作りとしては、エッジを効かせてソリッドに!
──メインスタッフは岡田麿里さん、佐藤卓哉さん、坂井久太さんという布陣ですねJ.C.STAFFのプロデューサーの松倉友二さんに企画概要を説明したところ、シリーズ構成に岡田さんの名前があがり、監督も(佐藤)卓哉さんが合ってるのではないかということで、松倉さんからオファーしてもらいました。2人とも快諾していただけまして、松倉さんと僕との4人でブレインストーミングしながら、いろいろと内容を固めていきました。
そこで佐藤監督、と岡田麿里さんにお願いしたのは、ハイリスクな要素を足していって命がけのカードバトルをする。この勝負で勝ったらどうなるか? 負けたらどうなるか?のドラマにしようと。“何かを賭けてバトルをする”シチュエーションは昔からあるものだから、既存の作品に似てると言われるのも承知の上で、です。むしろ「××っぽい」という見方も、オリジナルらしい楽しみ方なんじゃないかと思いますし。とはいえ、1度負けて全てを失うとしたら失ったヤツだらけになるので、3回負けると資格を失うようにしたり、そんな感じで(劇中のセレクターバトルの)ルールを作り出していきました。
──劇中の3回負けると云々は、実際のWIXOSSのルールとは関係ないんですよね
まったく関係ないです。佐藤監督、岡田さんも最初はカードゲームに準拠する内容にしないといけないと思ってたんですよ。でもそこは「タカラトミーさんの了承を得てるので、思いっきり振り切りましょう」と。キャラクターデザインに関しては、監督から「たぶん内容はかなりハードなドラマになるから、キャラクターでかわいいところを見せる必要もあるんじゃないか?」ということで、坂井さんを指名されたんですね。僕らはまったく異存はなかったです。坂井さんにはアイコンとして、かわいいデザインのキャラクターを描いてくれてちょっとホッとしました。その時点で皆かなりソリッドな方向に振り切る覚悟でしたから。
──音楽は井内舞子さんですね
井内さんは僕からお願いしました。『
とある』シリーズでずっとご一緒させていただいて、アクションテンポ、環境的なBGMの両方で緊張感ある曲を書いてくださいます。それから、バトルといっても直接戦うのはルリグ同士ですし、カードゲームはルールに則ったターン制なので、独特の緊張感やテンポ感を間延びさせずに感じさせる音楽を考えた時に、エッジの効いたカッコイイ音を作れる人ということでオファーしました。
また監督からは、単純に音楽(BGM)というよりは、ノイズ的な感じで不安感をどこかあおるような、心情描写に寄せた形で世界観を創るほうがおもしろいんじゃないか、悲しい時には切ない曲、戦う時は勇ましい曲みたいな単純明快な形ではない、BGMっぽくないBGMみたいな、という意見がありました。そのアイデアから、井内さんもわざとピアノの音をハズして調律し直して弾いてみたり、二度と作れないようなサウンド作りをしてるんですよ(笑)。
監督以下、Twitterとかで「ヘッドフォン推奨」と言ってるのは、一般的なテレビのスピーカーだと聞きとれないような微妙な音が入ってるからなんですね。ノイズっぽい曲だなって聞き流してしまいがちなんですが、じっくり聴いていただくとかなり深いです。そこはこの作品の面白いアプローチかもしれないです。僕も監督も、みんながそう思ってるんですが、あえてエッジを効かせて、見てくれた方に「どう思う?」って提案しています。どこまでソリッドにやるのか?を音でも表現したいので、ノーマルなBGMからはかなり逸脱したサウンドになってると思います。
──BGMとSE(効果音)があいまいな感じのところもありますがそこは「こういう音楽ならば、こうしたSEにしたほうが、よりバランスよく引き立つね」と、音響監督の岩浪美和さんやミキサーの山口貴之さん、音響効果の小山恭正さんの3人でいろいろと工夫してくれてるんですよ。そんな感じで、スタッフみんなノリノリで尖った方向にいっちゃってます。
アニメ側とゲーム側の二人三脚
