あいたさんの評価レビュー

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京アニ作品の中でもアタマ一つ飛び抜けている

観賞手段:テレビ、動画サイト
ネタバレ
特に11話が素晴らしい。人間が描かれている。

どんなアニメ作品にも言えることだが、視聴者がどれだけ感情移入できるかが一つのポイントだと言える。

この作品では吹奏楽に関する徹底したリアリティを追及している。さらに今回は京アニお膝元の京都府(宇治市)が舞台。

けいおんの時は、京都に実在する十字屋(楽器屋)が登場するが、設定としては京都ではない。(修学旅行シーンは京都であったが。)

さて、この作品が特に優れているところは二つある。

一つ目。生徒たちのやり取り。特に女の子同士のそれは、リアリティがある。たとえば、最終話クミコとレイナの電車での無言で無意味な「肘つつき合い」シーン。あーいうわけのわからないやりとりが省かれないところが京アニの良いところ。意味のあるやりとりばかりを描いてしまうと、見ているものは疲れてしまう。逆に人物がしっかりと描かれていないと、何のために挿入されたシーンかも謎になってしまう。

当初はレイナを恐れてばかりいたクミコが、あーいうやりとりが自然にできるようになるほど、レイナの心に近づけた証し。それがあのシーンだと推察できる。

二つ目。11話で顧問の滝が、トランペットソロ奏者を生徒たち自身に選ばせる。「拍手の多いほうに決める」という。そんなあやふやな!しかし、その真意は、それこそが選ばれる本人たちが納得のいく方法であったということ。

ソロ部分が流れるが、視聴者もまた部員のひとりになってどちらがふさわしいかを聞き分ける緊張感があった。さらに、明らかにうまい下手というよりも、しっかりと耳を傾ければ、やはり巧拙の差がわかるという演奏をしっかり流してくれた。近年の作品「のだめカンタービレ」や「四月は君の嘘」という作品の中の音楽の描き方は、今演奏されている演奏の良しあしは誰が聞いてもわかる描写だった。

しかし、この作品の11話は違う。しっかりと耳を傾けてやっと「やっぱりレイナの方が良い」と納得できるという差なのである。

多くの生徒たちは、どちらが良いかなんてわかっているけど、良い方だけに拍手なんてできない。ここらへんもリアリティがある。彼らは高校生なのだ。

最後に、顧問の滝がカオリに問う。「ソロを吹いたほうがいいのはどちらだと思うか」と。カオリは、トランペットが好きだからこそ、答える。「レイナさんだと思います。」彼女のまっすぐさが最も気高く現れるシーンである。

この作品で、京アニは高校生を等身大で描きながらも、彼らの中にある純粋さや誇りをちゃんと描いている。平たく言えば、彼らの世代の未熟さと純粋さの両方を作品で表現しきっている。なめきったり、ただの回顧主義に陥っていない。彼らを愛している。

だからこそ、僕もまたこの作品を愛している。
あいた
あいた
ストーリー
4.5
作画
5.0
キャラクター
4.5
音楽
4.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
4.5
3.0
満足度 5.0
いいね(2) 2015-07-08 00:16:04

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