重厚な楽曲に彩られた最も美しき悲劇
観賞手段:テレビ、ビデオ/DVD
親と子の愛憎、真意を知らず起こしてしまう凶行、怨恨が重ねる復讐劇、となると今川作品の定番的モチーフ。純粋なる野心に駆られた悪役達よりも、互いに背負う愛が深きゆえに狂ってしまった者達が織りなす悲劇として、本作ほど重厚かつ華麗な美しさを持つ作品は例を見ない。
田中公平氏による重厚かつ叙情感あふれる劇伴、そして魔曲の数々。
麦人氏の荘厳たるナレーション、松山鷹志、梁田清之、石塚運昇、西村知道、真殿光昭、島本須美、千葉繁達、実力派揃いの豪華キャスト。
動かす対象を演出として厳選し、終始崩れぬ作画を維持しつつここぞと言う所に集中した動静のメリハリを効かせた映像。
熾烈な設定から目を背けること無く、残酷さ厳しさから逃げずに堂々と正面から描き切った物語。
本作は4クール想定での構成で製作を始めたが、確保できた放送枠が2クール分だった為に物語は短縮されたという経緯があるが、この結末だからこそこの感動があり、ある意味物語自体がこの結末を選択したのではないか、とも思えるほどである。
復讐鬼と化してしたスラー国王が人間の心を取り戻した直後の末路、遂に明かされるケストラーとパンドラの物語、因果応報のたる超獣王の末路、大魔王再誕、王子復活、そして、世界を救うたった一人の女の子が長い旅路の果てにようやく想い人をその手の中に収める物語。砂上の楼閣が崩れるときは一気に崩れるかのごとく、ラスト3回で一気に畳まれてしまう寂寥感。
「復讐……それさえもわたしには残されてはいない……さて、何処へ行く……?」
緒方恵美演ずる妖鳳王サイザーのこの演技の見事さは例えようがない。
悲劇であるだけの作品は山ほどある。しかし、物語が悲劇として幕を閉じるだけの説得力を持つ作品となると厳選される。まして、悲劇であることにより美しさが提示され感動を引き起こす物語となると、そんな物語との邂逅は至高である。本作はその域に値するだけの作品である。
- ストーリー
- 5.0
- 作画
- 5.0
- キャラクター
- 5.0
- 音楽
- 5.0
- オリジナリティ
- 5.0
- 演出
- 5.0
- 声優
- 5.0
- 歌
- 5.0
満足度
5.0
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2016-07-18 21:44:25