コンセプトは「カイジ」のような極限ドラマ!オリジナルTVアニメ「selector infected WIXOSS」川瀬Pに直撃取材!

2014年04月24日 22:000


等身大レベルなことがリアルなものを生む



──セレクターたちの願いが、かなりドラマの鍵になっている感じがします

希望、願望、欲望をかけてバトルをするってどういうことだろう? それも中学生が思う希望や願いはなんだろう? と思ったときに、友達が作りたいという子もいれば、好きな男の子と仲良くしたいとか、等身大レベルなことがリアルなものを生むんじゃないかなと思いました。遊月のように「恋している相手」が、普通なら絶対に許されない双子の弟だからこそ、セレクターバトルに勝って願いを叶えたい。そこに彼女自身の命がけの戦いが生まれるわけです。

逆に一衣はすごく単純に、友達が欲しいというある意味、子供っぽい希望なんですね。だからその意味では傍からみてると安易な気持ちでセレクターバトルをしてるようなんですけど、本人なりに真剣だったりとか。また、晶みたいに誰かを蹴落としてでもトップになりたい。いつまでも2番手でいるのはウンザリで、まさに欲望を賭けてバトルをする。そのためには手段を選ばないといった、自分の希望や欲望に対してどう向き合っているか? セレクターになった自分と向き合う時にどういうドラマが生まれるのか? ということなんですよ。それによって一筋縄ではいかないバトル作品になっていきます。


──遊月が1話で、るう子に対して初心者狩りを仕掛けたのもエグかったです

「どうしても!」という強い気持ちのなせる業ですよね。常識的とか道徳的にできないものは普通なら一歩退くわけですが、そこから解き放たれた時の行動をフィクションの中で描くと、見ている人の気持ちの解放にもなるような気がします。“極限の命がけ”のバトルをしたいと思ったのは、そこもあります。だから、カードバトルものとしてはタブーの初心者狩りもやっちゃいます。カードゲーマーの方々にはマナーが悪く、気分の悪いシーンにみえるかもしれませんが、それぐらいエグい事してでも勝ちたいという「願い」がモラルを上回るぐらいのバトルであるというのを提示するにはわかりやすい他のカードバトルアニメとは違うよというのを知っていただくにはわかりやすかったのではと思います。


──そうした中で、主人公のるう子が「別に願いはないから負けてもいいよ」って言っちゃうのも珍しいですよね

2話でちょっと片鱗を覗かせてますが、彼女自身は本当は戦うこと自体が好きで、それも、背負った者同士のバチバチした状況で戦うことが楽しいと次第に気がつき始める。でも同時にセレクターバトルの危険性も知ってしまう。その時に、なんの願いもなく生きてきたるう子はどう考えるのか? そういうシリーズの流れになってます。




──では、ルリグについて伺いたいのですが

まずタマですが、真っ白なイメージです。実際に1話では喋れなかったりとか。るう子と同様に何もないところから始まって、どう成長してゆくのか? タマには実はいろいろと謎もあるんですけど、そこを1話とかでも伏線的に見せてるシーンがありますが、どうなるかは今後のお楽しみということで。



花代さんは、遊月のパートナーとしては優しい、いいお姉さん的な存在です。遊月の突っ走りがちな性格をわかったうえで付き合ってあげてるキャラです。遊月が暴走しそうなときには叱ったりもしながら、彼女の願いを叶えるためにがんばる。これはタマ以外の全部のルリグに言えることなんですが、セレクターに助言を与えて“夢限少女”になるためのサポートを日々行ってるんです。その中でも花代さんは、特にそうした面の強い姐御肌ですね。それでいて含みのある色気もある感じです。 緑子は、パートナーの一衣が友達のいないシャイで大人しい子なので、お兄さんみたいなキャラクターです。もちろん女の子ですけど(笑)。ボクっ娘です。本当にマジメないい子なんですよ。一衣の幸せを心底願ってるんですね。

 


フレッシュな面々と実力派とが入り交じった声優陣



──キャスティングについてうかがいたいのですが

ルリグに関してはいろいろと含みを持った芝居が必要なので、例えば花代さん役の川澄綾子さんは説得力のある芝居ができる人ということで選ばせていただきました。るう子役の加隈亜衣さんやタマ役の久野美咲さんといったフレッシュな面々と、どういう化学反応が起こるかも楽しみなところですね。加隈さんは、「何もない」という設定のるう子にはどういう声が合ってるんだろう?と考えたときに、彼女の声がとても透明感というか、無(ニュートラル)な感じがしたので。タマの久野さんは、この声以外、タマはありえないという感じで(笑)。『ロウきゅーぶ!SS』でミミ・バルゲリー役を演じていただいてたのですが、ユニークでかわいい声なんです。タマはまずかわいいキャラと感じてもらいたいし、特の初期の頃は動物的な描き方もしているし、バトル中の好戦的なギャップも含めて、彼女に演じてもらうのがベストだろうと。ドラマが割とドロドロしてるので、マスコット的なタマの存在がちょっとアクセントになって映像全体としてはバラエティ感も出ますし、そういう多面的な魅力というか切り口ができたほうが、ファンの人同士の話の種としても広がるだろうと思いました。


