時代は24世紀、ARIAの舞台となるのはテラフォーミングされた火星、通称「アクア」
アクアには「ネオ・ヴェネツィア」という観光都市があり、この街はイタリアのヴェネツィアを模しており(地球から持ってきた建造物もある)、そこではウンディーネと呼ばれる女性の船頭(水先案内人)が観光案内を兼ねてゴンドラの運航を行っています。
現代でもヴェネツィアにはゴンドリエーレという船頭が存在していますが、ゴンドリエーレは男性のイメージが強いです。(2010年まで女性の船頭はいなかったそうです)
主人公・水無灯里は一人前のウンディーネになるために地球からアクアのネオ・ヴェネツィアにやってきます。
ストーリー:
ヴェネツィアにおけるゴンドラの船頭は伝統ある職業ですが、本作でもネオ・ヴェネツィアの街に根付いた職業として、熟練することの難しさやウンディーネと街と人々との関わり方が描かれています。
日本人の入植地が近いことでネオ・ヴェネツィアに日本の文化が少し混ざっていたり、ウンディーネの会社の社長が猫だったり(それにも理由があったり)、面白い設定があります。
ARIA The Animationでは街の人々との出会いと、灯里がネオ・ヴェネツィアの街を知っていく過程がゆっくりと、時にコミカルに、時に可愛らしく、非常にリラックスした雰囲気の中で描かれています。
これは一般的な「癒し系」のアニメのイメージとは一線を画しています。その理由はキャラクターの項目に書きます。
時間経過はありますが、各エピソードは挿話的になっています。ですので、その回の展開が次の回にも続くというようなことはほとんどありません。
ARIA The Animationのプロットはまるで視聴者にネオ・ヴェネツィアの観光案内をしてくれているかのようです。尚且つ、キャラクターの紹介も兼ねています。
映像:
ARIA The Animationが2005年の深夜アニメであることを考えれば、当時としては平均以上のクオリティだったかと思います。
ネオ・ヴェネツィアの街がとても美しく描かれていますし、特に水面に映る建物が印象的です。
素朴で可愛らしいキャラクターデザインは多くの人が受け入れやすいかと思います。
とはいえ、さすがに2014年のアニメと比べると古さはあります。
音楽・効果音・歌:
ARIAはサウンドトラックもサウンドエフェクトも最高水準です。
アコースティックな楽曲が多く、作品の雰囲気に適していますし、キャラクターの台詞を全く邪魔していません。
波の音やゴンドラを漕ぐ時の音、街の喧騒、風の音、コミカルな演出をする時の音など、効果音が非常に良く作られているのがわかります。特に水の音は本当に印象的でした。
オープニングは多くのアニメと異なり、オープニング映像が存在しません。
アバンの途中からそのまま牧野由依さんが歌うオープニングテーマの「ウンディーネ」が自然と流れてきてスタッフクレジットが表示されます。
これが本当に素晴らしく、一瞬でARIAの世界へ引き込んでくれます。
キャラクター:
キャラクターは本作の最大の強みといっても過言ではありません。
漫画やアニメらしくデフォルメされつつも、極めて説得力のある心情描写と性格付けがされています。
コミカルなシーンでは時々SDキャラ化して楽しませてくれます。
真面目な部分とコミカルな部分の両方と、キャラクターの個性と目的意識と成長が丁寧に描かれることで、本作は単なる癒し系作品以上のものになっています。
猫のアリア社長は本作においては抜きん出て漫画チックなキャラクターで面白いです。
声優:
ほんわかした声の人が集まってます。
灯里役の葉月絵理乃さんの演技は灯里の可愛らしさとちょっとしたアホっぽさの魅力を存分に引き出していますし、広橋涼さんの声と演技はアリスのユニークな性格にぴったりです。大原さやかさんほどアリシアというキャラクターに適した方はいないことでしょう。
皆さん素晴らしいの一言。何もいうことはありません。
総評:
ゆったりとした作品のストーリーとキャラクターの声と性格、心地よい水の音などが相まって、エピソードによっては夜静かに視聴していると、寝てしまいそうになるくらいリラックスできます。信じられないほどピュアで穏やかで楽しくて心温まるアニメです。
もちろん、アクションモノやシリアスなストーリーを求める人には向きませんし、最近のようにTwitterで実況して感想を共有しながら見るタイプのアニメでもありません。「萌え」とも違います。
できればじっくりと腰を下ろして作品の世界観に浸ることができる時に観るのをおすすめします。
そして少しでも気に入ったのなら、The Natural, The Originationと進むことを強く奨めます。