天使のたまご

水没した伝説の都市で、たまごを抱く少女がいた――。ひとり街を歩き、水を容れるガラスの瓶を集め続ける少女の日々。 　ある日、奇怪な戦車の列が街を通り、巨大な銃を抱えた少年が、少女の前に降り立った。何故か自分の後をついてくる少年に、少女は何度も問いかける。「あなたは、だれ？」その問いに応えが返ってくることはなかったが、少女は少年に少しずつ心を開くようになる。そして、少年を自分の住処へと導いて、これまで集めた膨大な数のガラス瓶や巨大な「鳥」の化石を見せるのだった。少女は、自分が抱いているたまごが、その化石となった「鳥」のもので、温め続けていればいつか「鳥」が孵るのだと信じていた。 　その夜、少女がひとり眠りにつくと、少年は彼女のたまごを取り上げ、銃を振り下ろす……。