──晶の赤﨑千夏さんは結構意外でしたけど、ハマってましたね(笑)

晶は、ぶっちゃけ一番の嫌な女なワケですよ(笑)。狡猾なキャラクターとして用意したんですけど、声がかわいいけど芝居で嫌悪感がたっぷり出せる芝居巧者の方ということでお願いしました。晶はプロレスで言えば悪役レスラーみたいな感じです。主人公に感情移入して見ているファンから憎まれてナンボみたいな、アメリカのプロレスみたいに視聴者が楽しんでブーイングができる形の悪党になってほしいです。



──作品全体としてはいろいろと謎めいている印象もあります

僕は何から何まで映像の中で説明する必要はないと思ってる派なんですよ。見た人たちの間で「これってああじゃない?」「いや、こうでしょ?」みたいな会話ができることが大事だと思っていて、そういうのは脇の甘い映像と思われがちなんですが、視聴者の想像を広げるためには必要なことだと思うんです。それによって、作品を視聴者の頭の中で“遊んで”楽しむことができる。それが結局、映像としてのインタラクティブ性なんじゃないかなって。だから僕はよく脚本家や監督に「100%、60の力で作ってください」って言うんです。クリエーターは完璧なものを目指すので100%で作ろうとするんですけど、あえて計算づくで脇を甘くしてほしいと……難しいことではあると思うんですが。だから今回も、ある程度は描くつもりですが全部を説明はしません。そこはオンエアを見た後でファン同士、ネットや学校、職場で議論して楽しんでください。それがオリジナルらしい“作品との双方向性”みたいな形になるのかなって思うんですよ。


──そうした部分が作品のアピールポイントにもなるわけですね

「アニメを消化した」と常套的に言われる昨今の状況の中、オンエアで「楽しんで食べてもらう」には、どういう形にしたらいいのか?を考えて『selector』は作っています。毎話ジェットコースターのようなストーリーの流れにもなっています。そこで展開されるバトルやドラマがピーキーであればあるほど、そこに入り込めた時に視聴者的なテンションはすごく上がっていってほしいなって。1話は(助走的な段階なので)割と穏やかな感じでフィルムが流れてますけど、それでもなんとなく不安感や何かが起こりそうな感じがある。怖いもの見たさじゃないですけどそういうところが気になってくれたなら、毎週追いかけてほしいですね。そこがオリジナル作品としての意味や醍醐味だとも思います。意外すぎるすごい展開であきれさせるかもしれないですけど、飽きさせませんよ!(笑)



(取材・文・写真/ぽろり春草)


■プロフィール
川瀬浩平
「偽まる」の別名でも知られるワーナー・ホーム・ビデオのプロデューサー。『灼眼のシャナ』シリーズ、『リトルバスターズ!』シリーズなどを担当。オリジナルのTVシリーズは『The SoulTaker~魂狩~』以来となる。


<ストーリー>
都会に引っ越してきてから、友人もなくただ日々を特に不満もなく過ごしていた女子中学生「小湊るう子」。そんな「るう子」を気遣う祖母をみかねて、兄がるう子に買い与えたものは、中高生の男女を中心に人気のWIXOSS(ウィクロス)というカードゲームであった。
渡されたカードゲームを開け、中に入っていたある1枚のカードを見ると、カードの中に描かれた少女が突然動き出した。不思議に思う「るう子」をよそに、その少女は「るう子」にバトルがしたいと言い続ける。その少女の事をタマと名付けつつ、不思議な事態に困惑している彼女の前に、るう子の事をセレクターと呼ぶ、同級生の紅林遊月からカードバトルを挑まれる。
タマは一体何者なのか?セレクターとは?
希望、願望、欲望。それぞれの想いを胸に少女たちは危険なゲームの渦に飲み込まれていく──


画像一覧

関連作品

selector infected WIXOSS

selector infected WIXOSS

放送日: 2014年4月4日~2014年6月20日   制作会社: J.C.STAFF
キャスト: 加隈亜衣、久野美咲、佐倉綾音、川澄綾子、茅野愛衣、髙橋ミナミ、赤﨑千夏、大西沙織、瀬戸麻沙美、釘宮理恵、小林裕介
(C) LRIG/Project Selector

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