にゅまさんさんの評価レビュー

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歴史の中の超人達と正義 #コンレボ

観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル、試写会、動画サイト
脚本家:會川昇が長年温めてきた、ありとあらゆるヒーロー・ヒロインが共存する社会における仮想の年号「神化」の時代を舞台とした、ある意味「仮想歴史モノ」と言っても差し支えない野心作。
 時代背景には昭和史の実在事件,事象,文化,流行をモチーフとした出来事が、神化にふさわしく超人達に関わる様に散りばめられ、また超人達のモチーフに関わる既存作品内での出来事も取り込まれており、当然それらを知っていれば作中に込められた意図をより深く理解する事もできるが、しかしそれに頼った作りはしていない。「分り難い」と言う声もあるが、わかる為に必要な情報は画面内に有り、観る上での集中力の問題にすぎない。
 そのような舞台を用意して、描くのは超人達を取り巻く時代の変遷と、その中で揺れ動く「正義とは何か?」と言う命題。まるでTVアニメと言う形で記される「論文」ではないかと思う。
 そんな原作の映像化の為に會川氏が組んだのは、互いをよく知る監督:水島精二。「鋼の錬金術師」「UN-GO」「大江戸ロケット」に引き続いての勝手知ったるコンビである。

 超人の括りの中には、超能力者,異星人,ロボット,魔法使い,妖怪,オバケ,未来人,改造人間,獣人,忍者,マッドサイエンティスト等など扱う範囲は広く、ミュージシャンやスポーツ選手(小説版情報)等の当時の子供達から憧れられた存在は皆超人として扱っている。果てには「不老不死の7人家族」すら見事に超人として描かれていた。
 戦後世代が時代の中心に出て来る昭和40年代の時流をモチーフに、更に世界大戦で両陣営とも戦争への超人利用を行ってきた過去を背負い、超人としていかに生きていくべきなのか各々が迷い悩みながら選択していく一方で、超人達をどう扱うかという国家権力などの各陣営の思惑と圧力、様々な情報によって揺れ動く民意、そんな混沌の中で超人としての理想を貫こうとする主人公:人吉爾朗の生き様を、彼と対峙する者はその理想は幻想にすぎないと言い放つ。それ故に副題は「超人幻想」なのだ。

 作品の特色として1話内で複数時間軸のエピソードを切り替えながらの展開があるが、これによってその回のメインであるゲスト超人にまつわる話を1話内で完結させつつ、時間軸によって変わっているレギュラーキャラの変化を描き、その変化の原因への疑問と興味を誘導する事で、1話完結のスタイルでありながら全体を包括する流れとテーマの存在を意識させることに成功している。毎回様々な超人をメインゲストに迎えるバラエティな構成でありながら、全体を貫く太い幹がある本作には実にふさわしい。
 この第1期では、超人を人知れず保護する為の国歌組織:超人課に所属の爾朗が、神化46年には既に超人課と袂を分かち活動している事が第1話で示され、その前後での爾朗の動きを描きながら、離脱の原因となる事件をクライマックスとした。13回をどの様に使いながら語っていくか、非常によく練られた構成である。そして第2期への期待がますます高まる。
にゅまさん
にゅまさん
ストーリー
5.0
作画
4.5
キャラクター
5.0
音楽
4.5
オリジナリティ
5.0
演出
4.5
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2015-12-31 06:25:21

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