デフォルメロボを通じて描かれる少女たちの熱いバトルとドラマに注目! 今夏話題の新作アニメ「グランベルム」永谷敬之Pインタビュー!

2019年07月09日 16:100

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2019年7月クール放送のアニメ「グランベルム」。少女たちがデフォルメ体型のロボット「アルマノクス」に乗って戦うという、異色の本作には多くのアニメファンが注目している。

本作を手がけるスタッフは、「Re:ゼロから始める異世界生活」を手がけた渡邊政治監督、キャラクター原案・大塚真一郎さん。アニメーション制作は、渡邊監督とともにアニメ「わかば*ガール」を手がけたアニメーションスタジオ・Nexus。シリーズ構成は、「ラブライブ!」シリーズ、「響け!ユーフォニアム」シリーズ、「わかば*ガール」を手がけた花田十輝さんと、そうそうたる顔ぶれ。

キャストも、主人公・小日向 満月役の島袋美由利さん、新月 エルネスタ 深海役の種﨑敦美さんをはじめ、人気声優が名を連ねている。

 

今回、そんな本作をプロデュースする永谷敬之さん(infinite)にインタビューを敢行。これまでにご自身が観てきたアニメへの愛情。そして作品にかける情熱を感じていただきたい。

 

スタッフ渾身の手描きデフォルメロボアクション!

──「グランベルム」は、最近では珍しいデフォルメロボットものアニメですね。

 

永谷 デフォルメロボットにはデフォルメされたキャラクター性みたいなものがあって、(ロボットを操縦する)キャラクター自身の個性が投影されると考えています。いわゆるロボットアニメのロボットというと、キャラクターから独立した戦術兵器的なものが多いと思うのですが、デフォルメ化することで操縦者と共通のキャラクター性をロボットに落とし込めるのではないか。視聴者側により愛着を持っていただけるものが作れるのではないか、という思いが企画の初期からありました。

かつては「魔神英雄伝ワタル」とか「覇王体系リューナイト」「魔動王グランゾート」。2000年代に入ってからだと「SDガンダムフォース」、「メダロット」や「ダンボ―ル戦記」などがあったはずなんですけど、なんとなくここ10年くらいはそこが薄い感じになっていたので、ひょっとしたら同じような気持ちを持っているクリエイターの方たちが、まだ業界にいるのかなという思いから立ち上げた企画でもあります。

 

──制作会社がNexusに決まったのは、どういう経緯からでしょうか。

 

永谷 最初にNexusさんとお話しした時に、初めてのお付き合いだったので、まず「どんなものをやりたいですか?」と聞いた時に出てきたのがまさに「グランベルム」のような企画だったので、すぐに「やろう!」と決まったんです。

勝手に僕が使命感を帯びてしまっただけなんですが、「これは今やらなきゃいけない」という使命感を抱いたんです。なぜかというと、今やらないともうできないと思ったからです。特に、今回のロボット描写は手描きでやろうと初めに決めていたのですが、今後のプロデューサー人生において、手描きでこれをやりたい、またはやってくれるというスタジオさんと、果たして再び巡り合えるだろうか。向こうもそれを望むなら、僕が今決めるべき作品はこれだ、と感じたというのが、この企画の決め手でした。

 

 

──今、このジャンルの作品を作らないと、系譜が途絶えてしまうという危惧があった?

 

永谷 そうですね。ずっと将来にもしかしたら誰かが思い出して、またこういうジャンルの作品をやってくれることもあるかもしれないけど、その時はそもそも手描きのロボットアニメ自体がロストテクノロジーになっているかもしれない。僕は今41歳なんですが、へたしたら僕が棺桶に入るころには「昔はアニメって手描きだったらしいよ」って言われているかもしれない。そんな状況の中で、手描きと3Dのそれぞれによさがあると理解したうえで、やはり自分が幼少期からアニメに触れてきた中で得たものや感じたものを、今の若い子に伝えられるのならそれはやっておきたいなと。使命感というのは、現場に対してこの企画を決めてあげるというよりは、令和という新しい時代の始まりにこういう作品を作っておくと、アニメ業界に何かを残せるのではないか。そういう使命感でしたね。

 

──手描きロボットのアクション描写というのは、作画するうえで非常に高カロリーなものだと思うのですが、デフォルメロボにすることでいくらかは負担を軽減できましたか?