──作品要素としては、ルリグが特徴的ですねルリグのキャラクターデザインは、坂井さんに描いてもらってますが、「ルリグ」という名前はタカラトミーのカード担当の山口朋さんの命名です。最初は別の名前が付いてたんですが、脚本会議でもう少し変わった名前にしましょうということで、「GIRLを逆から綴ってLRIG(ルリグ)」にしたんです。その時点で色々複雑な造語ばかり考えていたせいで、単純ではあるのですがその場のみんながなるほどって納得しました。
──ああ、そういうことだったんですね!そう。WIXOSSのゲームシステムは別セクションのスタッフが作ってるんですけど、山口さんが世界観を含めた監修という立場でアニメとゲームの両方を調整してくれてるんです。山口さんは毎回、脚本会議やアフレコにも参加してくださっていて、アニメにもかなり深く関わってくれてます。ゲーム作りと脚本作業が同時進行だったので、こちらで「こういうバトルのシチュエーションを作りたい」と提案すると「だったら、それが成立するにはこういうルールにした方がいいですね」みたいな感じでキャッチボールしながら作っているんです。
もちろんゲームサイドからのチェックも入ります。本当にお互いに話し合いながら同時で開発してる状態ですね。その形を取れたのがすごくよかったですし、間を取り持ってくれた山口さんの力は大きいです。だからアニメの映像上のバトルは、実際のWIXOSSでもできることをやってるわけです。そこが、唯一タイアップらしいところかもです。 でもアニメのメインスタッフはみんなほとんどカードゲームの経験がなかったという…(苦笑)。僕もちょっと聞きかじった程度の理解度しかなくて……。だから脚本会議もなかなか面白くて、僕らみたいなちんぷんかんぷんな連中とカードゲームのプロの山口さんが、ひとつのテーブルを囲んでストーリーを考えていくわけですよ(笑)。会議の最初の頃は山口さんの行ってる事がみんな顔に「?」がついてる状態でした。
──「WIXOSS」とはどういう意味なのですか?
「ウイッシュ・アクロス」の略です。「交錯する願い」みたいな意味合いで、少女たちが願いを賭けて戦うという方向性になった時に、そういうネーミングにしましょうと。世界観を引っぱるというよりは、リンクした感じになれば面白いねということで。
──『selector』というタイトルは、どういうところから来たものですか?どういうタイトルがよいかとずいぶんと話し合って、もうこのままじゃ決まらないだろうっていう雰囲気になった時に、僕が「この子たちは、(ストーリーの中で)自分の生き方を選択するんだし、るう子が最終的に何を選択するのか?も含めて“選択する者”、つまりセレクター(selector)がいいんじゃないですか?」って話をしたんですね。それまでにいろいろと造語のアイデアも出たんですけど、やっぱりシンプルで覚えやすい、耳なじみのいい言葉が大事だということになり。英語としても難しい単語じゃないですし、「選択」という言葉がイコール作品にも繋がってるんじゃないかと。それで決まりました。それとカードゲームの名前も入れないとコラボ感が出ないので、「infected」(浸食された)という言葉を間に挟んで『selector infected WIXOSS』にしました。WIXOSSというカードゲームにselectorというファンタジーの要素が浸食しているようなイメージで……なんとなくウイルスぽい感じがして、イイネと。
──タマや花代さんといった、各ルリグの名前は?これは岡田麿里さんです。脚本に最初から「緑子」とか書いてあって、「誰?」「一衣のルリグです」って(笑)。セレクターたちの名前ともども、だいたい彼女のインスピレーションで決まった感じです。
──セレクターとルリグのパートナー的な関係はアニメ側から出たものですか?タカラトミーサイドからだったと思います。「どういうカードゲームになりそうですか?」というところからアニメの企画もスタートしているので、かなりディスカッションしながら決めていった記憶があります。登場人物(セレクター)自身がバトルをするのではなく、サーバントキャラ的なルリグを使うというのは珍しい形だったので、カードゲームとしてやってみたいと山口さん自身も思っていたみたいです。