アニメ映画「サカサマのパテマ」、監督・吉浦康裕ロングインタビュー! カメラワークを生かした演出によって作画枚数は2万枚強に

アキバ総研 | 2014年04月02日 13:36
アニメ映画「サカサマのパテマ」、監督・吉浦康裕ロングインタビュー! カメラワークを生かした演出によって作画枚数は2万枚強に

アニメ映画「サカサマのパテマ」より、監督・吉浦康裕さんへのロングインタビューの原稿が到着した。

 



「サカサマのパテマ」は、「イヴの時間 劇場版」でアニメファンのみならず映画ファンからも注目を集めた吉浦康裕さんが原作・脚本・監督とすべてを手がけた完全オリジナルアニメ映画。2012年11月に公開され、第26回東京国際映画祭に特別招待作品として出展されたほか、スコットランドではヱヴァ序/破/Q超えの最高評価を獲得。文化庁メディア芸術祭でも、アニメーション部門の優秀賞を受賞した(日本の劇場アニメとしての優秀賞受賞はパテマとヱヴァQのみ)。内容は、同じ場所にいても視点や感覚を共有できない2人の冒険を描いたボーイミーツガール作品。スタッフやキャストは作品詳細にて。

 

4月25日にBD/DVDが発売となるが、アニメ評論家の藤津亮太さんによる監督インタビューの原稿が到着。サカサマ世界の誕生秘話、キャラクター、スタッフ、ラストシーンなどについて監督自身が語っている。

なお、BD/DVDの詳細は以下の記事にて。
アニメ映画「サカサマのパテマ」、BD/DVDは4月25日に発売! サカサマ視点での本編ダイジェストも収録

 


 

・「サカサマのパテマ」監督・吉浦康裕インタビュー
インタビュアー/構成:藤津亮太(アニメ評論家)


ユニークなサカサマ世界が生まれるまで


――『サカサマのパテマ』の、「重力が働く方向が正反対の二つの世界がある」というアイデアはとてもユニークです。これはどこから生まれた発想でしょうか。
『サカサマのパテマ』のそもそもの企画の成立に立ち返ると、動機は結構シンプルなんです。子供の頃、晴れた日に空を見上げていると空にひゅっと落ちてしまいそうだと妄想をしていたことありました。そのイメージがスタート地点で、そこから「逆さまの人間がいて空に落ちそうである」というビジュアルが思い浮かんだんです。少年がサカサマの少女をつかまえているという、映画のポスターの原型となった絵もその時点で描いてありました。映画のコンセプトは、一言で言い切れるぐらいシンプルなほうがいいと思います。
――ビジュアルからスタートしたんですね。
はい。そして、そこから「これでどういう面白い物語がつくれるだろうか」と考え始め、キャラや世界観を固めていきました。注意したのは、この「逆さま」というビジュアルの面白さを、ちゃんと感動……というか、観客の心を動かすような内容へと落とし込まないといけないということ。そうでないと単なる「面白い映像を作った」というだけで終わってしまうので。では「手を離さないと彼女は生きていけない。空に落ちてしまう」という絵のモチーフから何を引き出すことができるか。そこからは理屈で考えていって「同じ場所にいるけれど、全然違うものを見ているふたり」ということが導かれてきて、これなら普遍的なテーマになるだろうと、いうところに行き着きました。
――非常に寓話的な内容でもあります。
実は僕はSF的な題材をよく扱う作家だといわれるようなことが多いんです。それは、人間とアンドロイドの関係を描いた『イヴの時間』の印象が強いんだと思うのですが、スタッフに言わせるとちょっと違うと。SFはSFでもサイエンス・フィクションではなく、藤子・F・不二雄先生のいう"少し不思議"のほうじゃないかと。それは確かにそうで、細かい設定や科学的考証に重きがあるというより、SFというガジェットを使って何かをわかりやすく伝えることが多いなと自分でもそう思いました。そういう意味では『サカサマのパテマ』もそういう作品になっていると思います。
――テーマが見えたことで物語も具体的に固まり始めたのでしょうか。
そうです。最初はかなり冒険活劇寄りの映画にしようと考えていましたが、テーマが見えてきたことで、むしろ二人の関係性を描く映画……つまり恋愛映画のように描いたほうがいい作品だな、と。そういう方向転換はありましたね。予算のスケールからしても、恋愛映画のほうがちょうどいい感じでしたし。
――長編には初挑戦ということですが、脚本執筆の苦労はあったのでしょうか。
これまで散々短編ばかりやってきましたので、そこはむしろスムーズでした。短編をいろいろ書いてきたおかげで構成力が身についていたのだと思います。短編的なアイデアをぐっと引き延ばして作った大きな流れの中に、さらに短編要素を詰めていくような感じで脚本を書きました。自分の中にある短編のノウハウを総動員して作った感じです。
――映像の見せ方も、テーマと密接に結びついてすごく凝縮されていました。
コンセプトが上下ですから、横方向への移動が増える「冒険」の要素はできるだけカットして、縦方向の移動を中心に描こうとしました。『パテマ』の作画枚数は、2万枚強なのですが、これはこのジャンルのアニメとしてはすごく少ないんです。それは、縦移動の表現が、キャラクターをスライドさせることで省力化したからです。その分、自分が得意なカメラワークを生かした演出を心掛けました。
――これまでの監督作品と比べるとロングショットも多く、やはり映画ということを意識して演出されたのでしょうか。
今回、映画を作ると最初に決めた時、「ドアの外に出るアニメを作ります」と意思表明をしました。『イヴの時間』を作ってちょうど僕の20代は終わったんですが、20代を振り返ると、なんだか椅子に座って喋るアニメばかり作っていたな、と(笑)。それで、ここらでちょっと違うことをやろうと。そこで今回は、全体をまず3幕構成に従って4分割して、各ブロックに必ず何かスペクタクルなシーンを入れようと考えました。
――空に落ちた先のサプライズは、インパクトがありました。次第にディティールが浮かび上がってくるところは、実は押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を意識して演出したところなんですよ(笑)。あの展開は物語も後半にさしかかっているのに、なお新展開が起こるというサプライズで、得体の知れない感じを出したかったんです。空についての説明もほとんど入れないことで、『2001年宇宙の旅』などが持っているような、言葉で説明できないような未知のものと遭遇するというスパイスを、エンターテインメントの枠の中でやってみようと思ったからです。

