釣りファンも模型ファンも注目、「ルアープラモ」をつくった老舗の金型メーカー、株式会社マツキさんに人気の秘密を聞いてみた!【ホビー業界インサイド第80回】

2022年04月23日 11:000

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会社の前に川が流れている工場で、釣り好きの社員たちが立ち上がった


── それにしても、「そうだ、ルアーをプラキットにしよう」とよく思いつきましたね。

鈴木 先ほども話しましたように、日々の仕事の中でも波があります。その谷間に来たとき、せっかく自分たちで物をつくれる環境なのだから、何かしら自社製品をつくってみたいという想いが、ずっと前から私の中にありました。ちょっと時間が空いたとき、雑談として「何かつくってみない?」と従業員に話してみました。すると、即座に「ルアーをつくりたい」と返事がありました。

── そんなにストレートに出てきた企画なんですか?

鈴木 弊社は、すぐ前が堤防になっていて、その向こうに川が広がっています。また、自宅から歩いて2~3分のところに川がある、という従業員もいます。そんな環境のせいもあって、釣り好きの社員が4人ほどいるんです。それで、ルアーを製品化したいという話が出てきたのでしょう。どうせつくるなら、従業員のやりたい物をつくったほうがモチベーションを維持できますから、ぜひやってみたい。だけど、金型を彫るには3Dのデータが必要です。「まずデータをつくらないとね」と話したところ、「いえ、社長。データならできています」「えっ、どういうこと?」と聞いたら、釣り好きのメンバーたちが、ある程度までデータをつくっていたんです。

── ほとんど自主制作ですね。

鈴木 その段階では、簡単な形状だけをモデリングしたデータでしたけどね。そこまで積極的なら、本気でつくってみようという気持ちになりました。よくよく聞いてみると、「社長に黙って、金型も彫るつもりでいました」と、彼らは言うんです。なので、私が何も聞かなければ、従業員が勝手に金型でルアーを成型して、近所の川で遊んでいたかもしれません(笑)。

── 最初は、クラウドファンディングで資金を集めていましたよね? 最終的に、目標金額の600%近くを達成したそうで……。

鈴木 そうなんです。せっかく開発するなら、誰にも知られず発売するよりも、「この企画は、本当に世の中に受け入られるのだろうか?」という市場調査の意味も含めてクラウドファンディングしてみようと思ったわけです。吉本プラモデル部の皆さんが弊社まで取材に来てくださって、そのときにルアープラモのテストショットをお渡ししたことがあります。それが2020年のことです。吉本プラモデル部の方たちには、とても感謝しています。
けれども、クラウドファンディングを開始したのがその取材から1年ほど経過した2021年5月ですから、構想段階まで含めると、トータルで2年ほどかかっています。「もう忘れられてしまったのではないか?」と不安になるぐらい、開発に時間がかかってしまいました。やはり本業優先ですから、空いた時間に少しずつ進めるしかないんです。

── このキットは、金属の重り(ウェイト)を入れるようになっていますね。しかも、そのウェイトが内部で動くのですが……。

鈴木 はい、実際のルアーも内部にウェイトが入っています。ルアーは水面に投げるとき、ウェイトがお尻のほうへ移動することで遠心力が生じて遠くまで飛びます。着水してからは、ウェイトの位置が変わり、姿勢を保持します。その構造を、模型として再現しています。


── それと、魚の形をした口の部分(リップ)が4種類ありますよね。リップを取り換えることができたり、使っていないリップを飾り台に付けておいたりできますね。

鈴木 リップを付け替えることで、泳ぎ方や潜る深さが変わります。ただし、市販されている本物のルアーの場合、リップの形状が固定されているものがほとんどです。このキットではリップを付け替えられる仕様にすることで、弊社ならではのオリジナリティが出せたと思います。

── もうひとつ印象的なパーツが、釣り針ですね。3個のパーツを組み合わせて釣り針を組み立てるのが、かなり難しかったのですが?

鈴木 そうですね、釣り針のパーツは組み立ての難易度が高いと思います。実は、初期段階では「ひとつのパーツにしよう」という案がありました。3本の釣り針を平面状のパーツにして、遠近法でいちばん奥の針は小さく彫ろうと考えていたんです。

── ああ、釣り針を絵画的にレリーフとして表現しよう……という案もあったんですか?

鈴木 そうです。しかし、釣り針をワンパーツにしてしまうと、左右のボディをバカッと組み合わせるだけで、本体がほぼ完成してしまうんです。そんな簡単に終わっては、組み立てキットとしてあまりに面白みがありませんよね。何かもう少し作りごたえというか、組み立て工程が欲しい。それならば、弊社のこだわりとして、たとえ難しくなっても釣り針は立体として表現しようと決めました。細い3個のパーツを異なる方向から組み合わせる作業は、皆さんが苦労されると思います。しかし、メーカーとしてはあえて組み立て過程に難関を設けました。

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