世界中のアニメファンのみならず、映画ファンからも高い注目を集める新鋭・吉浦康裕監督待望の初長編アニメーション『サカサマのパテマ』に、声優界からも人気実力派キャスト陣が集結! 吉浦監督に続き、主人公であるパテマとエイジを演じた声優の藤井ゆきよさんと岡本信彦さんにも、“吉浦ワールド”についてたっぷりと語っていただきました。
岡本信彦さん(以下・岡):漠然と“サカサマの女の子”というイメージが浮かび、ここからどうやってストーリーが展開するのだろう、この2人に未来はあるのかなとか、いろいろなことを考えながら読み始めましたね。すると物語の中盤から、僕の考えていた『サカサマのパテマ』像と全く違うところにいって、こんな秘密があったのかと、その後はとにかく驚きの連続。その驚きがとにかく面白かったんです。僕、実生活で生きていて驚きが少ない人間なんですよ。何でも受け止めちゃう“イエスマン”なタイプなので(笑)。この前、東京の川でヘビが泳いでいるのを見たんですけど、それも『ふーん』で終わっちゃう。『ま、そういうこともあるよね』って、たいがいのことは受け入れちゃう。そんな僕でも『サカサマのパテマ』の展開には驚くのだから、普通の人はもっと驚くんじゃないかなと思います。
藤井ゆきよさん(以下・藤):そういうところ、エイジくんに似てますね。エイジもサカサマということに抵抗せず、パテマをすっと受け入れる。
岡:確かにそうかも。
藤:私は、最初のオーディションの時に監督と一緒に読み合わせをして、その時にいろいろと説明してもらったんです。物語を聞いたらすごく面白くて、「次どうなっちゃうんですか!?」って監督に質問攻めしてしまいました(笑)。最初お客さんとして物語を楽しんじゃった感じです。ここに音が付いたらどれだけ素晴らしい映画になるんだろうと、すごくドキドキしていたのを覚えています。
岡:雰囲気って言ってましたね。エイジは男らしいところもあってヒーロー気質な男の子だけれど、自分をあまり出さない少年。初々しいナチュラルさも併せもっている。これまで声優としてデフォルメを使う仕事もいっぱいやってきて、今回は一度デフォルメを忘れようとアタックした作品。そこが作品の世界観と一致したのはうれしかったです。アプローチの方法として間違ってなかったんだなって。その空気感を作れたのは藤井さんの頑張りも大きくて、パテマが本当にナチュラルで真っ直ぐな現場を作ってくれたんですよ。
藤:私は声優事務所に入ってまだ1年目だったので、真っ直ぐぶつかるしかなかったんです。それが監督の求めていたパテマ像に近く、私のつたなさや一生懸命さがパテマにたまたま合致してくれた感じなのでラッキーでした。今オーディション受けたら、もしかしたらほかの人になってるかも(笑)。でも、私はただ台本から受けた印象そのままに演じただけで、初々しさとかは特に意識してなかったんです。変な思惑はなく、とにかくがむしゃらにやっただけで。
岡:そのがむしゃらさが、結果ナチュラルに結びついたのかもね。若手の僕がこんなことを言うのもなんだけど、デフォルメを突き詰めていくと、声がよれてないか、音は大丈夫かという確認作業になってくる。でも、普通にしゃべっていれば声がよれよれの時もあるし、あまり考えすぎずに感情を優先してやるとナチュラルになるのかなと思いましたね。
藤:私はシンプルに感情しか優先してませんでした(笑)。
藤:私はとにかく台本から受けた印象そのままに。吉浦監督の脚本のト書きはとても丁寧ですし、特にデフォルメする必要もなく、感じたままに演じればパテマになれちゃう。それくらい面白い脚本でした。
岡:今回の場合は、やってみた結果こういうキャラクターになった感じかな。映画を見終わった後に、「こういうキャラクターだったんだなあ」って客観的に感じています。
藤:“空に落ちていく”という感覚がどれくらい怖いものかは、演じる側の想像で補わなければいけないので…。全然役に立たなかったんですけれど、家で逆立ちしてみたり…(笑)。
岡:それ、頭に血が上っちゃう(笑)。
藤:ははは。収録当日はすごく快晴で、吸い込まれちゃうくらいの青空だったのでずっと空を見上げていました。アフレコの時に見せてもらった空の映像はとても美しかったのですが、パテマにとってはそれはとても恐ろしいものに描かれていて。絵に助けられた部分は大きいですね。足場がないってどんな感じだろう、エイジにつかまらなくちゃ移動できないってどんな感じだろうって、絵を見たらどんどん想像がふくらみました。
