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アニメ「機動戦士ガンダム」劇場版三部作のオールナイト上映会が4月12日に行われた。
これは、「劇場版 機動戦士ガンダム Blu-ray トリロジーボックス」が5月28日に発売となることを記念した催し。トークショーには、劇場版三部作でアニメーターを務めた板野一郎さん、フロアディレクターを務めた関田修さん、「機動戦士ガンダムUC」でおなじみの福井晴敏さんの3名が登場するとあって、会場となった新宿ピカデリーには大勢のファンが詰めかけた。
トークは、アニメ特撮研究家・氷川竜介さんの司会進行でスタート。板野さんと関田さんは制作スタッフの代表として、福井さんはファン代表としての登壇で、当時の現場状況を知る貴重なスタッフの生の声を聞き逃すまいという静かな緊張感が会場内を覆っていた。
氷川さんが、現在の伝説的な人気とは裏腹に「制作当時はそんなに力を入れている作品ではなく、現場は大変な環境だったそうですね」と問うと、板野さんは、富野監督が局のえらい人からの電話に「すいません。すいません」と謝っていたという話を披露。富野監督は電話を切って、ため息をついてから、元気を出すためにファンの手紙を読んでいたという。また、サンライズ第1スタジオで作業をすることになった板野さんは、クオリティに厳しい安彦さんのすぐ近くの席で緊張しながら作業していたとのことで、「外部から上がってきた原画を見て、こんなの使えるか~って怒って、四隅を止めて、くるくるポイしちゃうんですよ」と当時を振り返っていた。
福井さんは会場に向かって「"板野サーカス"という言葉を初めて聞いた人?」と質問。さすがに詳しいファンが多く、手を上げたのは数人であったが、板野さんが編み出した"板野サーカス"と呼ばれる戦闘シーンの演出手法を解説。劇場版の公開前にテレビ放映されていた「伝説巨人イデオン」に言及し、「普通だとそのまま当たるんだけど、アディゴが逃げちゃうですよね。それをミサイルが追っかけて」とアクロバティックな戦闘シーンの思い出を語った。また、「最近は、板野さんの影響で、戦闘シーンの絵コンテをメカデザイナーさんに送ると、別の絵コンテが上がってくるんです」とメカ作画で演出を膨らませるという前例を作ったのが板野さんであることを強調した。
氷川さんは、板野作画のもうひとつの例としてフラミンゴのシーンをピックアップ。会場のスクリーンにはジャブローから離脱するホワイトベースクルーが見ていた、飛び立つフラミンゴのシーンの場面が映された。板野さんは「安彦さんが遠慮して、絵コンテではフラミンゴの数を少なめに書くんだけど、僕が勝手に増やしちゃった」と、画面に多くのモノが登場するシーン(手間がかかるので誰もが敬遠する)をあえて引き受けていたことを明かした。すると、関田さんが、板野さんが殴られたエピソードを披露。なにやら、とある仕上げ会社の社長さんが、打ち上げの席で「お前のおかげで何人辞めたと思ってるんだ~」と板野さんに怒りをぶつけたという。
続いては、エルメスのコクピットのシーンが映され、当時の撮影テクニックに話が及んだ。このシーンでは光がだんだん増えていくのだが、これは撮影に立ち会った関田さんが、現場でマスク用紙に針で穴を空けて増やしていったと解説した。また、別のガラスが割れるシーンでは、白い線をマーカーで書き足しながら撮影していたという。「最近はパソコン処理で自由に修正ができるので、直しがいつまでも終わらない」と語る福井さんは当時の潔さに感嘆していた。
最後に、氷川さんが「劇場版 機動戦士ガンダム Blu-ray トリロジーボックス」について説明。プレミアムエディション(初回限定生産)の特典「劇場版三部作5.1ch 特別版」は、EDが違ったり、絵のタイミングが微妙に異なっていたりするほか、技術的な問題もあって、別ディスクとしての収録になったとのこと。また、特典である「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」のパンフレットは場面写真が違う別バージョンで収録。資料がサンライズにも残っていなかったため、氷川さんの秘蔵コレクションから提供したことで復刻が実現したという。
なお、オールナイト上映会は今回1日だけだが、劇場版三部作のスペシャル上映会は4月18日(16日は除く)まで行われる。