げんしゅう京都さんの評価レビュー

ヴァイオレットが知りたかったのは少佐の残した「愛している」の意味だったが、人の心を覗き手紙を書く技術を身につけてから、彼女の内面では感情が生まれ、他人の感情に同調し感動や悲しみ、そして楽しさと不安を無意識のうちに自分の中に育めるようになった。
一見すると成長ストーリーに思えるが、実際には純愛を確認するための旅ものと考えた方が理解しやすいと思う。
人間なのに人形と呼ばれるのを比喩と取るか暗示と思うか、ヴァイオレットの心の変化を見続けないと見極めは難しいが、理屈抜きに彼女が悲しみを露わにできるようになってから、人間として愛を受け止める為の訓練こそが代筆の仕事であり、おそらく彼女が人を殺すためだけに育てられた環境への暗喩だ。それでも彼女は人間に戻り、心の成長にもがき、人に触れ旅を続け愛の真実に向かっている。素晴らしい脚本と評価したい。