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ホビー業界インサイド第28回：フィギュア原型師という「職業」と「市場」を切り拓いた男、秋山徹郎の過去と現在

2017年10月28日 12:000

企画記事

ホビー業界インサイド

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十年ぶりのワンフェス会場は、綾波レイであふれていた

── 90年代に入ってから、秋山さんはフィギュアシーンからは姿を消した印象があります。

秋山　その頃はウィズという玩具の企画会社に入って、社内でフィギュア製品の原型を作っていました。そのうち、ゲームのブームが来たので、ウィズでもゲーム企画をやることになりました。僕は自分でプログラムを組むぐらいのゲーム好きだったので、コンシューマーゲームの企画をやるようになりました。そのうち他社に移ったり、フリーのゲームデザイナーになったりしているうち、古巣であるフィギュア原型師に戻ってきたんです。

── その間、90年代半ばにかけて、フィギュアブームが急速に盛り上がっていったと思うのですが？

秋山　はい、10年ぶりぐらいにワンダーフェスティバル（ワンフェス）へ行きました。ちょうど、ワンフェスが綾波レイであふれていた頃ですね。僕がワンフェスに参加したのは、第1回から数回だけで、その当時は怪獣やSF映画のプロップ系のガレージキットばかりでした。美少女フィギュアなんて売っているのは僕たちだけだったので、見渡すかぎりフィギュアオンリーに染まったワンフェス会場を見て「……勝ったな」と思いましたよ。自分では何もしてないのに（笑）。こんなに広くフィギュア趣味が認められてくれて、純粋にうれしかった。

── いま、フィギュア原型師の数は、爆発的に増えましたよね。どういうタイプの人が増えたのでしょう？

秋山　MICの社内では、自分の好きなキャラクターはいるけれど、仕事のときは好みを別にしてプロとして造形してくれる人が多いです。弊社とお付き合いのあるフリーランスの原型師さんも同じです。それとは別に、自分の好きなキャラクターだけを趣味で作っている人たちも大勢いますよね。多様化すればするほど、全体としては揺らぎづらくなるし強くなる。だから、いろいろなタイプの原型師がいていいし、いるべきだと思います。

── ただ、最初におっしゃったように原型師としてお金を稼げていないと問題ですよね？

秋山　なかには、明日の生活費のために好きでもないものを作っている人もいます。逆に、本当に好きなものだけを作るために食うや食わずの生活をしている人もいる。僕としては、フィギュア原型師の人たちには全員、いい人生を送ってほしいと願っています。ただ、その“いい人生”の価値観も人によりけりですからね。お金が儲かりさえすればいいという人もいるだろうし、かつかつ食っていければいいと言っていた人でも結婚して子供ができたら、お金が大事になるでしょう。あるいは、手が追いつかなくなって原型師を辞めたとしても、「この業界で役に立ちたい」という方も必要だと思っています。アマチュアリズムを大事にしている人が、プロに徹している人と口論になってもいいんです。多様な価値観が共存していないと、何かあったときにいっぺんに潰れてしまいますからね。