スタジオジブリ・宮﨑駿、引退会見レポート! 「監督になって良かったと思ったことは一度もありません」

2013年09月06日 17:110

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

スタジオジブリのアニメ監督・宮崎駿さんの引退会見が9月6日に吉祥寺第一ホテルで行われた。






アニメ界の巨匠であり、世界的な映画監督である宮崎さんの引退発表ということで、TVカメラ70台、紙/webメディア約200媒体(うち海外からは13ヶ国)、総勢605名の報道陣が集結。報道陣には以下の書面が配られ、会見には宮崎さんのほか、鈴木敏夫プロデューサーとスタジオジブリの星野康二社長が出席。メディアからの質問に答えた。



公式引退の辞
宮﨑 駿

 ぼくは、あと10年は仕事をしたいと考えています。自宅と仕事場を自分で運転して往復できる間は、仕事をつづけたいのです。その目安を一応“あと10年”としました。 
 もっと短くなるかもしれませんが、それは寿命が決めることなので、あくまでも目安の10年です。
 ぼくは長編アニメーションを作りたいと願い、作って来た人間ですが、作品と作品の間がずんずん開いていくのをどうすることもできませんでした。要するにノロマになっていくばかりでした。
 “風立ちぬ”は前作から5年かかっています。次は6年か、7年か……それではスタジオがもちませんし、ぼくの70代は、というより持ち時間は使い果されてしまいます。
 長編アニメーションではなくとも、やってみたいことや試したいことがいろいろあります。やらなければと思っていること――例えばジブリ美術館の展示――も課題は山ほどあります。 
 これ等は、ほとんどがやってもやらなくてもスタジオに迷惑のかかることではないのです。ただ家族には今までと同じような迷惑をかけることにはなりますが。 
 それで、スタジオジブリのプログラムから、ぼくをはずしてもらうことにしました。
 ぼくは自由です。といって、日常の生活は少しも変わらず、毎日同じ道をかようでしょう。土曜日を休めるようになるのが夢ですが、そうなるかどうかは、まぁ、やってみないと判りません。 
 ありがとうございました。


以上

2013.9.4





会見ではまず、宮崎さんが、「僕はこれまで何度も辞めると言って騒ぎを起こしてきたので…」と前置きした上で、「今回は本気です!」と断言。鈴木さんも、最新作「風立ちぬ」が公開され、大勢のファンに見てもらえているなかで引退を発表できて良かったと付け加え、高畑勲さんの最新作「かぐや姫の物語」が予定通りに11月23日に公開となること、ジブリの最新作が来夏公開に向けて制作中であることが発表された。

その後、質疑応答へ。



・こどもたちへ向けてのコメントは?
宮崎:カッコイイことは何も言えません。機会があったら、私たちが作ってきた映画を見てください。そうすれば、何か伝わるかもしれません。

・長編の監督を辞めるという認識で良いか?
宮崎:引退の辞に「ぼくは自由」って書きましたから、"やらない自由"もあるんです(笑) 毎日アトリエに行こうと思いますし、やりたくなったものや、やれるものはやろうと思っています。まだ休息の時期なので、休んでいるうちにいろいろわかってくると思いますが、ここで何か約束すると大抵破ることになりそうなので…(苦笑)

・「風の谷のナウシカ」の続編は?
宮崎:ありません。

・韓国のファンへのコメントと零戦について
宮崎:映画を見て頂ければわかる、と思っていますので(苦笑) 今度の映画も見て頂けたらいいなと思っています。

・今後、ジブリの若手監督の作品に(アドバイザーなどとして)関わっていく予定は?
宮崎:ありません。

・これまでの引退騒動と今回の違いは?
宮崎:「風立ちぬ」は「ポニョ」から5年掛かっているんですが、今から次の作品をやろうとすると、年齢的に5年じゃすまないと思うんです。あと7年したら僕は80歳になってしまう。83歳までは仕事を続けたいと思いますが、今の延長線上の仕事はないだろうと思っています。そういうことで、"僕の長編アニメーションの時代はハッキリ終わったんだ"と。もし、またやりたいと思ってもそれは年寄りの世迷言ということで片付けようと思っています。

