アニメ業界ウォッチング第4回:「ドワンゴ」執行役員 太田豊紀がアニメビジネスを語る!

2014年04月25日 12:000

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10周年を迎える「アニメロサマーライブ」の歴史とこれからの世界展開



――「アニサマ」のお話が出たところで、今年10周年を迎えるこのイベントについてのお話を聞かせてください。まず太田さんは当時からアニメソングに強いご興味がおありだったのでしょうか?

いえ、必ずしもそういうわけではなかったんです。2001年から、着メロを作って配信する事業をしておりまして、オリコンのウィークリーチャートを50位まで見て、どの曲を作るかを決めていたんです。それで、たまたま水樹奈々さんの「LOVE & HISTORY」と「POWER GATE」が同時にリリースされて49位と50位に載っていて、珍しい名前だったんで興味を持って、着メロを作ってみようかとCDを買ったのがきっかけです。そして聴いてみたところ、とにかくスゴかった……! どうにかしてこの人と会えないかと思って文化放送の方に相談したところ、矢吹俊郎音楽プロデューサーをご紹介いただいたんです。それがきっかけとなり、後にアニメロミックスのCMにも出ていただきました。まだ「Zepp」でライブをやっていた頃で、広告代理店の人には「日本で一番歌がうまい女の子だから」と一生懸命説得したことを覚えています(笑)。


――それがきっかけでアニソンに興味を持たれたわけですね。しかし、あの形や規模でのアニソンフェスはそれまで行なわれたことがありませんでした。立ち上げた時はどんな思いだったのでしょうか?

いや、もっと軽い気持ちだったんですよ(笑)。携帯サイトのアニメロミックスの会員数が伸び悩んでいたので、プロモーションになるイベントが欲しかったんです。アニメロミックスのおかげで各社と等距離でお付き合いができていたし、逆にいえば自分たちにしがらみがなかったのでレーベルの垣根を超える役割ができるんじゃないかと。このことを、先ほどお話しした矢吹俊郎さんにご紹介いただいた奥井雅美さんにご相談したらものすごく共感いただいて、奥井さんから、水樹奈々さんのプロデューサーであるキングレコード三嶋さん、ランティスの井上社長などアニソン業界の主要なメンバーをご紹介いただいて、これは成立するだろうという見込みがありました。


――プロモーション効果はいかがでしたか?

大きかったですね。アニメロミックスは会員数を増やしていった後、一度純減トレンドになったのですが、アニサマを始めてからずっと上がり続けて、2010年のスマホショックまでは、アニサマが拡大するにしたがってアニメロの会員数も増えるというすごい相乗効果が生まれました。


――何が効果的だったのでしょうか? アニサマは1日から3日限りのイベントですが。

開催日でいうと確かにその通りですが、実際は出演者の告知をはじめとしたプロモーションが半年続きます。その間、ずっとアニメロで追いかけ続けて盛り上げることができるんです。これは長く影響力のあるプロモーションになります。そしてアニサマを通じて作った人脈によって、いろいろなコンテンツの獲得ができたというのも大きかったですね。


――アニサマは今年で10周年を迎えますが、今までで特に印象深いできごとは?

大きく3回あります。まず1回目。実は最初の会場はパシフィコ横浜の予定だったんです。それで水樹奈々さんのところに交渉に行ったら音楽プロデューサーの矢吹俊郎さんに「最初から代々木(第一体育館)でやろうよ」と言われて、じゃあ、と(笑)。これが最初の転機です。あの時、覚悟を決めたというか、どんなに赤字になってもとにかく満席にしなきゃとプロモーションやCMを打ちまくりました。最終的には満席になりましたが興行は大赤字で、アニメロミックスという収益母体がなかったらとてもできませんでしたね(笑)。


――2つ目は何ですか?

2008年にいきなり、さいたまスーパーアリーナ2daysにしたことですね。最初の年はアリーナモードでしたが、それでも前年の武道館1dayの3倍以上です。


――2008年だとアニソンシーンの拡大が進んでいた頃では?

