ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

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王道のボーイミーツガール、健やかに躍動する身体

観賞手段:テレビ、動画サイト
「未来少年コナン」は「夏が来ると見たくなるアニメ」の上位に入る作品だろう。
最終戦争で文明が滅んだ世界。孤島「のこされ島」に祖父と二人きりで住む少年・コナンは、ある時追われて漂着した少女・ラナに出会う。ラナを追うのは、文明の残滓にすがる人々が厳しい階級制を敷く「インダストリア」の地で要職に就く男・レプカ。その目的は、ラナの祖父が研究する「太陽エネルギー」を手に入れて最終戦争の兵器を復活させることであった。そのためにラナはさらわれてしまうが、コナンは彼女を救出すべく、親友のジムシィとともにインダストリアへと向かうのだった。
本作の世界は文明が滅んだことで環境が回復しつつあり、のこされ島を始めとした自然は逞しく美しい。「未来少年コナン」と聞けば、紺碧の海を思い浮かべる人も多いはずだ。
そこで活躍するコナンやジムシィといった、最終戦争の後に生まれた子どもたちも、自然に負けず劣らず逞しい。飛行機の翼にしがみつき、少女を背負って高い塔の外壁を渡り、高い所から飛び降りても足が痺れるくらいで済み、よく走り、良く跳び、よく食べ、良く笑う、身も心も強い少年たちだ。インダストリアの連中が何をしても僕らのコナンなら切り抜けてくれる……という確信がありつつも、次々と降りかかってくるピンチにドキドキハラハラさせられる。こうした健康的な心地よさ、ある種夏的な雰囲気の源となっているのは躍動する肉体だ。コナンやジムシィは活き活きと動くが、それは動画枚数の多いというだけのことではない。動きにつれてデフォルメされる肉体は内心の必死さを表しており、視聴者は深く感情移入できる。もちろん、こんなことは誰にでもできることではない。本作の監督はジブリの宮崎駿氏、キャラクターデザインは「ルパン三世」などで知られる大塚康生氏。つまりはアニメ界のレジェンドたちだ。線の一本に動きと感情があるともいえる様は46年を経ても新鮮なものであり、現代のアニメには見られない熱さがある。中でも宮崎氏は本作が監督デビューであり、後の作品に繋がる様々なエレメントが散見されるのが興味深いところ。ジブリアニメに親しんでいる人ならこうした部分を探してみるのも楽しいだろう。
なんだか理屈めいたことを書いたが、本作はこうした文脈やら何やらを意識しなくても楽しめる娯楽作であることを強調したい。健やかな身体と心を持つ男の子が少女のために身体を張って活躍する王道のボーイミーツガールであり、理屈抜きに面白い作品である。見終える頃にはコナンのように駆け回りたくなること請け合いだ。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
5.0
作画
5.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2024-06-30 10:36:32

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