ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

»一覧へ

哀愁に満ちた、新たな「ジョジョ」

観賞手段:テレビ、動画サイト
イタリアのギャングが抗争する、原作第5部をアニメ化した作品。シリーズを通しての宿敵・DIOの息子であるジョルノはギャング組織に入り、有能なリーダーであるブチャラティのチームに所属。一癖も二癖もある仲間たちとともに、ボスの娘を護衛する任務を遂行していく。
本作に登場するのは敵も味方もギャングである。親から棄てられ、人を信じることを教えてくれたのがギャングだった。組織に忠誠を誓いつつ、その組織が許されぬ行いをしていることで葛藤し続ける。元は警察官だったが、自分の汚職が原因で相棒を死なせてしまい、闇に墜ちる。親と友達に裏切られ、孤独な身をギャングに寄せる。普段は知的だが感情の制御が効かず、人を傷つけてエリートの道から脱落した……と、どこかが壊れていたり、闇や空虚を抱えている者ばかりだ。そんなはぐれ者たちが、イタリアの明るい陽光と抜けるような青空のもとで、正義なき戦いを繰り広げるのが本作である。まっとうに生きられぬ者たちにも信念や意地があり、私闘という闇の中で煌めく。そこには哀愁を帯びたドラマがあり、この哀愁こそがこれまでの「ジョジョ」と本作の明確な違いだ。原作者である荒木飛呂彦氏は映画に関する著作があるほどの映画マニアだが、今回はギャング映画的なムードを少年マンガに持ち込んだわけで、そうした意味で氏の趣味性が全開しているのが第5部といえるだろう。ここに、超能力を守護霊的に表現したスタンドの奇想天外な能力が絡むのだから面白くならないわけがない。列車を舞台に、こちらを老化させてくるスタンド使いが無数の乗客の中に潜むプロシュート&ペッシ戦。飛行機という名の密室に「周囲で最も速く動くものに反応して襲いかかってくる」スタンドとともに閉じ込められ、逃げ出したいが速くは動けないノトーリアスB・I・G戦など、映画的なシチュエーションとスタンドのアイデアの融合に、荒木漫画ならではのオリジナリティがある。アニメ化も実に丁寧で、作画の美しさや動きの良さに加え、キャラクターを深彫りする沢山のオリジナルシーンに違和感がない。例を挙げていくと紙幅が足りないので割愛するが、視聴後に原作と比較しつつの再視聴をオススメしたい。リスペクトに溢れたアニメ化、と書くとありきたりだが、それ以外には表現のしようがないのが本作なのだ。
後期主題歌「裏切り者のレクイエム」は、原作後半のキーワードである「裏切り者」を軸に、1番で味方、2番で敵サイドの心情を歌うという、限りなく原作に寄り添った曲。名曲揃いの「ジョジョ」主題歌の中でも特に印象深い曲であり、ファンは必聴。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
5.0
作画
5.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2023-11-30 14:57:22

ログイン/会員登録をしてコメントしよう!