CUDAさんの評価レビュー

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良いにせよ悪いにせよ重要な作品

観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル
ネタバレ
2012年最も話題を集めたTVアニメといっても過言ではありません。

ソードアート・オンライン(以下SAO)は、我々が思っている以上に世界的な人気を得ていました。
外国のゲームメディアで取り上げられていたりもしましたし、実際に海外のオンラインゲームをやっていたらSAOの話をチャットでしている外国のプレイヤーを何度も見かけました。

多くの人の心を掴むことに成功したSAOですが、同時に欠点が目立つことに悩まされている作品だと言えます。


各評価観点について書いていきます。

ストーリー:
原作の小説を読んだことがないのでアニメだけでの判断です。

最初の1話、2話はSAOの世界に視聴者を引き込むには十分なほど魅力的に良く書かれていました。
画期的な技術が採用された夢の様なMMORPGをプレイしたらデスゲームに巻き込まれてしまった。ログアウトするにはゲームをクリアするしかない。ゲーム内で死んだら現実でも死ぬ。
単純ですが、わかりやすくて燃える展開です。
ベータテスターのことを話の中に組み入れてくるのも面白かった。

しかし、中盤以降の展開は個人的には大きな失望に繋がりました。
最初にこのアニメを観た時は、2クールかけてアインクラッドのエピソードを描く壮大な物語だとばかり思っていました。

ですので一気に時間が進んだのには驚かされましたし、アインクラッド編の中盤はオムニバスのように一貫していないエピソードの寄せ集めに感じられました。
また、ペース配分がアインクラッド編とフェアリィ・ダンス編で大きく異なっており、アインクラッドをもっと見たかったという思いです。

そして、特に残念だったのが、意志の力や愛がゲームのルールを打ち破るという、自らその優れたコンセプトを否定するような矛盾したストーリーでした。
なぜなら、キリトは悟空でもルフィでもなく普通の少年だからです。しかもゲームプログラムの中にいる。
最初の数話を観て期待したのは、キリトたちが賢くゲームの隙を突いてクリアしていくことでした。

後半のフェアリィ・ダンス編にはたっぷりと時間が用意されていました。そのため、主人公との関係や葛藤を抱える心情が深く描写された妹の方がアスナより魅力的なキャラクターなのではと思ってしまいました。

各話のペースは良くなった第2部ですが、囚われの姫を助けるというベタな展開と今度は死がつき纏わないアルヴヘイム・オンラインは平凡にならざるをえません。
むしろアインクラッド編を観た後では非常に長く感じます。

こういったプロットでありながら、3.0という評価をつけたのは、各エピソードだけを個別に見たら面白いからです。

とりあえず、ここまでプレイヤースキルベースのオンラインゲームにあんなレベルシステムを設けた開発者は天才ではなくアホですね・・・



作画:
作画というよりアニメーションという観点からすると、A-1 Picturesはなかなかの仕事をしていました。戦闘シーンは迫力がありましたし、鮮やかなファンタジーゲームらしい世界の描き方はかなり良かったのではないかと思います。全体的なクオリティも高いです。


キャラクター:
基本的なキャラクターデザインや服装などは特に悪いと思いませんが、ALOのアバターはちょっとダサいです。

キリトは妹さえも虜にしてしまうほどの完璧超人です。人格もほとんど欠点がなく、少なくともゲームの中では非常に優秀です。これはキャラクターとしては長所であり短所でもあります。
といっても、アインクラッド編の中盤では女性キャラクターばかり助けているように見えました。最初、鏡で女性プレイヤーは少ないことが明らかになったのに?

アスナは最初に登場した時は強くて孤高の女性プレイヤーという印象でしたが、時間が経つにつれて最初の魅力を失っていっているように思えました。

脇役たちはキリトを助けようがキリトに助けられようがキリトを襲おうが本当に脇役に甘んじています。そして印象が薄い。1話しか出てこないキャラもいる。女性キャラクターはほとんどキリトに惚れそうになります・・・


音楽:
梶浦由記さんはFate/Zeroに続いてSAOでも本当に素晴らしい仕事をしています。作品にふさわしい曲があらゆるシーンを演出しています。


声優:
甲乙つけがたいです。
少なくともキャスティングによってSAOが輝いているとは思えないですが、悪くしているとも思えません。



総評:
ソードアート・オンラインには優れたコンセプトと物語の導入があります。
プロットやペースの問題を抱えてもなお、本作は平均以上の面白さを比較的気軽に堪能でき、こういったエンターテイメント性の高さが人気に結びついたのではないでしょうか。また、2012年というこのタイミングで作られたことも作品の明暗を分けたと思います。

しかし結果的に1話を観た時の高い期待にその後応えることはできなかったようです。

原作の人気にも火がつきましたから、2期は間違いなく作られると思いますが、内容に悲観的になる必要はないと思います。アインクラッド編が特殊すぎただけです。

ところで、MMORPGはこのところ停滞期のようです。仮想世界にダイブするまでいかなくても、SAO並に自由度が与えられるゲームがあったら素晴らしいですね。
CUDA
CUDA
ストーリー
2.5
作画
4.0
キャラクター
3.0
音楽
5.0
オリジナリティ
3.5
演出
3.5
声優
3.5
4.5
満足度 3.0
いいね(1) 2012-12-23 10:27:52

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