おーい、青空侍
観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル、BD、劇場
劇場版クレしんの頂点と言えば、やはりオトナ帝国か当作であろう。
クレしんを長らく支えてきた原監督が、本格的な合戦物を作りたいと緻密な考証の元に練り上げられた、アニメの枠を外しても日本の戦国合戦映画中至高の大傑作。
戦国に生きる人々の姿を生き生きと、しかし切なく、野原一家達現代人とのギャップもありながらも、意外に武士がいなくなる未来を素直に受け入れる素直さ、それを元に政略結婚を強いる大敵を突っぱねる胆力を魅せる春日国の武人達。
中でも無骨者で戦場では鬼と恐れられる井尻又兵衛由俊の、表に出すに出せない廉姫への想い。いじらしい漢の純情が、定番ながらも胸に染みる。しんのすけの行動にかき回されながらでは、墓に持ち込む覚悟の想いも隠し通せる訳がない。
観客からは明らかに両思いと分かる様に描きつつ、特に「お又のおじちゃん」からは身分違いも恐れ多いと避けまくる。野原夫妻のなれそめを聞きながら、身分にとらわれぬ自由な恋愛が出来る未来に憧れる廉姫。
しかし戦国の世は不穏。次々と落ちる白い花達の醸し出す不安感の演出の、実に効果的な事!
合戦は始まり、多勢に無勢の春日勢は、少数精鋭部隊による奇襲を目論む。率いるのは鬼の井尻。意気揚々としているものの、もはや決死行なのは明らか。(劇場ではこの辺りから観客のすすり泣きが。)
彼等の出陣の後城外に逃がされる野原一家だが、得体の知れない自分らを歓待してくれた侍達が死を覚悟の戦いに出る事、現代人の自分らの無力さとの板挟みに悩むひろし。
「おたすけしなくていいのかな?ねぇとうちゃん!」
しんのすけの言葉に、ひろしも遂に吹っ切れる。
「春日部住人、野原一家!義によって助太刀いたす!野原一家ファイヤーっ!!」
リアルに描かれる合戦描写と、クレしんらしいコメディ演出が相乗効果を生みつつ、物語はショッキングな展開が有りつつも、実にしんみりと収束する。
タイムスリップ物でありながらSF色を徹底して排除する演出を貫きながらも、「歴史修正の強制力」と言うガジェットをこっそり持ち込む、良い隠し味だ。
ちなみに演出は、近年「ガルパン」「SHIROBAKO」で注目される水島努である。確かに、硬軟交えつつ泣かせてくれる味わいは共通する物がある。
- ストーリー
- 5.0
- 作画
- 5.0
- キャラクター
- 5.0
- 音楽
- 5.0
- オリジナリティ
- 5.0
- 演出
- 5.0
- 声優
- 5.0
- 歌
- 4.0
満足度
5.0
いいね(0)
2015-04-15 06:59:38