 

永谷 僕は線数が少なくなるから多少は楽になるのかなと思ったんですが、必ずしもそうではないみたいですね。というのは、たとえばメカとメカがぶつかり合うシーンなどは、普通のリアル頭身のロボットに比べて全身が詰まっている分、お互いをからませづらいみたいですね。あと作れる絵自体も、デフォルメだからこそ描けるシーンもあるし、逆に制約もあるという風に理解はしていて、それを加味すると、従来のスーパーロボット、リアルロボットを動かす技術とは別に、デフォルメロボを描くスキルというのがあるんだろうということを感じました。

だから、そういう意味では特定のスキルを持った方にカロリーが集中したことはあったのかもしれませんね。

 

──実際に仕上がってきた映像を見て、どんな感想を持たれていますか?

 

永谷 まず大前提としてすでに全13話が完成していて、僕自身、すでに全話拝見しています。そのうえで感じたことが、かなりオーバースペックな作品を作ってくださったなということです。もちろんハイクオリティな作品にはしてほしいと思っているんですが、そこは予算との費用対効果の中で最善を尽くしていただければとは思っています。それを今回、クリエイターや現場のスタッフが思い入れを持って携わってくれたおかげで、より困難な道に挑戦してくれたんだなという映像があがってきているので、僕が想定していた以上に大変だっただろうと思いますが、その分すばらしいものに仕上がっています。

 

──第1話から、非常に力の入ったメカ描写、演出で圧倒されました。

 

永谷 今回、渡邊政治監督と花田十輝さんとメカデザインのジミー・ストーンさん。そしてネクサスの中村さんと僕の5人で本読みをやっていたんですが、こういうジャンルってそれぞれの思い入れや見たいものの好みが、かなり出やすいんです。あれこれ出てきた要素を花田さんが脚本に仕上げてくれるんですが、監督も容赦がないから「俺が作りたいものはこうだ」って演出・絵コンテを担当されているので、いい意味でもうやりたい放題ですよ。

今回の第1話って作画枚数が1万2000~3000枚くらいなんですが、そのくらいの枚数を使うことでアニメとしてやりたい事や、情報量の厚みは出せているし、「監督が作りたいものはこれなんだ」というこだわりの詰まったものになったという印象を受けました。

 

 

──スタッフについては、「Re:ゼロから始める異世界生活」(以下、Re:ゼロ)で組まれた監督とキャラクター原案・大塚真一郎さんのタッグも注目を集めています。

 

永谷 そこは難しいんですが、まず渡邊さんを呼んだのはNexusさんなんです。以前やられた「わかば*ガール」の時の相性がよかったんでしょうね。「Re:ゼロ」の時も、Nexusさんには各話の制作で入っていただいていたので、そこでも組みやすさを感じていたんだと思います。そして大塚真一郎さんを呼びたいと言ったのが渡邊監督でした。一見すると魔法少女もののような、ふんわりとした世界観というものに大塚さんの絵が合うんじゃないか、という監督の意見の元に入っていただきました。なので、結果的に「Re:ゼロ」スタッフが再集結したという感じです。

 

──各スタッフが、これまでの経験を踏まえてベストな人材を集めたらこうなったと。

 

永谷 そうですね。花田さんも、現場でいろいろ話したうえで参加してもらいたいという結論が出たし、ジミーさんはネクサスの紹介で参加してもらいました。そういう意味では「こういうマーケットを狙って、こういう人選にしましょう」というよりは、「こういう作品が好きで、心血を注いでしまう現場が一番いい」っていうところで、人選が決まったというところです。

 

──打ち合わせはどのような雰囲気でしたか?

