕事ではあるんですけど、最終的には自分が好きで何度も見返してしまうような作品が作れれば、それは最高じゃないですか。実際『ダイミダラー』は、どのセクションの人も「楽しかった!」って言ってくれるんですよ。
──ラストに向けての見どころを含めつつ、メッセージをお願いします。毎回毎回いろいろな展開が起こる、1クール作品だからこそのスピード感があると思います。これだけ毎回内容的に違うというか、作ってきたものをいきなりひっくり返しちゃうような作品って(笑)、作ってる自分としても「あんまり見た記憶がないなぁ」と思うくらい、そこは自負してます。
──4クールのロボットアニメのいわゆるイベント回(新メカ登場や敵幹部の過去話など)を抽出したような、ダイナミックな構成ですよね(笑)。ええ(笑)。それをやりつつも、1クール作品としてきちんとまとまったものを作ろうという。そこをただぶつ切りに詰め込んじゃうと、単なる「ロボット物あるある」で終わってしまうので。毎回イベント回みたいな展開にしつつも、続けて観るときちんと根底に流れているドラマがあるのがわかると思います。ですから、残り数本、最後までいろいろビックリしつつ観ていただけたらと思います。最終回まで、ぜひお付き合いください!
(取材・文/ぽろり春草)
■プロフィール
柳沢テツヤ
TNK所属で同社設立メンバーの1人。代表作は『神無月の巫女』『京四郎と永遠の空』『ハイスクールD×D』(監督)など。90年代の多くのサンライズ作品(当時は中村プロ所属)で、作画監督を務めたことでも知られる。
脚注※1:発進シークエンスが『UFOロボ グレンダイザー』グレンダイザーが基地から発進する際、シリーズ中盤から基地の所在を知られないようにするため、基地の地下から伸びた7つの秘密ルートから発進するようにな る。『ダイミダラー』の秘密ルート発進が『グレンダイザー』のオマージュであることは、ルートに突入する際に「シュートイン」とグレンダイザー(ダイザーロボ)がスペイザーと分離する時のコールを使っていることから分かる。※2:Aプロ作品Aプロは、枚数を使わないデフォルメしたポーズで見せる動きでも知られた作画スタジオで、『ど根性ガエル』をはじめとした、70年代の東京ムービー作品の実制作スタジオとして活躍。かつては宮崎駿や高畑勲も所属していた。※3:スコープドッグも初めて見たとき、こう言ってはなんですけど、カッコいいと思った人はまずいなかったと思うんですスコープドッグ(AT)は、14話「アッセンブルEX-10」でのローラーダッシュの設定を存分に生かしたスピード感ある超絶機動作画によって、カッコいいロボットという評価が一気に高まった。※4:『伝説巨神イデオン』のイデのゲージイデオンの各メカのコクピットやソロシップのブリッジに設置されている半球型のゲージ。イデの力が発現する際に、IDEONの文字を複合させたようなサインを描き光り輝く。※5:『超時空要塞マクロス』のオペレーター3人娘マクロスのブリッジ要員の3人の女性オペレーター、シャミー、キム、ヴァネッサのこと。ブリッジ内での一種のにぎやかし的な役どころで、勤務中でも平時は呑気に他愛ない雑談する姿は、当時斬新な描写でもあった。※6:『マジンガーZ』の光子力研究所の三博士本文中にあるように、三博士の元ネタになっている光子力研究所の3人の男性博士。コメディリリーフ的な存在でもあるが、所長である弓教授を支えて、マジンガーZの強化やボスボロットなどを建造した。3人ともボーリングが趣味という設定で、そこも『ダイミダラー』の三博士がいつもボーリングをしている元ネタ になっている。※7:「Xの挑戦」白黒作品の『サイボーグ009』の1エピソードで、異色のラブロマンス的なストーリーが展開する。その後、東映動画(現・東映アニメーション)の70年代のロボット作品では、ある種定番的にシリーズ全体のテイストとは真逆の、悲恋的なロマンス回が一度は入るのであった。
コラム
公式サイトは、作中にも登場した「ペンギン帝国オフィシャルホームページ」を模した形になっている。柳沢さんも「ペンギンたちのやることですからね(笑)」と言われるように、そのダサイところが“いかにも”だったりする。コンセプト(元ネタ)としては一時話題となった某病院のサイトで、それにならって無駄な仕掛けがてんこ盛り!(笑)これを作るために、古いホームページ作成ソフトをわざわざ利用してWEBデザイナーが作成し、あえてリンク切れや、ページを読み込む度にMIDIが再生されるなどの鬱陶しい仕様にしているという、こだわりの賜物。WEBデザイナーさんもノリノリで作成したそうだ(笑)。ちなみに、リンク切れの画像は /otupai でパスを直接入力すると、隠し画像が見られるらしいゾ!