ファン待望の今後の展開は……?
――反響を実感したのはいつ頃でしたか?
路線としてはハッキリやっていたつもりだったので、映像自体は始まって1~2か月した頃にはある程度好意的に受け止めてもらえたなと思っていたんですが、実際のビジネス的な部分でガンプラの調子がよさそうと聞こえてきたのは、クリスマス商戦とかお年玉の時期を超えた年明けですね。「ビルドファイターズ」単体だけではなく、自分が昔好きだったものを買い直したり、ガンプラ全体が盛り上がりました。あとは「ベアッガイIII」を含め、ビルドファイターズ特有の商品の中でいい話が増えてきたという感じですね。映像ソフトは単巻売りだと年末には傾向が見えるのですが、放送が終わるくらいにブルーレイボックスが発売になったので一向に話が出なくて。期待値も低かったので、思ったよりいいかもというくらいの話がでてきたのも年明けですね。見ている人が喜んでいる割にはビジネス的に具体的な数字に出ないのはどうかなという気持ちはなくはなかったです。
――視聴者が楽しんでくれている状況は制作側も受け止めていたということでしょうか?
こちらがシナリオ会議などで気にしていたところは、気づく人は気づいていましたし、その懸念については対策もしていたのであとでハマるだろうなと。アニメって最初の1~2話でどういう反応が出るかで、それがすべてでないにせよ、ある程度想像がつくんですね。反応する部分がこちらの考えと一致していたのでこれだったらうまくいくんじゃないかなという感じがしていました。今はネットなどですぐにリアクションを見られるし、影響されて内容をいじろうとして失敗する作品もありますから、そういうことにならなかったのもよかったかなと。今はどこの会社も苦労していると思います。特に原作のある作品は原作と違うことができないという葛藤もあるでしょうし、オリジナルの場合もどういうものが当たるかわからないところから作っていくので、難しいですね。
――ファンの反応でいいますと、第23話は歴代のガンダム作品の登場人物に似たキャラが画面上に登場して特に反響が大きかったですね。
個人的にはやり過ぎたかなと思っています。当初から声優も含めてそのままの人はラルさんだけにすると決めていたんです。あの回のコンテ上ではあくまで「似た人」として書かれていたし、その前にもそれっぽい人は出てきたので、そのくらいのレベルかなと思ったのですが、絵が上がったらそのまんまで(苦笑)。たまたま「Zガンダム」のキャラのカットを描いた人がZ本編で作監をやっていたから似すぎたりとか。監督も楽しい雰囲気を見せたい一環でやったと思うんですけど、ちょっとやり過ぎました。ただ、これが他の作品のパロディとか悲劇的な方向性だったら非難轟々だったかもしれないですけど、明るい方向で捉えてもらったので、そこで楽しんでもらえたのであれば、結果論ですが、それはそれでよかったかなと捉えています。せいぜい自分が上司から怒られるだけなので(笑)。
――最終回も好評のうちに終えられましたが、今後の展開をお話しいただける範囲で聞かせていただければと思います。
ガンプラ全体が売れるようになったというところでバンダイさんから評価してもらえた作品ですし、ファンの方から何かしらやってほしいという声があるのは承知しています。とはいえ、富野監督の「ガンダム Gのレコンギスタ」もありますし、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」もあるので、サンライズ内でガンダム作品が多すぎるという社内事情もあったりするのですが、いずれ期待に応えたいかなと思います。ビジネス的な部分で言うと、やっていたほうがガンプラの売り上げは間違いなくよくなるというのが今回わかったので、その辺の具体的な商材をどうするかは一考の余地があるかもしれませんが、やる意味はあるかなと。ちなみにサンライズの第3スタジオは「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」にも「ガンダム Gのレコンギスタ」にも関わっていない中で、現状仕事が減らないという現状をお伝えして、そこから想像していただきたいということしか今のところは言えない感じです。
――ありがとうございます。ちなみにサンライズは各スタジオごとにそれぞれ高い独自性を持っていますが、この仕組みは、小川プロデューサーから見てどのように映りますか?サンライズには「
機動戦士ガンダムUC」を作っている班もあれば、「
バトルスピリッツ」や「
銀魂」などもあり、こうして手広くやれている理由は、スタジオの数だけプロデューサーがいて、それぞれ独自に各々業界の付き合いがある人と作品を作っているところにあると思います。つまり独自性が高いぶん、そこに特化した人が集まりやすいのかなと。自分の第3スタジオはずっとガンダムをやっているからこそ、テレビ的な演出でメカ作画をやれる人が集まってくれますし、「UC」にはああいう緻密な作業を時間をかけてやるベテランの人たちが集まっています。そこを率いているプロデューサーがどういう作品を歩んできて、どんな作品を作りたいかで人を集めているので、各スタジオに特色が出るわけです。
会議などでプロデューサー同士が集まると、お互いにできることとできないことがハッキリしているのがわかるんです。自分からすると「バトスピ」みたいに毎年少しずつ趣向を変えつつ連続して通年やるのは想像しがたいですし、向こうからするとこんな内容が重い作品をよくもやっているなと言うでしょう。その分尊敬しあえるところではあります。これは自分もずっと言われていることですが、映像が作れなくなったらサンライズとして存在する意味がないと。現状、作品数が増えすぎているのは痛しかゆしな部分もありますが、できないところが出てくると全社的に大変なことになるので、そうならないうちはスタジオごとに特色が出るのはよいシステムじゃないかなと思います。
――最後にご覧になったファンに向けてのメッセージをお願いします。
全25話を満足して楽しんでくれたのであれば監督を含めスタッフ全員幸いです。いずれいい話ができればいいなと作り手側も思っていますし、「あの世界はみなさんの希望があれば続くかもしれませんよ」と今の段階では締めておきたいですね。
(取材・文・写真/日詰明嘉)
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