 

永谷 最初の打ち合わせでは、「どういうロボットアニメが好きなんだ」という思考調査から始まりましたね。「どの作品のどういうところが好きか」ということが重要だと思っていて、たとえば70年代アニメだったら当時のマーケットはこうだったよね。80年代だったらこうだよね、っていうことも考察したりしながら、じゃあ2019年はどういう年なんだというを考えていきました。

 

──渡邊監督は、アクション重視の演出、作画をされる方という印象も強いのですが、本作に抜擢されたのはその実績を踏まえてでしょうか。

 

永谷 確かに経歴だけ見ると、アクション重視のように見えるんですが、自分としては渡邊監督は割とドラマの人という印象かな。たとえばすごく明るい作品と暗い作品のどちらかしか選べない、と提案したら暗い作品をきっと選ぶとさえ思います。ただそこには監督なりの映像の信念があって、ただ暗いのがいいわけではなく、そこに描くべきものがあって、それを描くためのアニメの絵が負けてはいけない。だからキャラクターのアクションも重視する、という論法なんだろうなというのが、現場をご一緒させていただいてもらって感じたことです。第1話では、監督が演出・絵コンテもやられていて、そこではこの先のドラマも踏まえて、主人公の満月という女の子をどう見せていけばいいのかというのが全て逆説で考えられています。少しでも満月という女の子のドラマに感情移入してもらうためにストーリーが考えられていますし、それ以上に絵力も立たせていかないといけないと考えている印象を受けています。

 



キャラクターの個性を反映したメカデザイン

──本作では、7人のヒロインが登場し、彼女たちがバトルロイヤルを繰り広げていきます。

 

永谷 第1話を見てもらうと多少派閥があるようにも見えますので、それ自体は観たままを感じていただけたらと思うんですが、いずれのキャラクターもある種のポリシー、信念を持って行動しています。ひょっとしたら主従関係にあるように見えるキャラクター同士も、それぞれにポリシーはあるし各キャラクターとも生き生きと作れたのは、やはり花田さんのおかげかなと思っています。7人もヒロインがいたら、多少はかぶる部分も出てくるのかなと思っていたら、うまく細分化できましたし、それぞれに物語もちゃんと描くことができました。

 

──ロボットアニメ的なバトルだけでなく、人間ドラマの厚みも本作の見どころですよね。

 

永谷 そうですね。僕ももともとロボットアニメが好きではあったんですが、今回「グランベルム」をやってみて、それで育ってきたということを公言するのがはばかられるくらい監督や花田さん、ジミーさんたちの知識量、思い入れがすごかったんです。クリエイターとプロデューサーという職種の違いがあるからかもしれないけど、何をここで見せるとこの世界に引き込まれるかということの出し引きというか積み方がすごいんです。第1話でああなって、第2話でああなるというのが、ひょっとしたら視聴者側からすると、僕らが狙っているのとは異なる感情を受け取るかもしれませんが、そこのいろんなさじ加減やバランスの取り方というのが、単なるロボットアクションで押すわけではない。こんなに重厚なドラマがあるのに、その後ろでこんなに高カロリーな作画をぶっこんでくるっていう作り方が、この作品の魅力なのかなと思いますね。

たとえば、正義のロボットが悪いロボットを倒すっていう勧善懲悪ものにも作れると思うんですよ。でも今回はそういう形は取っていなくて、お互いがお互いの正義の元に戦っている中で、ロボットアニメとしても、キャラクターが前面に出たアニメとしても、どちらの側面から切り取っていただいてもそん色のないバランスになっていると思います。何話か連続で観ていると、先週と今週でまるで違う作品を見ているかのような印象を受けるわけです。でも、それが「グランベルム」という世界観の中でまとまっているという印象があります。

 

──ロボットをデフォルメにすることで、キャラクター性をフックに、キャラより、メカよりのどちらの側面からも楽しめるというイメージですか?

 

永谷 そうですね。僕も最初はデフォルメのロボットアニメという、外側の部分から入っていったんです。おそらく現場もそのつもりで制作に入ったと思います。ただ物語を進めていくうえで、アルマノクスがデフォルメ体形だから本作を作れた、という風に気持ちが変わってきました。それは、きっとキャラとアルマノクスの関係に起因するものなので、これが正解だったんだなと思います。

 

 

──これがリアル等身だと、まただいぶ印象の違う作品になっていたように思います。

 

永谷 これはけっこう最初のうちに出てきた話なんですが、人工的に作られたロボットが重火器を持っているということは「兵器」ですよね。ということは、「グランベルム」で行われているのは戦争ですよね。と。

