あえて『愛』に挑む勇気 #yamato2202
観賞手段:劇場
否定的感想が目立つ本作。確かに宇宙艦隊戦のダイナミズムを求めた層にとっては、波動砲やズォーダーから突き付けられる難問への葛藤にひたすら苦しむ古代の姿は余計なものに思えるだろう。
だが、本作の肝はその悩み苦しむ古代の姿を描き抜く事そのものであり、決して大海戦の前菜ではなくこれこそがメインディッシュなのだ。
波動砲は波動エネルギーを動力とする波動エンジンの技術から容易に転換できた超兵器であり、それはかつてイスカンダルの自滅を引き起こした禁忌の技術。間違いなくそれは核エネルギーの比喩であり、それが太平洋戦争にちなむヤマトにそれが搭載されている事、決して無関係では無い。意図せず禁忌の超兵器を持ってしまった日本人として、古代進はどういう選択をするのか。
まして、古代が親ほどに慕う沖田十三がスターシャに約束したのだ。もう波動砲は使わないと。この約束、古代にとって何よりも重いのは当然だ。
だが、現実に、波動砲無くして愛する者達を守り抜けるのか。他者の愛を踏み躙らずに自分の愛を守れるものなのか。波動砲をめぐる葛藤は本作が挑む『愛』に直結する命題である。
旧作の時代は『愛』はロマンだった。自己犠牲と言う形で『愛』を描き、シンプルながら理解しやすい感動を生む事が出来た。
だが、もう『愛』が綺麗事だけの時代ではない。『正義』が千差万別であるように、もはや『愛』も清濁様々な価値観であり、幸福だけをもたらすものではない。
本作はもう旧作のリメイクではなく、今の時代における『愛』の価値を問い直す新たな物語である。
ロマンの再現を求めて御不満だった方々は、今回を機に去られると良いだろう。この第3章は明らかにふるいに掛けてきたスタッフの挑戦状だ。
私は最後まで見届ける。
- ストーリー
- 4.5
- 作画
- 4.0
- キャラクター
- 4.5
- 音楽
- 5.0
- オリジナリティ
- 5.0
- 演出
- 4.5
- 声優
- 5.0
- 歌
- 4.0
満足度
4.5
いいね(0)
2017-10-24 21:35:02