淡々と階層都市を探索する霧亥の生き様を透徹した視線で限りなくドライに描いていた原作とは異なり、劇場版は非常にウェットで生々しい生活感を感じさせる作品です。
一秒前まで無邪気にはしゃいでいた人物が次の瞬間には骸になっているような無常感は消え、人々の感情のうねりのようなものが描かれていて、原作しかアタマにない人間からすると強烈な違和感を覚えます。
恐らく、シドニア経由のドラマチック要素を求める(であろう)ユーザーを意識したアレンジだったのでしょうが、原作を期待していた人間には悪い意味での肩すかしでした。
良く言えば、階層都市の人々をリアルに丹念に描いているのですが、悪く言えば霧亥の活躍を大幅に削っています。
ただ、オリジナル展開が悪いというわけではなく、サナカンが登場する後半以降の怒涛の展開は、カッチョいいBGMも相まって非常にサスペンスフルでイケてます。
最近ありがちな、スタッフロール後に思わせぶりなエピローグを持ってくることもなく、原作っぽいザクっとした結末にしているのは好感がもてました。
せっかく作画が激ハイクオリティなので、珪素生物やドモチェフスキーとのバトルをゴリゴリと描いた続編を作って欲しいですね。