いや、そうじゃない。そうではないものにしたい。特殊な空間で、特殊な人たちだけがロボットに乗って、一種の縄張り争いをしているんだけど、そこでは僕たちが「戦争」と聞いて想像するものとは違うものをかけて戦っているんだ、と話をしていました。

そこで、もし本作のメカデザインがリアルな方向だったら、もっとそっち(戦争もの)の内容になっていたと思います。

 

──ちゃんと収まるところに収まった、という手ごたえでしょうか。

 

永谷 オリジナル作品って、どうしても完成するまでどうなるかわからないというか、どんなに僕たちが「こういうものを作りたい」と言っても、最終的な編集が終わって映像が手元に届くまでわからないこともあります。その点、今回は僕がシナリオ、コンテから何となく想像したものよりも、いろんな化学反応があって、よりよくなったと素直に受け取れました。

 

──演出面でいうと、どこまで言っていいのかわからないのですが……。今ではちょっと懐かしい、伝統的なロボットアニメ的演出や表現が随所に登場するので、自分としてはそこも非常に楽しく見られました。

 

永谷 (笑)。ワイプで、キャラクターの顔のカットインが入ったりするところとか。

 

──そういったロボットアニメ演出のオマージュを、いろいろなところで感じました。

 

永谷 それを誰かが言ってくれることによって、いろんなところで議論が活性化することもあるし、先日の上映会も幅広い年齢のアニメファンの方にお越しいただきました。その幅の中で気づくこともあると思います。「この演出懐かしい」とか「ここはこういう意味でね」なんてロボットアニメの過去も紐解けるとうれしいし、いろんなことを発信していただきたいんですよね。たとえばその中の作品に若い人が触れてくれればアニメマーケット全体にとっていいことだし、「グランベルム」というハッシュタグを付けた発言が、そういう話題で拡散されればされるほど作品にとっても有益かなと思っています。

やっぱり僕らは先人が組み上げてくれたものの中で、今回は何ができるかというのを考えていかないといけない。そして、その中には新しい要素がどれだけ入って、いいものをどれだけ拾えるのかというチャレンジを毎回しているつもりなので、そういった意味では今回は多分にいいものを拾えたかなと思います。

昔の演出も今の技術で作るとこうなるというところも含めて、いろんな方に観てもらいたい。当時僕らが好きだったものを作ってらっしゃった方にも観てほしいですね、

正直な話、カットインを作ると単純に1シーンの作画量が増えるわけですよ。だから敬遠する向きもあるんですが、そこから逃げないというのも現場の覚悟です。今後も、ひょっとしたら今はあまり見られない演出が出てくるかもしれません。



キャラクターとシンクロするキャスティングの妙

──本作では多くのキャストが登場しますが、どのように決まっていったのでしょうか。

 

永谷 キャストのオーディションは非常にスムーズだったと思います。僕らがキャストに求めたものは、7人いるメインキャラに説得力を持たせられる声かどうか、というところでした。例えば満月だったらふわっとした感じだけど、やる時はやるというところでしたし、新月だとキリっとしつつ、ある種物語を先導していく立場として発言に説得力があるようなキャラクター性だったり。寧々はマスコット的な癒しがありつつ、さらにそこに説得力を増してくれるような声だったり。そこはうまくバランスを取れたと思いますね。

 

──比較的若手の方と、中堅クラスの方がバランスよくキャスティングされている印象です。

 

永谷 そうですね。今回は、広い間口でオーディションをやらせてもらい、フラットに声をかけさせていただいてやった結果、いい人たちで固めることができました。

 

 

──主人公・小日向 満月役の島袋美由利さんは、やわらかく浮遊感がありながら、どこか芯を感じさせる声ですね。

 

永谷 そうそう。まず基本的に主人公として声を張らなきゃいけないこともあるし、コロコロと表情の変わるキャラなので感情の起伏も表現できないといけない。そういうメリハリをつけられるいっぽうで、自分では何もできないと思っているような、根底には下向きな感じがある演技を自然にできる方ということで、島袋さんにお願いしました。ご本人はとても明るい方なんだけど、しゃべり方によっては影を感じる声でもあって、明るいときや声を張る時とのギャップも含めて非常に満月らしいと思います。

 

──新月 エルネスタ 深海役の種﨑敦美さんはいかがでしょうか。

 

