“水中ニーソ”でお馴染みの古賀学が歩んできた「平面でないと成り立たない模型」の最新形【ホビー業界インサイド第45回】

2019年03月30日 12:000

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抽象概念に思える“アート”とは、実は“物体”のことだった


── つまり、古賀さんは模型そのものではなくて、「紙の上でだけ成り立つ模型メディア」を作品として作り続けてきたわけですね。

古賀 そうですね、ロボットの模型ではなくて「ロボットのいる世界の雑誌」を模型化してきたと言えます。ソフトバンクパブリッシングの「マスターアーカイブ」の前身である「マスターピース」にも参加しましたが、サイド6で発売されているミリタリー雑誌のZガンダムという機体の特集という設定で作りました。何に影響されて「架空世界で流通したであろう本」ばかり作るようになったのか自分でもよくわからないのですが、雑誌の形をしたジオラマとも言えますね。

── 古賀さんの作品「水中ニーソ」シリーズでは、玩具や模型とのコラボが見られますね。

古賀 1冊目の「水中ニーソ」でも、タミヤ製の水中モーターとモデルを合成したりしています。レゴビルダーのTaryさんに組み立ててもらったレゴ製のメカ、プロモデラーのNAOKIさんに作ってもらった水中専用ニーソというオリジナルメカ、島本娼弘さんの作品と合体させた触手メカとか、あるいは小林和史さんのメカトロウィーゴ用に作られた水中モーターパーツ(製作:栗本宏昭さん)をそのまま使わせてもらったり、なんとなく模型を追いかけている人からすれば「ああ、今回はあのモデラーと組んでいるのか」とピンとくるような、わかりやすいコラボをしてきました。最新作の「cube」では、本物のアクリルブロックを撮影して使っています。


── それでも、「水中ニーソ」は模型作品ではなくてアートなんですよね?

古賀 僕は90年代の村上隆さんのすぐ横でアートを見て来たのですが、“アート”とは何なのか、さっぱり理解できずにいました。「アートなんて、ただの精神性ではないか」程度にしか考えていませんでした。近年になって自分の作品が美術館やアートフェアでほかの作家の作品と並べられるようになってから、ようやくわかってきたんです。シャガールの大きな作品と水中ニーソが一緒に見える様に展示してあるとか(笑)、そういう光景を俯瞰で見て、気がついたんです。噛み砕いて言うと、アート作品ってブツ、物体でしかないということです。
美術館に行くと、作品の横に書いてあるのは「題名」「制作年」、あとは「材料」じゃないですか。別に「作品の意味」なんて書いてないわけです。アート作品で大事なのは材料、マテリアルなので、写真がアートの中で与えられている地位はすごく低い……それを思い知らされました 。

── つまり、古賀さんは架空の雑誌とか、女の子とメカを合成して写真作品を作ってきたけど、ほかの“物体として存在するアート作品”に写真は勝てないってことでしょうか?

古賀 身内からは「写真だけど、写真じゃないよね」と言われ続けけていました。また、僕の仕事は長いこと、印刷用のデータを制作することでした。でも、ここ数年はデータではなくて物質になりはじめている。「月刊水中ニーソ」という定期刊行物も本になった瞬間からブツ、物体じゃないですか。青森県立美術館で、高さ6メートルの作品を飾ったんですけど、そこまで大きいと、もはや写真というよりは物質なんです。

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