名無しのレビャートキンさんの評価レビュー

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結晶は勇気と高潔、流体は試練と禁忌

観賞手段:テレビ
ネタバレ
美しい作品である。耽美的、という言葉が似合うかもしれない。エンターテインメントとしてのうまさとともに、象徴的な表現が、たくみに用いられているからである。代表的なモチーフである、結晶と流体の表現について見ていく。
 宝石たちは、永遠の生を生きるにもかかわらず、むしろそれゆえに、誠実に、真摯に生きようとする。月人という脅威と、永久に対峙し続けねばならないからである。ゆえに彼らは、強く、脆く、高潔で、美しい。
 宝石たちと対照的な存在がある。月人ではない。流体である。この作品において、実は要所で流体が登場する。流体は、勇気と高潔を象徴する美しい結晶たちに、試練を与える、禁忌の存在である。
 作品冒頭で、早速登場する。シンシャが生み出す「水銀」である。毒液は彼を他者から遠ざけ、夜の世界に閉じ込めた。彼自身の存在が負った試練であり、他者が彼に触れることを阻む禁忌である。聡明な彼は必死に、試練と対峙し、自らの存在意義を見出そうとあがく。
 水銀という試練を負った彼との出会いが、フォスフォフィライトの試練の始まりである。シンシャのために、自身の存在を肯定できるような仕事を見つけようと、フォスの奮闘が始まる。
 続いてフォスを待ち受ける試練は、「海」である。ウェントリコススに欺かれ、海底に導かれたフォスは、世界の真実の一端を知るとともに、両脚という彼の存在の一部を失う。ちなみに、ウェントリコススやアクレアツスに表される「肉」は、人間の快楽を象徴するのかもしれない。
 三つ目の試練は、「アンタークチサイト」との出会いである。彼もシンシャと同じく、流体の試練を負った身である。その凝固点の高さは、他の宝石と交わることを許さず、彼を冬の孤独に閉じ込めた。流体の試練と闘う彼の勇気は、フォスを感化していく。やがてフォスは、自らの不甲斐なさに苛立ち、流氷の「海」(再び流体)の誘惑に負け、両腕を奪われる。
 四つ目の試練は、「合金」である。腕を失ったフォスは、目の前で自らを導いてくれたアンタークを奪われる。アンタークを救おうとしたフォスを妨げたのが、自らの新しい腕となったところの、流体化した合金である。
 シンシャやアンタークと同じく、自らの体に流体の試練を宿したフォスは、その力に体を蝕まれながら、より真摯に、切実に、勇気と高潔を求めて、生きていく。
 結晶は勇気と高潔を象徴し、流体は立ちはだかる試練と禁忌を表す。もしこの解釈が正しければ、月人の存在についても解釈が変わるかもしれない。月人は、宝石たちにとっての内的成長を促す試練ではなく、もっと異質なものだろう。煩悩や欲望などの、人間の負の側面を象徴する何かではないだろうか。
名無しのレビャートキン
名無しのレビャートキン
ストーリー
5.0
作画
5.0
キャラクター
5.0
音楽
4.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
4.0
満足度 5.0
いいね(1) 2017-12-17 13:15:14

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