 

パテマ、エイジ……。息づくキャラクターたち


――各キャラクターはどのように生まれたのでしょうか。
最初は、パテマのほうが内向的で、エイジのほうが活動的、というアイデアだったんです。でも、逆さまの状態でパテマがこの世界にいる、ということは、彼女はどこか別の社会からやって来たということですよね。そうするとむしろパテマは活発な性格でないといけない。そこで必然的にエイジのほうは、ちょっと内向的にしよう、ということになりました。
――パテマというキャラクターを描いていく上で、大事にされたことは何でしょう。
やはり、出会う状況が状況のキャラクターなので、誰もが「助けたい」と思えるキャラでないとダメだろうと(笑)。キャストの藤井(ゆきよ)さんにも「とにかく嫌みのない演技をしてください」とお願いしました。
――一方、エイジはどうでしょうか。
エイジはちょっと迷いました。最初は正統派の冒険活劇ものの主人公として書いていたんです。でも、脚本を読んでもらった女性スタッフの反応がよくない。エイジがいまいちカッコよく見えないと(笑)。それで「どうしよう」となりました。パテマはお姫様的に可愛らしくするということで落ち着いていたので、エイジは対比としてちょっとアンダーなキャラにしてみたらどうだろう、と。じゃあ、アンダーでしかも、かっこいいキャラというのはどういうタイプか。きっと不良っぽくて影があって、『耳をすませば』の天沢聖司みたいな雰囲気を持っているんではないかと。そんなイメージでセリフを書いてみたら、うまく転がり始めたんです。男性キャラクターで難しいのは、ちょっと油断すると自分自身の投影になっちゃって、逆にうまくセリフが出てこなくなっちゃったりするんですよ。むしろ自分とはタイプが違うキャラにした方が、セリフは書きやすいんです。
――悪役であるイザムラをどう描くかもこの作品のポイントだったのではないでしょうか。
はい。悪者は悪者でもファンが付くような悪者にしたかったというのがひとつ。もうひとつ思い切ったのは、今回は悪者には悪者の事情があるという点はバッサリと切り捨てたことです。もう気持ちいいぐらい悪者にしようと思って。そうなると、逆に書いていて一番気にすることがない楽しいキャラになりましたね。イザムラはとても人間的なんですよ。表情も豊かだし、サカサマ人を「罪人」っていっている割には、パテマを手籠めにしようとする嫌らしさもあって。非常に人間臭いというか(笑)。今回は正統派冒険活劇映画にしようと思ったので、悪役は悪役らしくストレートにした方が作品として幸せになるかな、と思ったんですね。
――冒険もの、恋愛ものの要素がありながら、キャラクターのやりとりには随所でユーモアも滲みます。パテマを家においてエイジが出かけようとするところ、ラスト近くで、パテマの幼なじみのポルタとイザムラの部下だったジャックが会話するところなど印象的です。
ロンドン、パリなどで上映した時は、パテマがエイジを何度も呼び止めるくだりがバカ受けしまして、ほっとしました(笑)。『サカサマのパテマ』に限らず、どの作品もユーモアを込めたいな、というのはあります。僕は高校時代に演劇をやっていたこともあって、芝居的な笑いを入れ込んでみたいんです。今回も、シリアスな物語ではあるんですが、箸休め的にそういうシーンを入れたいなとは思っていました。

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配信日: 2012年2月25日~2012年6月13日   制作会社: パープルカウスタジオジャパン
キャスト: 藤井ゆきよ、岡本信彦、大畑伸太郎、ふくまつ進紗、加藤将之、安元洋貴、内田真礼、土師孝也
(C) Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee

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