岡:エイジは、パテマを通じで恐怖を感じていく。だから最初はワケのわからない怖さでしたね。感覚的に似ているのは、バンジージャンプの経験かなと。バンジーは自分から空に向かって足を出すという感じなのでとても怖い。死がそこにあるというか……。
藤:あー、私もバンジージャンプやればよかった! きっと、パテマがエイジのことを信じて空に向かってジャンプするのと似てますよね。
岡:僕はバンジーのゴムすら信じられなかったけど(笑)。
岡:自然とそうなっていきましたよね。最初の頃のエイジって、どことなく客観的に世界を見ていて、受け入れるというよりはあまり物事に動じない冷めた少年。エイジとパテマが自然と会話できるようになっていたのは、やっぱり脚本や藤井さんの力が大きいです。
藤:私は、最初はちぐはぐだった2人が心が寄り添わせていくうちに会話をする、というふうに考えていました。だから最初はあまりエイジと話さないように気をつけようと(笑)。そういうことで声の張り方も違ってくるかな、と。物語が進むに連れてエイジのほうに意識をもっていきました。
藤:本当に盛りだくさんな映画ですよね。最初監督からお話を聞いた時は、とにかく世界観にビックリしてワクワクしたのですが、いざ演じる時に一番大切にしたのは、パテマとエイジの心の寄り添いや成長です。女の子だったら恋愛要素のひとつとしてサカサマの世界観をすっと受け入れて、2人の今後を想像するのが楽しいんじゃないかな。
岡:これまでは、いわゆる地に足が着いた状態、自分が見ている視点が当たり前の主観でした。映画の中でそれが一気に覆された瞬間に、やっぱり固定観念に縛られるのはよくないなって。今自分が見ている風景が正しいと思い込むのは、間違っているなということを学んだ気がする。パテマとエイジみたいに、手を握り合ったり抱きしめ合ったり。シンプルなことだけど、やっぱり人は支え合わないと生きていけないんだなって思いました。
藤:全然違う立場の2人が支え合って冒険していくって、素敵ですよね。
岡:それは意外ですよね。あ、監督そっち側なんだって(笑)。僕はどちらかというと、固定観念で縛りつけない素晴らしさ、境界線のない美しさなどを作品から感じ取っていたので、なるほど監督のメッセージはそこに繋がっていくんだって驚いた。
岡:僕まだ見ていないんですよ。絶対面白いのはわかっているので、『サカサマのパテマ』の仕事を全部やり終えてから見ようと思って。そうじゃないと監督をファン目線で見ちゃいそうなので、それが怖くて。
藤:超面白いですよ!(笑)。
岡:そうですね。吉浦監督からなぜ主人公たちを14歳という設定にしたかを聞き、なるほどなと思いました。長編映画とはいえ盛りだくさんな内容なので、キャラクターの感情の動きもめちゃくちゃ早いんですよね。たとえば20歳くらいの世代にすると、時間が足りなくてそんなに早く感情は動かない。14歳だったら、この速度で惹かれ合っていってもおかしくないと。確かにそうなんですよね。
岡:エイジは、最近めずらしい“男の子らしい男の子”。14歳でこれだけ頼りがいのある男の子なら、きっと大人のエイジくんはもっと頼れる男に成長しているんじゃないかな。というわけで、『サカサマのパテマ2』をぜひよろしくお願いします(笑)。
藤:私はまず脚本に魅了されて、この作品に関われることがうれしくて仕方なかったんです。ボーイミーツガールのラブストーリーだったり、SF要素のある冒険物語だったり、力強いメッセージ性だったり。見る人によっていろいろな楽しみ方ができる作品です。この世界観を突き詰めて、いろいろな伏線を回収してほしいですね。一回目見た印象と、二回目の印象もかなり違うと思うので、何度でも見ていただきたい作品です。
青二プロダクション所属。
スマイルプリキュア: 緑川ひな、アイドルマスター: 所恵美、FAIRY TAIL: ジェミニ/ミリアーナ、ハートキャッチプリキュア: 志久ななみ役など。2008年度ミスインターナショナル日本代表選出大会ファイナリスト 。
プロ・フィット所属。
メタルファイトベイブレードZEROG: 黒銀ゼロ、とあるシリーズ: 一方通行、TIGER & BUNNY: 折紙サイクロン(イワン・カレリン)、BROTHERS CONFLICT: 朝日奈光、バクマン。: 新妻エイジ、CODE:BREAKER: 大神零、青の祓魔師: 奥村燐など。