永谷 新月はお姉さんキャラなんですが、第2話を見ていただくとわかりますが、どこか抜けているところがあるキャラです。かたや、この「グランベルム」という作品の世界観を背負っているキャラでもあると思っていて、それゆえに彼女の中にある芯となる部分や、彼女のポリシーといったものを凛とした声質の中で支えてほしいと思ったんです。そうなった時に、すぐに「新月は種﨑さんにしましょう」と決まったと思います。

これは褒め言葉なんですけど、種﨑さんって不思議ちゃんですね(笑)。新月と種﨑さん自身のイメージがリンクするかというとちょっと違うのかもしれないけど、演技に入っていただいた時は「ああ、これだ」って思えるんです。これがプロの力かと思います。

 

 

──アンナらの派閥が、日笠陽子さんをはじめ比較的キャリアのある方がそろっているという印象です。

 

永谷 偶然そうなっちゃっただけなんですけどね。ただ、日笠さんはもうアンナそのものでした。これも褒め言葉です。アンナって第1話から狂気を感じるところがあるんですが、日笠さんはそのキャラクターになりきって演じてらっしゃるんですね。日笠さんって、普段はすごくやさしい方なんですよ。ただ日笠さんの中に狂気が芽生えたら、きっとアンナみたいになるんだろうなと想像させられて(笑)、そこに両者がオーバーラップする部分を感じられたのがよかったです。

寧々役の久保ユリカさんも、キャラクターそのもの。イベントなどでトークをけん引してくれるところも含めて、いいキャスティングになったと思います。

 

 

──個人的には赤﨑千夏さん演じるロサが、今度どうなるのかが非常に気になっています。

 

永谷 ロサは一見アンナの手下的なイメージがあるんですが、彼女は彼女なりの正義があって戦っているキャラです。ただ、ロサがどうかっていうよりは本作でアルマノクスに乗って戦っている女の子全員に言えることとして、「戦争ではない」とは言いつつも、戦っているゆえに必ず結末があるので、そのドラマの部分に関してはしっかりと観ていただきたいところです。そういった意味では、ロサはそれを最初に体現してしまったキャラではあります。

公式としては、最後まで観ていただいて最終的に誰が好きかというのは、皆さんに聞いてみたいですね。たとえばアンナとかは強烈なインパクトで印象には残るけど、感情移入できたのはこっちのキャラかもしれないというのもあるだろうし、第1話と終盤の展開を観た時に受ける印象は全然違うかもしれない。そういう意味では、1クールのアニメだけど詰められるところは全部詰めたという思いがあります。

ちなみに僕はどのキャラを彼女にしたいかと問われれば、寧々です!(笑)

 

 

──寧々も家族がなかなか個性的ですよね。

 

永谷 あの子たちは「今を生きている子たち」って感じがします。戦いに参加している以上、何かに縛られ、家系をついでいるわけなんですが、妹たちとやっていることって現代社会に順応している部分もあるので、そういう意味では一番わかりやすいキャラクターたちだと思います。

 

──寧々は、アルマノクスも一体だけほかの機体と方向性が異なりますね。

 

永谷 これはメカデザインのジミーさんのほうで、これまでのいろいろなロボットアニメの系譜から、こういう形状のメカがあってもいいんじゃないか、ということで龍の形に決まりました。この後、実際に変わった戦い方をしていくので、そこを観ていただきたいです。

 

──キャラの個性とアルマノクスの個性がシンクロしているのも、本作ならではの面白さですよね。

 

永谷 当初、デザインを考えている時はそこをあまり意識していなかったというか、デザインの好みで判断をしていたんです。ただ本編を作っていくうちに、ジミーさんの中でそれぞれのキャラクター性や置かれている環境といった、キャラクターの根底にあるものがきちんとメカデザインに反映されているんだなっていうことを強く感じるようになっていきました。そう考えると、やっぱりメカデザインがジミーさんでよかったなと思いますね。

 

──たとえばロボットアニメをそんなに見たことがなかったり苦手という方も、アルマノクスをキャラクターの延長として認識すると、観やすいかもしれませんね。

 

永谷 そこですよね。「『グランベルム』ってロボットアニメですか」と問われたら、そういう側面もあります。「キャラクターものですか」と聞かれたら、そういう側面もあります、と。

「じゃあ、結局どんな作品なんですか」と言われれば、「それが『グランベルム』なんです」と答えたいんです。いろんなアニメのジャンルが世の中にはありますが、そういうのをひとまず忘れて、まずは一度「グランベルム」に触れてみてほしいと思います。

 

 

──ロボットアニメというと、マーチャンダイジングの歴史とも切り離せないかと思います。本作ではトイホビー方面のグッズ展開などはあるのでしょうか?