いえ、まだそれほどでもなかったんですよ。武道館を経験していたのも水樹奈々さん、田村ゆかりさんぐらいだったはずです。ただ、アニサマのブランドがあればおそらく各日1万人は入るだろうと。であればとりあえず格好もつくし、やってみるかと。だからあの年のテーマが「チャレンジ」なのは、我々自身にとっての意味合いもあったんです(笑)。それでフタを開けてみたら完売した。予想以上のマーケットでした。


――その理由をどのように分析されますか?

あのときもプロモーションをメチャクチャ頑張りましたが、ひとつ僕が思ったのは、「ハコ(会場)は大きくすればするほど入る」ということです。ちょっと無理そうな会場をギリギリで埋めていく。後に知ったのですが、「ももいろクローバーZ」さんが同じ戦略だったんです。中野サンプラザから、武道館や横浜アリーナを飛び越して一気にさいたまスーパーアリーナで行うという戦略は、それまでの興業の常識としてはありえないわけです。でも彼女たちも埋めていった。


――埋めなきゃと思うファン心理が働くのでしょうか。

それもあるでしょうけれども、大きな会場でやることで「流行っている感」が出るんでしょうね。拡大するというのが重要だなと思います。


――アニサマに話を戻すと、3つ目の転機は何でしょうか?

2011年~12年の出来事ですね。2011年のアニサマの発表会の日に震災が起きて、それ以降のイベントシーン全体に停滞感があり券売にも苦労しました。そして2012年は水樹奈々さんがご自身のツアー日程の関係で欠席、JAM Projectさんが海外に専念されるという状況になって、「アニサマ大丈夫か?」と言われていました。でもあのときに通常運転で売り切ったことで、逆にアニサマというブランドに対してお客さんが期待しているんだとわかり、本当に自信になりました。


――日数だけではなく「ANISAMA WORLD」という形で拡大を始めたのも2013年でした。

海外展開における拡大の挑戦はそれ以前にもずっとずっと続けているんです。ただ、「アニサマ上海」は社会情勢のため一度延期して、その後は無期延期という形になってしまった。現時点で日本と同じレベルの集客を期待できるのは中国本土だけなのですが、社会情勢のことなどを考えると半年間プロモーションをし続けるアニサマのやり方は持っていけないというのが今の結論です。その反省もあって、もっと短いプロモーション期間でアニサマの質的な醍醐味だけを味わってもらう目的で作ったのが「ANISAMA WORLD」です。3月28日には台湾での開催が成功しましたし、上海も規模としては可能なので交渉は継続しています。もっといろんな国でやりたいですね。


――たとえばどのあたりを市場として見ていますか?

興味がある国で言うと、タイですね。今はちょっと政情不安ですが、人口が7000万人以上いますしアニメやマンガの普及度を見ると、将来は台湾に次ぐマーケットになるだろうと見ています。


――また、国内のほうに目を向けると、NHK BS プレミアムでアニサマが放送されましたが、これについてはどんな戦略に基づいているのでしょうか?

2013年に放送が実現しましたが、実際はその数年前から動いていたんです。先ほど水樹奈々さんのお話をしましたが、彼女は紅白に5年連続で出たり、T.M.Revolutionさんとコラボしたりと、あれだけブランド力を上げられてしまうと、我々としてはそれにふさわしいステージのブランドとしてあり続けなくてはならないというプレッシャーがあります。もちろんステージにブランド力があれば、今後参加したいと思ってくださる方も増えるでしょうし、現在出演していただいている方自身のブランドも上がる可能性があります。それらのために、まず自分たちのブランドを上げなくてはいけない。その点において、NHKでの全国放送は魅力的でした。

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配信日: 2014年7月5日   制作会社: 東映アニメーション
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(C) NHK・NEP・Dwango, licensed by Saltkrakan AB, The Astrid Lindgren Company

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