大賢者さんの評価レビュー

1,2期とくらべ3期は何となく様相が変わり、一話かられんちょんをメインとしてキャラクターの成長に焦点を当てた展開（それを強調したような演出）になっています。そうでない話もありますが。
そして今週の11話で、日常系アニメの頂点に君臨しうる、傑作であると感じました。

日常系アニメとは、初めは空気系と呼ばれていたように、日常の風景や生活の中の感動をキャラクターと共有するアニメなわけです。
のんのんびよりではその日常の中から子供（れんちょん）の成長という、人の生活の中で最も尊く儚いものをテーマとして選び、そしてそれを完璧に描き切っています。
（例えば、苺ましまろは可愛さ、けいおんは部活を通した青春、ひだまりは人間関係、ゆるキャンはキャンプそのもの、ヤマノススメは登山そのもの、だったりが伝えたい日常の中の感動なのだと思います）

子供の成長というものは、ゆるキャンのように延々とキャンプする話を描くのではなく、日常の一瞬一瞬の出来事として表現する必要があります。従って、親目線、兄弟目線、祖父母目線などの、子供と日常を共に暮らす者の目線になる必要があります。
そのためには、登場人物への愛着心と理解を持って、物語を見る必要があります。

1,2期では確かにれんちょんは話のドライバーではあったのですが、主人公と言えるほど目立ってはおらず小鞠等の他の登場人物にかなりスポットが当たっていました。
ただ、そのおかげで全てのキャラクターが肉付けされ、れんちょんを取り巻く環境や登場人物たちの心情を視聴者が十分理解できるようになり、感情移入するための土台となっています。

三期一話ではリコーダーを最終的に吹けるようになるまで田舎の寂しい道で一人で練習したり年上と練習したりするれんちょんの姿が描かれています。
この1話だけでも同級生のいない田舎特有の寂しい環境のなかで健気に頑張るれんちょんの成長に視聴者目線で感動することは出来るのですが、
最も分かりやすく視聴者に子供の成長そのものの感動を伝えるには、周辺にいる者の目線、特に親目線で説明するのが一番なわけです。
れんちょんの親は出てこないので、駄菓子屋か親代わりの姉を通して、となります。

11話は年下の面倒が見られるようになったれんちょんの姿を見る駄菓子屋からはじまっています。
その後年下の世話をするれんちょんの姿、赤ちゃんの頃かられんちょんを見てきた駄菓子屋の思い出、今も見本となるべき親のような立場でいようとしてしまう駄菓子屋、
そして最後に、酔い潰れる大人の駄菓子屋と、人を思いやって布団をかけられるようになったれんちょん、それ受けて涙する駄菓子屋、が出てきます。
これ以上ない形で、ストレートに親の立場での子供の成長に対する感動を、視聴者と共有することに成功していると思います。

さらに、その前には卒業シーズンに他のキャラクターを交えて子供達の成長を説明し、更に布団をかけられて駄菓子屋が涙を拭くまでの長い間を視聴者に与えることで、
れんちょんももっと成長していつかは大人になってしまうのだ、という寂しさも想起させるようになっているように思います。
こんな、子供が不幸になったりすることなく視聴者の涙を誘うことに成功しているアニメは他に見たことがありません。

最終話に同様の話を持ってくるのは野暮であり得ないと思うので、この話がのんのんびよりの到達点と言えます。
また、三期全体を通しても過去の話や、れんちょんがお姉さんとして頑張ったり、お友達とお別れするのを耐えたり、後輩先輩でコミュニケーションを取ったり、と子供の成長に焦点を当てたような話が多いです。
日常系アニメといっても具体的なテーマで作るものがほとんどである昨今、この様な普遍的なテーマを描ける作品は中々出ないでしょう。
過去の作品でいうとスケッチブックがかなり近いように思います。

伝えたいテーマが特に感じられないものは日常系アニメに分類するのは不適当で、面白いっぽいことを言うものはギャグアニメであり、テンプレートな萌えキャラデザの女の子が出てきて独自に作り上げた世界観でくっちゃべっているだけのものはファンタジー、であると思います。

話をのんのんびよりに戻して、もう一点評価できるのが、
11話だけではなく、間の使い方が非常に上手く、意味のある間が話の良いテンポや余韻、現実感を引き出しています。またその間が美しい田舎の風景であり、見ていて安らぎます。
こういう間で好きな作品といえばエヴァンゲリオンですが、新劇場版はこの間がなくなりエヴァの最大の良さをスポイルしてしまっています。
そういう意味でも、こういう間を大切にできるスタッフによって作られた貴重な作品であると思います。