YOU44さんの評価レビュー

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「なんだかなあ」と加藤は言う

観賞手段:ビデオ/DVD
大好きな『冴えカノ』の劇場版。
また会えるとは思わなかった。
前作『♭』のラストで加藤が
「おしまい」と口パクした瞬間、
甘酸っぱい想いが胸の中を流れた。
「ロス」とはこういうことか

加藤らしさが出ていたのは
「9月23日土曜日池袋で」と
倫也が言った後のセリフ。
「しーらないよ 倫也君
どうなっちゃっても しーらないよ」
この「しー」と伸ばすところが加藤っぽい。
風呂上がりかブラトップ姿がキュート。
翌日、あの「坂の上の格好」で倫也を待つ姿が
いじらしい。
その後急転直下するのだが
紅坂朱音の激情ぶりが伏線として効果的だった。
余談だが、森喜朗五輪委員長(辞任)の
「#わきまえない女」や
元安倍総理の「忖度」「ご飯論法」
菅首相の「論点すり替え」「説明責任放棄」など
対話が軽視される世知辛いご時世、
朱音の(相手を尊重し)本音で
激論する態度は心底尊く思える

内田樹は『街場の読書論』で
「僕は言いたいことがあるので書いているわけで
『止めろ』と言われても書きたいことは書く。
『お金をくれる』から書く、くれないなら書かない
という基準で書いているわけではない」
と書いている。
作品の質は売上数で決まる訳ではない。
倫也も他のみんなも本質は同じ
作品への熱い思い、作品愛がある。
だからいつも市場との兼ね合いに逡巡する。
「クリエイターとして市場とどう向き合うか」
それもこの作品の見どころだ。
「全力で走りながら待ちましょう」
詩羽が英梨々に言う。名言だ

「なんだかなあ」
「どうして私なのかなあ」
「ほんと敷居低いよね私」
と加藤は低温発言をする。
「普通だった。だからこそ私は 
彼がいいなって思った」
加藤が言う。
「俺にとってはそんなに敷居が高くなくて
もしかしたら 何とかなるんじゃないかって」
と倫也が言う。
「そんなこと言われて喜ぶ女の子
いると思っているのかなあ」
と加藤は嘆息するが
題名にある「冴えない」ことの親しみを
さり気なく語っている

「なにしろ恵って思ったより執念深い」
と英梨々が言う。
「黒くて強欲で面倒臭い嫌な女」と詩羽。
「元祖嫌な女のあんたが言うと
説得あるわね」(英梨々)
「彼女絶対に倫理君のこと
諦めたりしないわよ」(詩羽)
「そのくせなかなか本当の気持ち言わず
焦らしそうね」(英梨々)
「相手から告白されないと気がすまない
地雷女ね」(詩羽)
今回の加藤はちょっと面倒臭い役回り。
それを揶揄する2人の毒舌が
いかにもの愛情表現だ

倫也の家の前、怒った加藤は
倫也の手を振り払う。だけど二度目、
今度は意外なほどすんなり握り返す。
その前の駅での「恋人つなぎ」が
あったからこその名シーンだ。
3度する「やり直し」キスもいい

エピローグが凝っている。
青春もの金字塔作品は必ずもって
大人になった二人が描かれる。
映画『草原の輝き』しかり
漫画『シガテラ』しかり。
今作はそれが2段階である。
「私たちもう別れたほうがいいんじゃないかな」
と加藤が力なく言う。
社会人になった二人を見れるとは思わなかった。
加藤はOL風のお化粧。
同居しているらしく表札には
二人の名前がある。
伊織の「クズっぽさ」(自称)にびっくりする

「大好きだよ」
春奈るなの曲「glory days」が流れ出すと
胸がはち切れそうになる。
卒業式で加藤と英梨々が抱擁し合う。
ラスト「今度こそおしまい」の文字に
やっぱり甘酸っぱい想いが…
YOU44
YOU44
ストーリー
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作画
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キャラクター
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音楽
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オリジナリティ
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演出
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声優
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満足度 4.5
いいね(0) 2021-02-12 06:14:45

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