CUDAさんの評価レビュー

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心の「温度差」を多層的に描いた作品

観賞手段:CS/BS/ケーブル
ネタバレ
何かに物凄く熱中している人もいれば、冷めている人もいるし、気にも留めない人もいる。「響け!ユーフォニアム」は当然のように存在する『人の心の温度のコントラスト』が終始はっきりと見られる稀有な作品だと思います。

本作のストーリーの柱は大昔からある王道の部活モノです。弱小の部が突然やってきた教師による改革でメキメキと力をつけて強くなっていく。

しかし、一線を画する要素が多層的に構築されていることで、物語全体の面白さを一段階上に引き上げられています。
細かく見ていくときりがないので2つに絞りますが、
1. 一面的ではない複雑なキャラクターの性格付け
2. 「敗者・持たざる者」が残酷なまでに描かれ、その中に美学が見出されていること

先述の「温度差」の描かれ方と相まって、物語もキャラクターもステレオタイプになっていないのが良いかと思います。

演出ですが、突き抜けて良い回も結構あれば、そうでもない回もあるので少しマイナスです。前半の方は演出が回毎に若干ブレていたように思いました。
ガチャガチャの景品や飲み物をメタファーとして使っていたりする部分は面白いと思います。あと、ずっと前の回の台詞とかが後の回に効いてきたりというのもありましたね。


映像面ですが、なぜ昔から人気のある部活なのに、吹奏楽部を舞台としたアニメがこれまでほとんどなかったのか、その理由は本作を見れば明らかだと思います。

わけがわからないほど複雑な金管楽器や木管楽器は静止画を1枚描くのですら難しそうで、それをアニメーションにする作業量の膨大さはもちろん、楽器の正しい扱い方や音にあわせた作画、大きさ、金属光沢の再現、さらに吹奏楽部が舞台になっているので多種多様な楽器がひとつの画面に存在する。その上に部を構成する大勢のキャラクター。
毎回楽器が登場するわけですから、考えただけで嫌になりそうですが、最終話の演奏シーンで燦然と輝く楽器のかっこよさは無類のものではないかと思いました。12話の練習シーンだけでも結構迫力あるのに、13話でアレがくるのかよ・・・と。

オープニングの序盤では背景にCGの楽器が登場してるので楽器を3DCGにすることは可能なんでしょうが、それだと手に持たせた時に2Dのキャラクターや背景と馴染まないんでしょうね。

他に映像的な所では、何気ないシーンをかっこよく、あるいは魅力的に見せていく手法や、独特な緊張感を生み出すテンポと画作りが色々あって見飽きなかったですね。


最終話では、練習してきた課題曲と自由曲が演奏されるわけですが、回想シーンがなくても曲を聞けば、そういえばこの部分はあのキャラが苦戦してたなとか、ここは練習してるシーンあったなとか色々思い出されるわけです。
指揮によって別々の音が重なりあって曲が完成されるように、最終話はエンディングも含めて、1話から12話が積み重なることで特別なものになっているというのを音楽を通じて感じられるのは印象的でした。


そして絶対に言及しなければならないのは声優陣の名演でしょうか。
特に、久美子役の黒沢ともよさんはよくこんな難しいキャラクターをここまで演じられるなあと驚きました。印象的な言い回しがたくさんありました。

それにしても、テレビ付属のスピーカーとサラウンドスピーカーやヘッドフォンで演奏の音の厚みが違いすぎて、改めて音響って大事だなと思わされます。

ホールなのか、音楽室なのか、教室なのか、外なのか。その演奏は上手いのか微妙なのか下手なのか。細かなことが加味された音が作りこまれていて並々ならぬこだわりを感じました。
ほんのわずかなシーンで、トランペットの音が鳴る中で上空を飛んでいる飛行機の音もわかるかわからない程度の音量で聞こえた時はそこまでやるのかよと思いました。

目標に対して本気になるということをフィクションの中で表現し、わざとらしく思われないように視聴者に伝えるというは難しいことだと思います。
この作品は、キャラクターの心の温度差を巧みに描いていくことでそれをやってのけています。
アニメーションとしての「総合評価」としては4.5点。個人的な「満足度」というものさしでは5.0点をつけさせていただきました。

追伸:
8話で二重奏アレンジで流れた奥華子さんの「愛を見つけた場所」の原曲は絶対に聞いたほうが良いです。
CUDA
CUDA
ストーリー
4.5
作画
5.0
キャラクター
4.5
音楽
5.0
オリジナリティ
4.5
演出
4.5
声優
5.0
4.5
満足度 5.0
いいね(2) 2015-07-08 00:57:03

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