CUDAさんの評価レビュー

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趣旨なんてない。

観賞手段:テレビ、動画サイト
タイトルが思い浮かばなかったのでアニメのミニコーナーに出てくるフレーズから引用です。


長文の前にレビューの結論を簡潔に述べておきます。

日常の奇想天外なキャラクターたちによる予測不能なギャグとその不条理さが面白かった。
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日常の各エピソードは様々な方向からアプローチしています。
ドタバタ劇、シュールなもの、古典的なギャグ、ラブコメディ、クレイジーなもの、和むもの、予期せぬ心温まるもの、教訓となりそうなものまで・・・
ほとんどはショートエピソードで、何の前触れもなくやってきます。
初見だと次に何が起こるか予想できないという面白さもあります。
中には「これ笑うとこ?」と疑問に思うような場面もあります。
メインキャラクターが全く出てこないショートエピソードもあります。

タイトルの「日常」を"Daily Life"のことだと捉えてしまいがちですが、英語版では「My Ordinary Life」と訳されています。"My"という代名詞がついているところが重要ですね。


日常には全体の流れこそありますが、柱となるストーリーはないに等しいです。
コメディとして見るならみお・ゆっこ・麻衣を中心とした時定高校編の方が面白かったです。
後半には時定高校編の3人、東雲研究所編の3人が出会い、全く違う毛色だった両者が融合して興味深い展開となります。(麻衣がはかせと仲良くしようと思ったり)

個人的にはヒトコトワドコトバも結構好きでした・・・。

このアニメはあれこれ考えるよりも、感性で受け止めて面白かったら面白い、面白くなかったら面白くないで良いと思います。
全26話の中に様々な登場人物の短いエピソードがそれぞれ異なるアプローチでいくつも盛り込まれているので、人によってお気に入りの話は変わってくることでしょう。人気のエピソードももちろんありますが。

細かなエピソードが部分的に重なりあって別の話を面白くすることもあります。


ビジュアルに関する一番の注目点は絵のタッチです。これまでの京都アニメーション作品とは大分違う、この後の氷菓や中二病とも違うアートスタイル。キャラデザも線も色彩も撮影も。
もしどこがアニメを制作したのか明かされていなければわからないくらいです。(キャストでわかってしまいそうですが)
氷菓と同じく西屋太志さんがキャラクターデザインを担当していますが、この作品では原作漫画に近いように作ることが心がけられているのだと思います。キャラクターの動かし方もそうです。

内容とは対照的にカラフルなのにどこか控えめで穏やかな色彩をしており、シンプルで素朴な印象を受けますが、火がつくと爆発するがごとく激しく流動的に動きまくります。圧巻です。その演出方法も。
こういった素朴なデザイン・色彩だからこそできる、線を利用した大胆な演出も見られます。
こういったビジュアルとストーリーだからかも知れませんが、NHK Eテレでまさかの再編集放送がありましたね、しかも夕方に。
とはいえ、改めて観ると丁寧に描かれているのを実感します。色彩や背景、キャラクターの動きも含めて。

ところで原作のキャラクターデザインを初めて見た時、あずまんが大王っぽいと思いました。何か影響されてるんでしょうか?
メインキャラクターは丸っこく可愛らしいキャラクターデザインですが、"萌え"をプッシュするキャラデザとは少し違うように感じます。角川書店がどういった戦略を考えていたのかはわかりませんが。

キャラクターの個々の魅力というよりも、各キャラクターが作用しあう部分に魅力がある気がします。どのキャラを語るにしても、他のキャラなしでは語れません。

興味深いのが「はかせ」と「なの」の関係でしょうか。ロボットのなのは、はかせに背中のネジを取ってもらって普通の人間のようになりたいと思っています。しかし、なのが頼んでもはかせはネジを取ってくれません。学校に行くことは許してくれました。天才の気まぐれなのか、それとも何か思うところがあるのか、ネジが必要なのか・・・。
そもそもはかせはいったい何者なのか。このアニメでこのことを考えても仕方なさそうです。


本作では声優陣の奮闘も注目に値します。
特に相生祐子役の本多真梨子さん、長野原みお役の相沢舞さん、高崎先生役の稲田徹さんの演技が輝いています。
本多さんの演じるゆっこには何度も笑わせていただきました。
また、はかせ役の今野宏美さんの大量のアドリブも違和感がなさすぎて凄かったです。
銀河万丈さんや皆口裕子さんといったベテランのナレーションには空気が変わるような素晴らしい説得力があります。もちろん校長役のチョーさんも!

また、音楽に関しては、劇伴の制作に「耳をすませば」などでも知られる野見祐二さんが参加されており、ハンガリーで収録したというオーケストラ曲がコミカルに各シーンを演出しています。台詞が全くないトランプのシーンでは昔の某世界的アニメを髣髴とさせる音楽による表現も楽しめます。ただし、全体的に見るとBGMの印象というものはそこまで強くはないかもしれません。それと、やたらと優雅な曲が多い。


本作に欠点があるとすれば、笑いの方向性が各エピソードごとにまるで違うため、面白いと感じるものとそうでないものの落差が激しいということと、可愛らしいキャラクターデザインは人によっては純粋なギャグ楽しむことを阻害する可能性を孕んでいることでしょうか。また、ヘルベチカスタンダードなどのショートエピソードやミニコーナーは万人向けでないかもしれません。


この作品のあるべき姿で彼女たちの"日常"が描かれ、そこには映像演出の創造力も加わり、さらには声優陣の素晴らしい演技もあり、「日常」を大いに楽しみました


正直、もし2011年の放送後にレビューを書いていたら3.5くらいにしていたかもしれません。アニメ日常の映像や演出にほとんど目が行ってなかったです。それと本作の放送時期のこともあります。再視聴したのは正解でした
CUDA
CUDA
ストーリー
3.5
作画
4.5
キャラクター
4.0
音楽
3.5
オリジナリティ
3.5
演出
4.5
声優
5.0
4.0
満足度 4.5
いいね(1) 2013-02-26 04:09:20

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