7月20日に劇場公開となるスタジオジブリ最新作「風立ちぬ」だが、主人公の声優に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ総監督の庵野秀明さんが抜擢されたことがわかった。
「風立ちぬ」は、宮崎駿監督が5年ぶりに手掛けるアニメ映画。青年技師・堀越二郎の半生の物語で、モデルとなったのは後に神話と化した零戦を設計した堀越二郎さんと同時代を生きた文学者・堀辰雄さん。この2人の人生を融合させ、技師としての生き方や薄幸の少女・菜穂子との出会いなどを完全フィクションとして描く。
そして今回、この主人公・二郎の声を、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ総監督の庵野秀明さんが担当することが決定。庵野さんは、ガイナックス作品であるTVアニメ「アベノ橋魔法☆商店街」(第12話)で声の出演をしたことはあるが、メインキャラの声を担当するのはもちろん今回が初となる。
宮崎駿監督は、早口である・滑舌がよい・凛としている、の3点を条件に主人公役の適任者を探していたところ、鈴木敏夫プロデューサーから庵野さんの提案が。一方の庵野さんは、1984年公開の「風の谷のナウシカ」で"巨神兵"シーンの原画を描いて以来、宮崎監督を師と仰いでおり、「最初から断ることはできない」と声優オーディションに参加。声を聞いた宮崎監督からは満面の笑みで「やって」と直々の依頼があり、初の主人公役声優挑戦に至ったという。
4月中旬から始まったアフレコ収録の序盤では、「難しい」を連発した庵野さん。そのため、通常は離れたブースから指示を出す宮崎監督が直接スタジオに降り、庵野さんの真後ろから声をかける形でスタート。「うまくやろうとしなくていい。いい声だからでなく、存在感で選んだのだから、それを出さなくてはならない」との宮崎監督からのアドバイスを受けた庵野さんは、外国語や声を張るシーンなどにも果敢に取り組み、人を背負うシーンでは実際に手を後ろに回して声を出すなど、体も動かしながら調子をつかんでいったという。また、アニメ監督らしく、同じセリフをリズムを変えて何度も繰り返しながら「この練習部分も(録音を)回しておいてくださいね」とお願いしたり、「今の中で使えるものがあると思います」と自分でOKテイクを出したりするなどの一面も。これには宮崎監督も「監督が二人いるみたいでややこしいな」と苦笑していたようだ。
このほか宮崎監督は、主人公の年齢が変化していくことについて、「まずは20代、語尾を上げ、明るく高い声で」と指示を出したり、二郎が冷静にみんなを諭すシーンでは「三船敏郎のように」と注文。庵野さんは4日間に渡ったアフレコ収録を通じて役どころをすっかりつかんだ様子で、ヒロインとの愛をささやくシーンにいたっては現場に居合わせた全員が息をのむほどの芝居を見せての一発OK。宮崎監督の満足の笑みが光る現場となった。
2013年は宮崎駿さん&高畑勲さんというスタジオジブリの2枚看板による作品が同年公開されるという珍しい年。そこに「風の谷のナウシカ」を知る庵野秀明さんが加わり、"ジブリイヤーの"盛り上がりはさらに加速しそうだ。
以下、コメント(※次のページへ)。