・引退を決めたタイミング
宮崎:よく覚えてないんですけど、「鈴木さん、僕はもうダメだ」と言った記憶はあります(苦笑) でも、それは何度もやってきたことで、それを鈴木さんが信じたかはわかりません。ジブリを立ち上げたときに、ここまで長くやろうとは思っていませんでしたので、引き時についての話し合いはこれまで何度もありました。
鈴木:「風立ちぬ」の初号(試写)があったのが6月19日。たぶん、聞いたのはその直後だったと思います。で、今回は、本気だなということを感じざるを得ませんでした。それは、これまでの30年間、僕のなかにずっとあった緊張の糸がその言葉を聞いたときに少し緩んでしまったからなんです。変な言い方をすると、(引退の話に)ホっとするところもあったんですよ(笑) 若いときであれば止めるんですけど、今回は本当にご苦労様という気持ちが沸いたんです。(発表タイミングについては) まず、スタジオのスタッフに伝えなければいけないと思い、映画が公開を迎えて落ち着いた時期に……社内では8月5日にそのことを伝えました。で、映画が一段落した時期にみなさん(=メディア)に発表を、と考えました。

・台湾の観光客にとってジブリ美術館は外せない観光名所なんですが、引退後は海外を回って海外のファンと交流するつもりは?
宮崎:ジブリ美術館の展示などについては、関わらせてもらいたいと思っています。自分が展示品になっちゃうかもしれませんので(笑)、美術館にお越し頂いたほうがうれしいです。

・「風立ちぬ」が最後の作品になる予感はあった?
鈴木:彼の性格から見て、死ぬ間際まで映画を作り続けるのかと思っていました。一方で、別のことをやるときにみんなに宣言する傾向もあるので、"引退"はそのどちらかの形になるのかなと。なので、「風立ちぬ」が完成して話があったときも、それを素直に受け止めることができたんだと思います。
宮崎:映画を作るのに必死で、その後どうなるのかは考えてませんでした。映画が完成するかのほうが重圧でした。

・印象に残っている作品と、全作品を通してのメッセージは?
宮崎:トゲのように残っているのは「ハウルの動く城」です。ゲームの世界をドラマにしようとしたんですが…。まぁ、スタートが間違ってたと思うんですけど、自分が立てた企画だからしかたありません。僕は児童文学の多くに影響を受けてこの世界に入った人間ですので、こどもたちに「この世は生きるに値するんだ」ということを伝えるのが仕事の根源じゃなきゃいけないと思ってやってきました。それは今も変わってません。

・イタリアは好き? ジブリ美術館の館長になる気は?
宮崎:まとまっていないところも含めて好きです。友人もいるし、食べ物もおいしいし、女性はキレイだし。でも、ちょっとおっかないなって思うところもありますが。
館長よりは、展示品を直したりするほうがやりたいと思ってます。ずっとやらなきゃいけないと思っていたことなので。

・美術館の短編に関わる予定は? ジブリの今後は?
宮崎:今、そちらに頭を使う気はありません。前からやりたかったことをやりたいもんですからそっちが先。そして、それはアニメーションではありません。
鈴木:僕も65歳なのでいつまで関わるかという問題もあるんですが、それより今ジブリにいる人たちがどう考えるかのほうが重要で、それで今後が決まると思っています。
宮崎:やっと上の重しがなくなるんだから、若いスタッフからいろんな声が鈴木さんに届くことを僕は願っています。それがなけりゃダメ。僕らが30~40歳のときに思っていたように、やっていいんなら何でもやるぞ、という覚悟を持っているかどうかにかかっていると思います。

・今後やりたいこととは具体的に何? 今後何かを発信していく予定は?
宮崎:やれなかったらみっともないので、言いません。あと、僕は文化人になりたくないんです。僕は町工場のオヤジでして、それは貫き通していこうと。だから、発信しようとかは考えない。文化人ではありません。

・震災や原発事故が「風立ちぬ」に与えた影響は?
宮崎:構想は影響されていません。映画を作りながら、「時代に追いつかれて追い抜かれた」と感じました。

・「時代に追いつかれて追い抜かれた」ということと引退決意の関係性は?
宮崎:特にありません。僕は、アニメーター出身だから描かなきゃいけないんです。描かなきゃ表現できないんで。でも、どんなに体調が万全でも描ける時間が年々減っていっているのは確実なことで、実感しています。加齢による問題はもうどうすることもできませんし、違うやり方ができるならとっくの昔にやっているはずです。なので、長編アニメは無理だ、という判断をしました。

画像一覧

関連作品

風立ちぬ

風立ちぬ

上映開始日: 2013年7月20日   制作会社: スタジオジブリ
キャスト: 庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事