 

永谷 現時点で「これが出ますよ」というお話はできないのですが、当然僕らもやりたいと思いますし、委員会にも積極的に働きかけていただきたいとは思っています。ただ、やはりアニメがこれだけたくさんある現状で、1クールの放送中に全てのスイートスポットを持ってくるのは難しい時代だと感じています。

ですので、僕らとしては第1話を見て、ぜひいろんな企業が手をあげてくれるようなものを作ったつもりです。実際、製作委員会でサードパーティー向けの試写会をやっていただいたりしていますし、結果的に放送終了後、たとえば受注生産に近い形になったとしても、いいグッズを作っていただければ嬉しいです。僕としては、メーカーさんというよりは現場のスタッフ・クリエーターの方の創作意欲を刺激するような作品を作れていると思っていますので、本作を観ていただいて、ぜひいろんなところから声をあげていただきたいですね。

 

──第1話はプロモーション映像的な立ち位置でもあるわけですね。

 

永谷 結果的に現場の覚悟が見て取れるものになっているとは思っていて、たとえばAパートからBパートにかけて、かなりのハイカロリーな映像に取り組んでいます。たとえばコンテとかシナリオの段階で、この辺を調整しましょうよとか、このキャラは第1話では顔見せだけにしましょう、とか、加減を探りながら作ることもできたと思います。でもおそらく今のユーザーの方は、そういうちょっと様子を見ながら作っている現場の感覚を見透かすんじゃないかなと思うんですよね。だったら第1話をまずやりきって、これを13話やり切る未来を想像させる提案をしたほうがいいんじゃないかという覚悟ですよね。

そういう部分は、多くの皆さんにも伝わってほしいなと思います。そういう意味では第1話は作品の看板だし、そこで手を抜くわけはないし、それでいて100点だったものを、今後はさらに200点を目指しますというつもりで作りました。

 

 

──第1話の時点で注目してもらいたいポイントはどういったところですか?

 

永谷 まずは満月を見てほしいです。俗に言う「巻き込まれ型主人公」で、第1話の冒頭だと周りのためにお弁当を作ってあげたりして環境になじもうとしている、そこに居場所を見つけようとするキャラなのかもしれないけど、そういう子が自分の意志で戦いに参加してどう成長していくかっていうのは、本作の一番の軸だと思います。まずはそこを観ていただきたい。そのうえで、彼女を取り巻いている環境から「グランベルム」の世界観が見えてくると思います。

 

──これからの展開に期待しています! それでは最後に、ファンの皆さんに向けてのメッセージをお願いします。

 

永谷 監督を筆頭に現場スタッフ全員が最後まで全力で戦ったフィルムができあがっていますので、まずはそこにご注目ください。今の時代にこういう作品を作れたのがひとつの奇跡だと思います。かといってこの作品を必ず好きになってほしいというわけではなく、実際に観たうえで、それぞれの好みも含めて「世の中にはこういうジャンルの作品があるんだ」と感じていただきたいですね。

そして、もしかしたら普段はメカもの、ロボットものに触れていないような方も、男女問わず触れていただきたいと思います。そのうえで、面白い面白くないという意見はあって当然だし、好きも嫌いもあると思いますが、見ないと始まらないので!

キャラものなのかメカものなのか、またはドラマ重視の作品なのかという疑問については、それぞれの観方ができる作品だと思うので、自分の得意なジャンルじゃなさそうという方ほど観ていただきたいです!!

 

 

──ありがとうございました!

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グランベルム

グランベルム

放送日: 2019年7月5日~2019年9月26日   制作会社: Nexus
キャスト: 島袋美由利、種﨑敦美、日笠陽子、久保ユリカ
(C) ProjectGRANBELM

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